人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/キラー・ジーンズ

先にお知らせ😗

こちらで再三宣伝してきた、小説教室での講座は無事終了しました!
詳細はまたブログに書きます!
みなさま、ありがとうございました!

(*ᴗˬᴗ)⁾⁾

🍵

 

アマプラで観たホラー映画です。
2020年制作、カナダの(まさかの)社会派ホラーコメディです。

 

 

キラー・ジーンズ(字幕版)

 

 


www.youtube.com

 

 

【あらすじ】
環境と人に優しいと謳う大手衣料メーカー、CCC。
その企業理念に惹かれたリビーは店舗で働き始める。
社運をかけた新商品販売を明日に控え、準備に奔走するリビーたちだが、店員が次々と消えていく。
それは人を殺して喰うジーンズの仕業だった……

 

【ひとこと感想】
このタイトルと導入で社会派ホラーなの!? プリティな殺ジーンズによるSLAXX!

 

※全力ネタバレです。
※内臓と断面図が派手に出てきます。

 

【3つのポイント】
①「人喰いジーンズ? 殺ジーンズ? 否、スラちゃん!🥰」
②殺ジーンズよりもやばい店長
③圧巻のラスト

 

【①「人喰いジーンズ? 殺ジーンズ? 否、スラちゃん!🥰」】
この作品との出会いはツタヤの新作コーナー。

( ・ω・)<人喰いジーンズw もうなんでもありやなw w

( ・ω・)<さつじんじーんず……

( ・ヮ・)<殺ジーンズ!!?

(※ここ数年で一番のドヤ顔)

そんなふうに愛称をつけたら一気に好きになるもので、さらに当時、こんなブログ企画を考えていたので。

 

word-world.hatenablog.com

 

即レンタルしました。
ワクワクで視聴してみれば、開けてビックリ玉手箱。

ジーンズ、かわよ……🫢

可愛いのです。
このどう考えても悪ふざけとしか思えないモンスター、めっちゃ可愛いのです。

以下、開始6分で動き出してからのきゃわいいポイントです。

①看板の文章に沿って行動する。
『泥棒はダメ!』とあったので、第1の犠牲者は勝手に商品を着るギャル店員。
『商品を無料で配送!』とあったので、自らするりと段ボール箱の中に入り、さらにバラバラ死体をキレイに箱詰めしていました。

②綺麗好きで几帳面。
犠牲者たちの血をキレイに吸い取ります。ダイソンも驚きの吸引力です☺️👍
モツがはみ出る死体もトイレの収納にイン。キレイに畳んで仕舞います。

(✿´ ꒳ ` )<えらいねぇスラちゃん〜〜💕

開始数十分でスラちゃん呼びです。人喰ってるけど。
「洗濯バサミ痛かったね。大丈夫?」とか思ってしまう。人喰ってるけど。

③音楽が流れたら踊り出す。
中の人が、ダンス大好き国・インドの女の子なので。

同じくインド系のシュルティの背後で、すごく楽しそうにステップを踏みます。

ハマラインディア♪
🕺👖🕺

ここだけ見れば癒しムービーなのですが(人喰ってるけど)、ホラー映画とはストレスをかけてなんぼ。

ホラーに欠かせないクズもきちんといました。

 

【②殺ジーンズよりもやばい店長】
CCCは、多様性を尊重だのフェアトレードビジネスだの「より良い明日を今日作ろう」だのを謳う企業ですが、初っ端からきな臭さがプンプンします。
バックヤードに「商品を泥棒するな」と書いてあるのです。推し察するにあまりにありすぎる。
ツンケンした従業員と、愛想と調子が良い上司、カルトめいた演説、

そのヤバさを凝縮して体現して具現化したのが、
店長のクレイブです。

最初の犠牲者、ジェマのバラバラ死体を発見した時のセリフがこちら。

 

クレイブ:「恐ろしい。悩みがあるのは知っていたが、
      誰も彼女を救えなかったのか」

 

Σ( ゚Д゚)!?

このセリフが出た時、間違いなくリビーと私の感情はシンクロしましたね。

なので、ジェマは自殺だと言い張る(そんな器用な死に方ある?)クレイブに従い、死体を隠すリビーの気持ちはわかる。
真っ当だと思っていた相手に、自分の常識外の反応をされたら、混乱して「あれ? これでいいの? あれ?」になるものです。

クレイブは最初から最後までクズたっぷりのクズでしたが、本格的にぶっ壊れた瞬間が興味深かった。

店長から地域マネージャーに出世したいクレイブ。
犬猿の中である女性上司にバカにされた彼は、スラちゃんがいる廊下へ、彼女をわざと出て行かせました。

人が悪魔になった瞬間を見ました。

 

【③圧巻のラスト】
スラちゃんの正体は、CCCが所有するインドの綿花農場で働く13歳の女の子、キーラット。

児童労働です。
クレイブたちはそれを把握すらしていませんでした。
ジーンズ=製品に関してなら原材料もわかるけれど、現地で働く人間のことは何ひとつ知らなかった。
知ろうともしなかった。

綿を回収する機械の回転に巻き込まれ、亡くなった少女。
その無念を晴らすため、『キーラットのための裁き』を下すため、スラちゃんは生まれたのです――って。

このタイトルと導入で社会派ホラーなのずるくない???

何この『ゲット・アウト』ばりの風刺作品。
こちらは普通にB級テンアゲ殺戮を楽しもうとしていたのに、『現代を映すホラー』だったんかい。

ですが。
この死角から刺してくる感じ、グッと胸と腹に来る……!!

何気に自分がホラーに求めているもの、だったりします。
人間の愚かさ、つまり己の愚かさを突きつけられるような感覚……!!
(伝われ)

リビーとシュルティは、スラちゃんの事情を聞いて、殺人をやめるよう説得します。
代わりにこの悲劇を世界中に伝え、CCCに大打撃を与え、本物の『より良い明日』を作ろうと歩み寄ります――が。

クレイブ(と書いてバカ)に邪魔されます。

(# ゚Д゚)<この野郎!

スラちゃんたち175本はクレイブを殺し、
新作ジーンズを買い求めにきた人々も殺すため、待機します。
リビーは人々に店に入るなと止めますが、誰ひとりとして聞く耳を持ちません。

新作ジーンズそのものが欲しいのではない、

『新作ジーンズを買った自分』が欲しい人々は、

リビーを突き飛ばして殺し、

スラちゃんに殺されました。

まさに狂気にまみれた月曜日。
今まで目に見えなかった大量の血が、やっと表に出たような悲惨さでした。

 

【まとめ:元々は、可愛い女の子】
少し自分語りをします。

自分は、ホラーを書く時、幽霊やお化けは、「元々は生きている人間だった」ことを忘れないようにしています。

スラちゃんも、元々は13歳の女の子でした。
生きていくために綿花を摘み、特別な人間(嫌な言葉だ)たちに『労働力』呼ばわりされてきた女の子。
けれど、音楽が流れれば軽快なステップを踏む、音楽と踊りが大好きな女の子。

本当なら、殺人なんてしなくてもいい、ただの可愛い女の子。

ラスト、こちらを振り向いた彼女。
その表情に、自分はやましさを覚えてしまいました。
皆さんはどうでしょうか。聞いてみたいです。

わずか76分で心に残ったまさかの良作でした。

 

【おまけ:原題が最高】

原題は『SLAXX』(スラックス)。
『スラッシャー映画』の『スラッシュ』とかけててうまいこと言う〜〜〜👍

ちなみにEDはメイキングです。
バラバラ死体がニッコリします。ほっこり☺️

 

 

次回は7月24日月曜日、
2022年制作、アメリカのホラースリラーです。
『X』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗