人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/フォーン・ブース

ゲオでレンタルしたホラー映画です。
2002年制作、アメリカのクライムスリラーです。

 

 

 

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【あらすじ】
スチュワートは弁が立つだけのメディアコンサルタント(宣伝マン)。
電話ボックスから浮気相手のパムとの電話を切った後、呼び出し音が鳴り、思わず出てしまう。
電話の相手は「電話ボックスから一歩も出るな。電話を切ったら殺す。ライフルで君を狙っている」と彼を脅す。

 

【ひとこと感想】
開始5秒から伏線、大満足の81分をお届けするスリラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①鑑賞理由:モツを見たくない
②スチュのキャラが良い
③電話の男の正体

 

【①鑑賞理由:モツを見たくない】
3月の中旬、自分は非常にはしゃぎました。

 

word-world.hatenablog.com

 

そう、初書籍発売アニバーサリーを祝う記事を書くために、B級C級Z級サメホラーを観まくったのです。

その揺り返しが起こりました。

( ・⌓・)<もう内臓(モツ)とか見たくない……

サメ映画ですから人類は喰われます。
当然血がドバドバ出てモツがまろび出ます。
そこにさらに下ネタ(排泄物吐瀉物あり)とチャンネーのパイオツがぶち込まれます。

どれもこれも自分が「まあ大丈夫なんだけどそこまで得意ではない」要素です。
(必要な要素だとは思ってますむしろホラー的には栄養素です)

大変どうでもいい余談ですが。
あと炎上覚悟で言いますが、

ホラーの予算具合って結構その『チャンネーのパイオツならびにスタイル』にも如実に出るよなって。

予算が多いと男性も女性もいい感じの肉体なんですよ。しっかり手入れされている感。
でもこれがC級Z級だと……(それ以上はいけない)

まあそんなわけで、モツも下ネタもなく、純粋に『怖い』を味わいたくなり――

昔観てえらく面白かったこちらを選んだのです。

大正解でした✌️

 

【②スチュのキャラが良い】
『電話ボックスから出たら殺される』。

そんなシチュエーションだけで大優勝ってなもんですが、主人公のスチュの人物像がまた絶妙なんです。

一言で言えば『しょーもない男』。
口先だけでメディアの世界にいっちょ噛みし、人を騙し傷つけ、ブランドもののスーツを品なく着こなして、助手の青年に給料も払わず、妻がいるのに若い女にモーションをかけ、ピザのデリバリーに偉そうに振る舞うウルトラハイパー雑魚野郎です。

そんな雑魚野郎に降りかかった災難。

最初はスカッと感もありますが、だんだん可哀想になっていきます。
警察や集まった人々、妻にも『拳銃を持って電話ボックスに立て籠る異常者』として扱われて。

やがて処刑――自らのしょうもなさや、いかに自分が小物か、妻や不倫相手のみならずアメリカ全国民の前で告白させられます。

涙ながらに反省し、妻に赦しを乞い、脅迫者に妻の命乞いをする彼に、

( ・ω・)<ああ、人間だなぁ……

と感じました。

せこくて、誘惑に死ぬほど弱い本性。
けれど一皮剥けば、誰だって(これを書く私も)こんなもんだと思うんです。

だから人間は手を取り合うのか……と現在書いてて思いました。

あと、ちょいちょい賢いところを見せます。
ケータイ電話で警察にかけながら、脅迫者との会話を装って、危急的状況をこっそり通報したり。

やっぱりもがいている人間は良い。(どんな感想)

 

【③電話の男の正体】
スチュを追い詰めた脅迫者。
その正体は、ラストまで明言されません。

不倫相手へのラブコールにたまたまそこ――8番街と53丁目の角にある電話ボックス――を選んだだけのスチュを、電話の内容程度で粛正されるべき存在と判断して、尾行して調べまくる系です。

途中で帰還兵になりすましたり、虐待された過去を仄めかしたと思ったら嘘だと嘲笑う。

 

The Caller:「面白いよな。相手は誰か分からない」
      「電話が鳴ったらつい出てしまう」

 

そう嘯いたのがすべてでしょう。
誰か分からない、それこそが脅迫者の正体だった。

しかしラスト、彼は画面に出てきました。

それまで一度も登場していない、眼鏡をかけた男性。
ごく普通の外見で、服装からも職業や素性は分からない。

彼は一命を取り留めたスチュに言います。

 

The Caller:「礼は結構だ。誰も言わないしな」
      「君の誠実さが続くよう祈る。もしそうでない時は」
      「また電話するよ」

 

そして冒頭と同じ内容のナレーションが流れます。
オープニングは宇宙にある電話の衛星から始まり、地球の表面、アメリカの地図、そして電話ボックスへ。
エンディングはその逆。
実にマクロな視点です。

そして、作中で脅迫者が語ったテーマ=『電話が鳴れば相手が分からなくても出る』。

そのナレーションの声、口調は、脅迫者と同一のものでした。

つまり彼の正体は、
言葉の綾となりますが、いわゆる『神』。

スチュや、その他不届きものに裁きを与える存在だったのです。

 

【まとめ:映画的な伏線でした!】
……つまりこれ、開始5秒で脅迫者の正体に触れてたんですね。

( ・ω・)<いや本当にすごいな?

The Callerがナレーターも兼ねているのが、『神の視点』っぽくでめっちゃグッと来ました!

(冒頭の謎の歌=「ロングディスタンス〜♪ 天国に繋いでほしい〜♪」に気を取られて気づかなかった)

犯人に偽装されて殺された(たぶん)ピザのデリバリーさんが謎のままでしたが、大満足の一本でした!

 

次回は4月8日月曜日、4月15日月曜日、
1948年制作、アメリカのサスペンス、
『ロープ』の話をします。

( ;ω;)<原稿が終わらないのでお休みいただきます……

 

鳥谷綾斗