人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/殺人漫画

やっと語れる。
語る語る詐欺をしてしまって大変失礼しました。
言い訳をしますと、ずっと公募用の長篇原稿に情熱を傾けていました。

うまく結果に結びついてくれたらいいなぁと思うこの頃です。

 

2013年制作、韓国のサスペンスホラーです。

 

 

 

【あらすじ】
『恐怖の教祖』と呼ばれる売れっ子Web漫画家、カン・ジユン。
ある夜、彼女が連載するコミックサイトの編集長が奇妙な死体で発見される。
それは、ジユンが描いた漫画に出てくる惨殺死体の構図とまったく同じだった。
二人の刑事・ギチョルとヨンスから疑いの目で見られる。

【ひとこと感想】
外道だらけの登場人物の中で、せめてあの子だけは救われてほしい。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①邦題のせいでB級イロモノかと思いきや。
②映像で怖がらせるナイスな心意気。
③えげつない天秤が揺れる様。

 

【①邦題のせいでB級イロモノかと思いきや】
原題はハイセンスなのに邦題は「どうしてこうなった」になる海外映画は、多々あります。
自分はいまだに、『釜山行(プサンヘン)』が『新感染 ファイナル・エクスプレス』になったことに複雑さを覚えます。(分かり易いんだけども!)

そしてこの映画の原題は『Killer Toon』。
確かに訳すと『殺人漫画』だわ。分かりやすい。キャッチーさがすごい。

だがしかし、「もうちょっとどうにかならんかったん???」感がぬぐえない。たぶん一生ぬぐえない。

何故ならこの映画、邦題のB級ヅラとは裏腹に、ふっつーにド重いのです。
韓国映画の血脈を感じました。

 

【②映像で怖がらせるナイスな心意気】
ホラー映画として非常に堅実なつくりです。
劇画調のリアル系な漫画の絵をうまく取り入れた演出だけでなく、
映像ならではの手法できちっと怖がらせます。

肉と野菜とキムチを山盛り出してくるサムギョプサルばりに、恐怖描写てんこ盛りでした。

特に第2の犠牲者、葬儀会社のチョ社長が最高。
(ちなみに彼が元凶でした)

チョ社長には、介護に疲れ果てて妻を殺害したという過去がありました。

 

「死者に幸あれ」
「俺を助けてくれ」

 

そう言って、妻を拘束して口に米を詰めて窒息死させました。
(この回想場面も怖い)

怨霊となった妻にチョ氏は惨殺されます。
一連の流れを見た正直な感想がこちらです。

( ・⌓・)<……いいわ〜、これ。

( ・⌓・)<自分の首を折った後に真顔になってゆっくり倒れて、

( ・⌓・)<後ろに奥さんの怨霊がいたって演出エモすぎる〜〜

なんかシンプルに褒め言葉しか出なかった。
あからさまビックリ系ではなく、じわじわ怖いじっとり系のホラーがお好きな方は絶対にツボります。

 

【③えげつない天秤が揺れる様】
さらに第3の犠牲者、ヨンス刑事の生き様と死に様がえげつなすぎでした。

冒頭の捜査場面で「この刑事どもクズだわ」と思いきや、中途で「あれ? 部下想いと家族想いでいい人なのか?」と思いきや、最終的に「ドクズやないかい!」となる仕様です。最高ですね。(強調)

そうです。この映画の特徴は、登場人物が清々しいほどのクズばっかな点です。

さてこの(妊娠した妻をずっと気遣う一見ハイパー善人の)ヨンス刑事、
少女をひき逃げしていました。

この真実だけでも大概ですが、事実(回想場面)はさらにえげつない。
最初は少女を助けようとしたヨンス刑事。
ですが、ハンズフリーで電話していた恋人のはしゃいだ声で、その手が止まります。

 

「パパが許してくれたわ!
(ヨンスと)結婚していいって!」

 

ここで交通事故が発覚したら、警察への就職や結婚はご破産になる。

自分と愛する人の人生と、
名前も知らない死にかけた少女の命。

どちらを選ぶのか。

えげつない天秤だ、と思いました。
彼は前者を選び、少女を殺しました。
罪の発覚を恐れ、ヨンス刑事はジユンを殺そうとします。

 

「俺の人生を台無しにする気か!」

(命乞いをするジユンに対して)
「助けてだと!?
(おまえを助けたら)俺の人生は、俺の娘はどうなる、ふざけんな!」

 

( ・⌓・)<……クズーー……!!

しみじみ思いました。
いや知らんがな。なんでおまえ被害者ヅラしてんだ。

そんな輝かんばかりのクズであるヨンス刑事は、大変バカバカしい死に方で退場しました。
こちらはぜひ、ご自身でお確かめください。
(「そうはならんやろ」って思いました)

 

【まとめ:せめて彼女だけは救われてほしい】
そんなクズだらけの作品ですが、 唯一の良心 と言える人物がいました。

亡霊の声を聞き、それを絵に起こす力を持つ少女・ソヒョンです。

彼女の存在こそが、一連の事件の発端でした。

ソヒョンは、母親を殺した父親に死体と閉じ込められ、亡霊たちに絵を描かされて復讐の道具にされ、周囲から石を投げられきました。
やっとジユンという理解者と出会えた――なのに。
見捨てられた者どうし寄り添ってきたのに、結局はジユンも自分の欲望のためにソヒョンを殺しました。

可哀想すぎる。
この子が一体何をしたというのか。

せめてソヒョンさんだけは光の元に行けますように。
と、エンドロールを見ながら祈りました。
亡霊を利用しての自己表現も復讐も、やりたい奴がやればいいと思います。

 

最後は主人公のジユンだけ生き残りました。
振り切った外道である彼女は、このまま亡霊と一緒に鮮血の道を歩いて行くんでしょう。
それはそれで結構好きです。

……にしても、「私の作品、分身である証です」と言って血でサインを描くのすら伏線だったとは。
(ごめんよ厨二病とか思っちゃって)

満足のいくホラー映画体験でした!

 

次回は10月18日月曜日、
2021年制作、アメリカのソリシチュホラー、
『スパイラル:ソウ オールリセット』の話をします。

 

鳥谷綾斗

映画/ドント・ブリーズ2

ソシャディに気をつけて、映画館で観てきました。

( ゚∀゚)<にゃっほー!!

(推し作品の続編&567関連でストレスマッハ状態でのお出かけ嬉しさのあまりの咆哮)

 

 

公開終了ギリギリでした。
事前に『1』を再鑑賞して布陣を固めて挑みました。オタクとして完璧な自分が誇らしいです。
(自分で自分を褒めるスタイル)

2021年制作、アメリカのホラースリラーです。

 

www.donburi-movie.jp

 

 前作の私の感想はこちら。

word-world.hatenablog.com

 

 

【あらすじ】
前作から8年後、盲目の老人は11歳の少女・フェニックスと『親子』として暮らしていた。
ある日、町に出たフェニックスは謎の男に話しかけられる。
その夜、老人たちの家に男たちが侵入した。狙いはフェニックスだった。

 

【ひとこと感想】
正当な続編であり、作り手の慈悲深さを感じる。

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①正当なる続編
②犬映画としても光る
③少女の選択

 

【①正当なる続編】
ドンブリ①の感想に多いのが、

「強盗であるヒロイン・ロッキーと、反撃する盲目の老人のどっちを応援したらいいのか分からない」

なのですが。
こちらは制作側が意図したもので、「観客に応援する側を決めてほしい」とのことです。
そのスタイルを私は支持します。自分で考えて、あと御心に従った結果、前作は『盲目の老人』を応援しました。

(①の途中でドン引きしましたが、仇をアレさせる方法がものすごくアレだったのが決め手でした)

(何が何でも信念と最初の目的を貫き通すロッキーも拍手しましたが)

しかしご安心を。
この②では、間違いなく『老人』(ウィキによる名前はノーマンですが、馴染みがないので呼称はこれで)を応援してOKです。
途中、「ん?」ってなりましたが見事にひっくり返されて、ガッツポーズ取りました。俺は間違っていなかった。

 

【②犬映画としても光る】
さらにドンブリといえば犬。
『パニック・マーケット』と同じくらい犬が光ります。
②でも、『老人』とボディガード兼家族の猟犬・シャドーが出てきますが、

家に押し入った暴漢によって殺されました。

( ・⌓・)<ホラー映画なのに!?

動揺しました。勝手に、ホラー映画はヒューマンドラマよりも犬が死ぬ可能性が低いと思っていたからです。
ですがそこは犬愛好映画です。
シャドーの死を、単なる演出には致しません。

『老人』はちゃんとシャドーの仇を取りました。

そして暴漢どもがけしかけた猟犬と心を通わせます。
暴漢どもが放火し、火の海となる家。『老人』は、自らを省みず、盲目かつ裸足(たぶん)の身で、自分を襲った犬を助けました。
犬は恩を忘れない――攫われたフェニックスがいるアジトへ案内します。

( ;ω;)<……犬!!!

犬から気力を与えられて覚醒し、惨殺された友人が持っていた武器で武装するジジィ、本気でかっこいいです。

本気でかっこいいんです。

(何度だって強調する)

 

【③少女の選択】
老人が、実の娘と偽って育ててきた少女・フェニックス。
(正直に言って『パパ』は無理があるだろうとは思った)

ネタバレします。暴漢は彼女の実の親でした。
フェニックスの本名はタラ。母親も生きていて、幼い頃からずっと心に残っていた子守唄を再び聞くことができました。
それが明かされた時、「なんで普通に玄関から入って、『実の親です。娘を育ててくれてありがとうございます』って平和にできないんだよ」とか思いましたが、実の父親が彼女を迎えにきたのは裏の目的がありました。

その裏の目的が、娘に対する愛情がゼロに近いのがやるせなかったです。
妻への愛情の一欠片でも、娘に注げなかったものか……。

すべての真相を知った彼女は、迷います。

覚醒剤を製造し、自分を『パーツ』としか見ていない実の親たち。
殺人し、目的のために強姦(少しニュアンスが違う気がする)さえした育ての親。

彼女は、どちらを選ぶのか。

ラスト、どちらの親も置いていき、彼女は養護院に向かいます。
「名前は?」と尋ねられ、はっきりと答えます。

 

「My name is Phoenix

 

それが彼女の答えでした。

 

【まとめ:慈悲深き製作陣】
『老人』は、自らを『怪物』だと呼んでいました。

その割には、彼は弱いのです。
予告編やあらすじでは、いかにも無双してそうなイメージですが、実際は倒すのに苦労しています。
その代わりめっちゃタフです。①を鑑賞し直した時、「いやアレは死ぬだろう……」と思っても普通に生きていた。
(ちなみにロッキーも一晩で顔の怪我がほぼ回復していた。揃ってバケモンか)

そこが良かったと思います。
『老人』はあくまで、ジェイソンやフレディその他のような存在ではなく、あくまで『人間』の延長にいる。
人を殺し、人を無理やり妊娠させたけど、元を正せばひどい不条理があったから。

望んで怪物になったわけではない。

そんな『老人』が、罪を犯してでも手に入れたかったものを、作り手は与えたのです。
せめて死ぬ前に、彼に『幸せ』の片鱗を与えたかったのだろう、と思います。

優しい。
そういえばフェニックスの実の親たちも普通に殺されたけど、死体は共に在らせた。
せめてもの手向けですね。優しい。

たとえホラーでも一欠片の優しさを忘れてはいけないんだな……と感動していたら。

ハイ来ました、エンドロールの後の数秒。
倒れた『老人』に犬が駆け寄り、その手をぺろっと舐めました。

さあ、これはどっちだ。

(『老人』の手が動いたような動かなかったような)


( ・ω・)<……いや、

( ・⌓・)<いやいやいや!

そこは素直に死んどけって。
人間が人間たる根拠は、『死ぬ』なんだから。

怪物ではなく人間のままで死んでいてほしいんだって!

と、いう面倒くさいオタク心を発揮して、映画館を後にしました。
続編か。続編フラグなのか。そのために『老人』は怪物にされてしまうのか。

もしも続編があれば――(10秒ほど考える)――観に行く、と、思います。
哀れなオタクのサガです。

 

【おまけ:ジジィのかっこよさ天元突破場面】
水がたまる地下で、横たわって死んだふりをしながら、水の波紋で敵の位置を察知して正確に撃ち殺す場面。

 


www.youtube.com

 

かっこ良すぎ!

あと「息をしろ」という対比となるセリフも良かったです。

 

次回は10月11日月曜日、
2013年制作、韓国のホラースリラー、
『殺人漫画』の話を 今度こそ します。

( ・⌓・)<えっ、10月?

 

鳥谷綾斗

映画/オーディション

アマプラレンタルで観た映画シリーズです。
1999年制作、日本のサイコホラーです。

 

 

 

【あらすじ】
妻と死別した青山。
息子の後押しで再婚を決めると、友人である吉川が彼の嫁候補を選ぶための架空の“オーディション“を提案する。
それに参加した美しい女、山崎麻美に青山は夢中になる。
しかし麻美には、不審な点がいくつもあった。

 

【ひとこと感想】
「キリキリキリ……」の言い方が意外と可愛いけど最恐。

※全力ネタバレです。
※犬が死んでしまう場面があります。

 

【3つのポイント】
①前半はメロドラマ 〜おじさんのゲスさを添えて〜
②一生忘れられない一場面 〜Jホラーの頂点風〜
③クライマックスの悪夢 〜拷問仕立て〜

 

【①前半はメロドラマ 〜おじさんのゲスさを添えて〜】
この作品、ホラーを求めていると前半は少々退屈です。
基本的にホラー映画は開始15分で何かしら起こるもの(鳥谷調べ)ですが、ガチでおじさんの婚活&脳内お花畑が延々描写されます。

しかしココで、ゲスっぷりというエッセンスを忘れないのが親切仕様。
青山と仕掛け人の吉川が、悪意いっっっさい無く、ナチュラルに他者を物扱いしているのです。

考えてもみてください。
俳優として映画のオーディションを受けに来たら、プロデューサーの結婚相手として見られているのです。
役者としての資質ではなく、やもめおじさんの嫁にふさわしいかどうかを重視されていたのです。
他に例えると、就活で真面目に対策を講じているのに面接官にLINEで「今日はお疲れちゃん♪(´ε` ) よかったら今度ゴハン🍙とかどうカナ❗️❓(^_^;)」と誘われる、あるいは作家志望で作品を送ったのに何故か顔写真を求められてそれで判断されるようなものです。

他者の『本気』をごく自然に踏み躙るおじさんたちに、そうと知らずに女性たちは回転寿司のように次々アピール(中にはアレなアピールもありましたが)しますが、

ロクな女がいない。
仕事を持ってて、きちんとした『訓練』(ピアノ、日舞、声楽)を受けている女がいい。青山の亡き妻のように。
不幸な女の方がいい。表現せざるを得ないから。

などと好き勝手に言われます。
トドメの一言はコレ。

 

「こんなの初めて車を買った時以来だよ」

 

( ・⌓・)<こいつもう死んでいいんじゃない?

自然とそう思えます。すごいねー。(棒)
ちなみにこの、主人公へのヘイトをためにためてバーンと殺すという手法は他にもあります。田原秀樹(『来る』)しかり本間隆雄(『RIKA』)しかり。
しかし青山はあそこまで分かりやすいクズではなく、ゆえにタチの悪さがリアルでした。

 

【②一生忘れられない一場面 〜Jホラーの頂点風〜】
さてそんなメロドラマの雰囲気は徐々に壊れていきます。

決定的なのは、予告編冒頭でも使われるこの場面。

 


www.youtube.com

 

安普請のアパート。
古い砂壁、ささくれだった畳、饐えた臭いさえ漂ってきそうな重い空気の中、
長い黒髪の美しい女がうなだれている。
傍にある異様に大きな、人間すら余裕で入れるズタ袋。
そして黒電話が、……

この部分はきっと一生忘れられません。
断言します。
トータルで言えばこの映画はJホラーの頂点ではない。(個人的意見)
けれどこの場面は、間違いなく一番恐いものだ、と。

 

【③クライマックスの悪夢 〜拷問仕立て〜】
そこからは恐怖は加速度的です。
薬入りウィスキーを飲んで倒れた青山を、麻美は拷問……いや、『痛み』を与えます。
その解体直前に、青山は悪夢に溺れます。
おまえサイコメトリストなの? ってくらいに詳細に『麻美』の断片を拾う拾う。

悪夢の内容は、書くのキツいのでやめておきます。
幼い麻美を演じる役者さんのメンタルが心配になるレベル。
視聴後に「あのズタ袋、大杉漣さんだったの!?」と喫驚したりと、よくもまあこんな気が狂う寸前みたいなものが作れるな!?

悪夢から覚めた青山には更なる悪夢が待っていました。

 

「これはね、骨付きのお肉も簡単に切り落とせるの」

 

舌に筋弛緩剤(痛覚を鋭敏にする作用あり)を注射する、
目の下に細い針を刺す、
裸の腹に針を刺し、その上に乗る、
糸切り鋸で足を一本ずつ、……キリキリキリー、キュルキュルキュル……

――という拷問内容もえげつないのですが、その演出がえげつない。
監視カメラのようなアングルで、上から覗き見ているような感覚にさせ、
掃き出し窓越しのアングル+無音で、庭から覗き見ているような心地にされたかと思えば、麻美が実に無造作に切り落とした足をガラスにぶつけてくる。

視聴者を巻き込もうとする臨場感が容赦ない。

これはもう悪夢だ。悪魔だ。映画祭の人は正しかった。


そんな目に遭っても、いや遭ってるからこそ、当の青山は自分の都合の良い妄想をしていました。
麻美は美しく都合のいい女のままで、
家政婦、関係を持っていた会社の部下、息子の彼女さえ性的欲望の対象にする。
なんとも情けなく、哀れな、唾棄すべき『人間』をこれまた容赦なく描写していました。

 

【まとめ:麻美のことは結局よく分からない】
貞子さん、伽椰子さん、リカさん、富江さん、美々子さん、菰田幸子さん。
日本を代表するJホラーのヒロインたちです。
(黒井ミサさんも思いついたけどまた別のジャンルが気がする。ひきこさんと口裂け女さんは発祥が都市伝説なので割愛)

彼女たちの中に混じる『麻美』は、ひときわ異彩を放っています。

何を考えているのか分からない。
今回きちんと観直して、過去の手がかりもありましたが、ただどうにも読み取りにくい。

この不可解さは、
ひとえに『目的がよく分からない』のが原因ですね。
(上記の人たちはものすごく乱暴に言えば『幸せになりたい』という切実さがあった)

青山やその他の男たちに対して、怒ってるのか悲しんでいるのか。
ただ、テキパキと解体する姿は、『夫にキレながら家事をする妻』を彷彿させました。

そう、『よく分からない』。
だからこそ、麻美はJホラー最恐の女なのです。

ラスト、倒れた麻美が訥々と、ぽつぽつと、青山と出会った際に口にしたのと同じ言葉をつぶやきます。
あれには理解の糸口があるような気がしますが、……また原作を読もうかと思います。

しかし、すごい映画だった。
ホラー映画の基本のひとつ、「こいつなら別に死んでも構わない」を突き詰めているのに、「やめてもう普通に殺してあげて観てるのつらいから拷問内容もだけどその見せ方がえげつなすぎるから」になるのは相当です。

恐るべき手腕です三池監督。
この作品を知っているからこそ、自分はこの監督の作品に惹かれ続けるのです。

( ・ω・)<これ映画館で観たかったなー。

 

次回は9月20日月曜日、
2013年制作、韓国のホラースリラー、
『殺人漫画』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

映画/殺人者の記憶法

アマプラで観た映画シリーズです。
2017年制作、韓国のクライムサスペンスです。

 

 

 

 

【あらすじ】
認知症を患う獣医・ビョンス。
彼は「死んで当然のクズ」を殺し続けた殺人者だった。
町で連続婦女殺人が起こる中、ビョンスは警察官のミンと出会う。
彼こそが連続殺人の犯人だと直感したが、ミンはビョンスの娘・ウンヒに恋人として近づく。

 

【ひとこと感想】
たとえ殺人鬼でも、殺せば死ぬし認知症にもなる。

 

※全力ネタバレです。
これはネタバレなしでぜひ観て頂きたい。

 

 

【3つのポイント】
①斬新な設定。
②忌まわしい病は救いでもあった。
③クライマックスの殺し合い。

 

【①斬新な設定】
認知症の元殺人鬼。ありそうで無かったこの設定。
どうにも忘れがちですが、ホラー映画界以外の殺人鬼は、人間なのです。

 

(殺人犯になんてそうそう遭遇しないと言い切る娘に対して)
「(殺人犯に)会う可能性はある。
 私も殺人者だから」

 

長年、殺人鬼と獣医とシングルファザーの3足の草鞋を履いていたビョンス。(バイタリティがすごい)
17年前の事故が原因で、認知症アルツハイマーになった彼は、娘に言われます。

ボイスレコーダーに日々の出来事を吹き込むこと。
吹き込むのを忘れないように、ひたすら繰り返して習慣化すること。

この『習慣化』は大きなキーワードです。
長年、暴力系クズ(とビョンスが判断した人間)を殺してきた彼にとって、『殺人こそ習慣』でした。
獣医として誤った判断を下しても、殺人は間違えない。

なんとも凄まじい人間像ですが、人物描写であるエピソードも、それを演じた役者さんの演技も凄まじい。

もっとも衝撃的なのは、車での張り込み中に、ペットボトルで処理した自分の尿を自分で飲む場面。
こんなえげつない描写があるなんて、とウホァと感心したし、ウェエとえずきました。

 

【②忌まわしい病は救いでもあった】
鑑賞者に対して、「この病気にはなりたくない」を散々植えつけますが、話が進むにつれて、この忌まわしい病は救いでもあると分かりました。

それは17年前――ビョンスの脳の損傷の原因になった事故の前。
彼は不貞を働いた妻を殺した。
妻は言いました。「娘のウンヒだけは殺さないで」。
(ていうかなんで妻はこれ言ったんだろう。言わずに死ねば分からないのでは…バレた時の保険?)

実の娘ではなかったことに怒り狂い、他人である幼いウンヒを殺そうとしますが、頭痛が彼を襲い、記憶を失くしてその事実を忘れます。

ビョンスが娘を殺さずに済んだ場面、
自分には、まるで彼の体が娘を守るために記憶喪失にさせた――ように見えました。

(ビョンスの幻覚であった亡き姉も、「記憶喪失を望んでいる」と言っていました)

(幻覚の姉はビョンス自身の心だと思うので)

恐ろしい悲劇が救いの面を持つ。
そういう『形』の物語は、自分がもっとも感動するものです。美しいなぁと素直に思う。

 

【③クライマックスの殺し合い】
そんな抒情的な場面の後、クライマックスは、ビョンスと現在進行形殺人鬼・ミン巡査との殺し合いです。

ここから真面目に怖かった。
1時間31分21秒あたりで悲鳴が出た。
最初はゆっくり歩くけど、走ったら足が超絶速い殺人鬼、べらぼうに怖い。
さすが韓国、肉弾戦が容赦ない。
「後ろから殴れ!」とかそういうヤジを飛ばす隙間すらありませんでした。

血まみれで泥沼の駆け引きを経て、
殺人鬼を滅多刺しにした『鬼』の父親に、娘のウンヒは怯えます。
そんな娘に、ビョンスは言います。

 

「お前は大丈夫だ。
 血の繋がらない他人だ。
 お前は人殺しの娘じゃない」

 

これもビョンスの病と同じ、悲劇的な事実が救いの面を持つ『形』です。
じわりと染み込む、痛々しくて真っ赤に濡れた愛情の描写でした。

 

【まとめ:殺人鬼よりも恐ろしいもの】
主人公・ビョンスがいわゆる「信頼できない語り手」なので、途中で真相がどこにあるのか分からなくなります。
ミン巡査が本当に殺人犯なのか。
実はすべてビョンスの犯行だったのではないのか。
周囲からの信頼を失う、それももちろん怖いのですが、

自分を信じられなくなるのが一番怖い。

忘れるとはこんなにも恐ろしい現象なのか。
ビョンスが妻を殺した記憶を取り戻して、大量の死体を埋めた竹林で寝転がる場面。
この狂気の一歩手前、深い絶望と、マグマのような激情も、綺麗さっぱり忘れてしまうのか。

それが病と、
決して罰せられない殺人者・『時間』が持つ恐ろしさだと感じました。

そして、色んな解釈が成り立つ結末。
ウンヒのことを姉と呼ぶほどまで病が進行したビョンスは、しかしミン巡査のことを忘れなかった。
記憶を信じるな、まだ奴は生きていると思い込み、ビョンスはミン巡査を探す『旅』に出ます(※比喩)。

探して探して、確実に殺すために。

何故ならビョンスにとって殺人は習慣だから。
体の深いところまで染みついてしまった行為だから。

一度殺人鬼になってしまえば、
二度と人間には戻れない。

という絶望感がえげつない結末でした。

いや重いわ。(正直な感想)
寝る前に観るもんじゃないわ。(胃もたれした)

というわけで精神が元気な時に観てください。

別バージョンの『殺人者の記憶法 新しい記憶』はまた後ほど。

 

 

次回は9月6日月曜日、
1999年制作、三池崇史監督の日本の隠れた名作サイコホラー、
『オーディション』の話をします。
(クーポンでレンタルした)

 

鳥谷綾斗

映画/人狼ゲーム デスゲームの運営人

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2020年制作、日本のソリシチュサスペンスホラーです。

 

 

 

 

【あらすじ】
人狼ゲームの運営側で働く青年、正宗。
いつものようにプレイヤーを拉致し、ゲームの舞台を整えていると、かつて家庭教師をしていた女子高生・柚月を見つける。
柚月を死なせたくない正宗は、なんとか彼女を勝たせようと画策する。

 

【ひとこと感想】
デスゲームの運営だって『お仕事』だった。

 

※程よくネタバレです。

 

【3つのポイント】
①ルールを知らなくても大丈夫。
②お仕事ものに感じる悲哀。
③削ぎ落とした結末。

 

【①ルールを知らなくても大丈夫】
鑑賞前に懸念事項がひとつ。

人狼ゲームのルール、よく分からん。

( ・⌓・)<アンポンターン。

人狼、村人、預言者霊媒師ってどう違うの? 用心棒って?
そんな状態ですが、作中の説明のおかげで、「人様に説明できるほどではないけどフンワリとは理解できる」になりました。

誰が人狼か言い当てれば勝ち。
そして『嘘を見抜く』よりも『土壇場で信じれてもらえるか』がポイントな模様。
なので人狼ゲームに馴染みのない方でも大丈夫だと思います。

 

【②お仕事ものに感じる悲哀】
作品のコンセプトは、「もし自分が主催するデスゲームに愛する人が参加したら」。

デスゲの諸悪の根源たる運営側にスポットライトを当てるのは実に興味深く、正宗はきちんと主人公として焦り、ピンチに陥り、東奔西走しました。

ただし同僚の琥太郎を巻き込んで。

「俺は関係ない!」と拒否る琥太郎に「どうしたらいいかな!?」と言い続けます。正宗めっちゃメーワクなやつだな。メロスじゃん。
ですがセリヌン琥太郎、何やかんやで力を貸します。「よいやつだな。死ぬぞ」と思ったものです。

(ホラー映画の過剰摂取による荒んだ厭世観

次々と起こるアクシデントに、運営側も必死で対処します。賃金と命のために。
それを見て、

( ・⌓・)<これはもしやお仕事もの作品なのでは……?

と思いました。

感じたのです。働く人たちの悲哀を。
いわゆるデスゲ主催者に感じる、不愉快な愉快犯要素はほぼ無く、淡々と上から言われたことをこなすパートタイマーみを感じました。(そこがまた狂気の沙汰)

途中、正宗が心情を吐露します。
運営の仕事を続けて、三千万もの大金を所持する彼は、不幸まっさかりの顔で言います。

 

「最初はそうでした。

 でも今は、お金があってもそんなやりたいことないなって」

 

( ・ω・)<……そりゃそーだ。

モニター越しとはいえ目の前で人がバンバン死んで、間接的とはいえ加担していて、正常な脳みそでいられるわけがない。
でも『上層部』には逆らえない。そんな上からのプレッシャーに耐え、黙々と『仕事』をこなす悲哀がありました。

 

【③削ぎ落とした結末】
そんな社畜たちの静かな反旗の物語の結末は、最低限の情報でまとめられてて好感度が高いです。

映像をうまく出し、過去の場面を効果的に見せることで、セリフによる説明はなしで「ああ、そういうことか!」と納得させる。
面白かったです。こういうのができるから映画は良い。
見ようによってはブツ切りに見える結末でしたが、個人的に大変好ましかった。

ちなみに好きな登場人物は人狼の佐竹さん。
アニメに出てきそうな声音で独特の喋り方のトーン、何より計算高さにグッと来ました。
そして裏切られ、策に溺れた最期。お見事です。この女優さんチェックしよ。

 

【まとめ:久々の現代邦画ホラー】
最近すっかり海外・古典ホラーにお熱でしたので、久々の今時の邦画ホラーでした。
(リカちゃん映画も観れなかったし)

現在注目しているのは『恐怖人形』です。
今度ネトフリで観ます。

これからもエモい邦画ホラーがどんどこ生まれることを、心より祈念しております。

 

次回は8月30日月曜日、
2020年制作、韓国のクライムサスペンス、
殺人者の記憶法』の話をします。
(クーポンでレンタルした)

 

鳥谷綾斗

映画/フランケンシュタイン(1931年)

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
1931年制作、アメリカのSFホラーです。

 

 

 

【あらすじ】
フランケンシュタイン男爵家の嫡男である科学者・ヘンリー。
電気療法と電気生物学を研究する彼は、『命を与える光』を証明するため、助手のフリッツと死体を集め、人造人間を造り出した。
だが出来上がったそれは、ヘンリーにまつろわぬ『怪物』であった。

 

【ひとこと感想】
この映画の科学者は『マッドサイエンティスト』ではないゆえに胸糞が悪い。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①これはマッドサイエンティストなのか?
②ヘンリー博士の正体。
③だからこそ胸糞が悪い。

 

【①これはマッドサイエンティストなのか?】
フランケンシュタイン』における勘違いといえば、

フランケンシュタイン』は怪物の名前ではなく、それを作り出した博士の方。

です。ジェイソンはチェーンソーを使ったことがない、みたいなものですね。
それと同様に、自分はこの映画の科学者を『マッドサイエンティスト』の元祖だと思っていたのです。
期待しました。ワクワクしました。ですがそれは砕かれました。

( ・⌓・)<この人、(俺の考える)マッドサイエンティストじゃなくない……?

※以下、あくまで私見です。

マッドサイエンティストの定義を書き出すと長くなるので、自分が『マッドサイエンティスト』というものに求めるもの=概念を書きます。

前提はたったひとつ。

自分自身の研究に、異常な執着心を持つこと。

巷では『生命、人権を軽んじる〜』などもありますが、それはあくまで結果論。
彼ら彼女らは研究心に取り憑かれるあまり、生命や人権を後回しにしがちなだけなのです。

それが何ですか、このヘンリー・フランケンシュタイン博士。
自身の研究にたいして執着していない。
と、自分にはそう見えました。

 

【②ヘンリー博士の正体】
作中でのヘンリー博士の行為は、

①助手のフリッツと墓荒らし。
(ただし危険なことはフリッツにやらせる)
②上司のウォルドマン博士から脳みそを盗む。
(ただし実行したのはフリッツ。事故で殺人犯の脳になりましたが)
③『命を与える光』こと雷で、人造人間を作る。
④自分に服従しない怪物だったと判明し、処分を決める。
⑤ただし対策は閉じ込めただけ。
⑥怪物のことは忘れて、父親に命じられて美人婚約者とハッピーサマーウェディング

⑤と⑥で、フリッツと、関係ないウォルドマン博士が死にました。

( ・⌓・)<……は???

としか言いようがない。マジかお前。仮にも科学者が、自分の作ったもの放置して結婚式てお前。

博士が怪物を作った目的もよく分からなかった。
自分の研究をバカにされて……みたいな被害者ヅラしていましたが、簡単に断念しました。オトンに命じられて。あっさり忘れて女とヨロシクできる程度のものだったのです。

その程度の執念しかなかったのです。

人様の墓を荒らし、盗み、勝手に実験材料にしたのに、後始末すらせず見て見ぬふりをする――これのどこが『狂気に至るほど自分の研究にすべてを捧げた科学者』ですか。

『透明人間』の博士を思い出してみましょう。

彼は身分差のある恋人と結婚するために研究に熱を入れ、結果、自ら怪物になりました。
それと比べると、「マッドはマッドでもクズという方のマッドやないかい」という感情が生じます。
そんなヘンリー博士の人間性を表現するセリフがコチラ。

 

(研究室を捨てて、明るい庭で婚約者といちゃつきながら)
「君といると天国のようだ」

 

( ・ω・)<……

( ・⌓・)<いやこれサイコパスって言わん?

(※ここでいう『サイコパス』は、『責任感のない権力者』という意味です)

(※ここまでムカつくのは、たぶん博士が権力者側だというのもあります)

(※ノブレスオブリージュって知ってるかこの貴族野郎)

 

【③ゆえに胸糞が悪い】
地下の研究室から出てきた怪物は、心優しい女の子と出会います。
一緒に湖に花を浮かべて遊び、あたたかな空気の中、
怪物は女の子を湖に投げ入れます。
女の子は花と違って水に沈むと、怪物には分からなかったから。

何故だ。
何故こんな科学者ごっこをしたかっただけのやつのために、こんな小さな子が犠牲にならなければならんのだ。

一部の責任感のない権力者たちのやらかしで、
犠牲になるのはいつだってそういう人々です。

怪物の存在を知り、町の男たちは立ち上がります。
松明を握り、怪物を殺せと行進します。
それを怯えた顔で見つめる女性と子どもたち。
なんとも暗示的な、なんとも既視感のある、90年以上前から変わらない光景だ、と思いました。

 

【まとめ:哀れな怪物の末路】

フランケンシュタイン』と聞いて思い浮かべる姿の怪物は、最初から最後まで、恐ろしいけれど哀れでした。

 

「生きてる 生きてる 動いている」

 

創造主のはしゃいだ声で怪物が目覚める。
まぶたで半分隠れた、『虚』さえ無さそうな両目。
針金を入れたようなぎこちない動き。
松明の火を怖がり、
見せ物小屋の動物のように鞭で叩かれ、

服従しないから殺される。


火炙りにされて叫ぶ怪物に、ずっと憐憫という感情を抱きました。

……。

そんな胸糞映画のラスト。ヘンリー博士はふつーに助かり、使用人たちの「フランケンシュタイン家、カンパーイ」でエンド。
すごい。『孤島の鬼』の最終章のタイトル「大団円」ばりにムカついた。お前が(逆撫で映画)ナンバーワンだ。

そんな、もしかしたら当時の差別を描いていたかもしれない今作品、終始 (# ゚Д゚) でした。
いつか原作を読みます。
(全然違うらしいので)

【おまけの余談】
花嫁衣装のエリザベス(ヘンリー博士の婚約者)が襲われて、ベッドで力なく倒れているのを発見される場面、

( ・ω・)<あっ、昔の映画に出てくる虚弱美女の気絶の仕方だ!

この気絶の体勢、ほんとよく見かけますよね。
歌舞伎の海老反りみたいなやつ。寝違えそうだと毎回思います。(ガチの余談)

 

次回は8月23日月曜日、
2020年制作、日本のサスペンスホラー、
人狼ゲーム デスゲームの管理人』の話をします。
(クーポンでレンタルした)

 

鳥谷綾斗

映画/屍憶 ーSHIOKUー

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2015年制作、日本と台湾の合作ホラーです。

 

 

屍憶 SHIOKU(字幕版)

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【あらすじ】
TVのプロデューサー・ハウは、美しい恋人・イーハンとの結婚を控えている。
彼はとある番組で、『冥婚』――死者との結婚について取材していた。
ある日、彼は赤い封筒を拾う。すると、見たこともない場所で婚礼の儀をおこなう夢を見る。
一方、女子高生のインインはこの世ならざるものを視始め……

 

【ひとこと感想】
仄暗く陰鬱で美しい、けれど幽霊がめっちゃ元気な映画。

 

※全力ネタバレです。

 2

【3つのポイント】
①メモ:台湾の冥婚事情
②美しい悪夢
③意外とハデな最終決戦

 

【①メモ:台湾の冥婚事情】
死者と生者、あるいは死者と死者が結婚する儀式、冥婚。
台湾ではこんな感じだそうです。

①別名を娶神主(位牌を娶る)と言う。
②赤い封筒を拾った人間が、死者の相手に選ばれ、娶らなくてはいけない。
③台湾では女性の冥婚が多い。
④その背景に、未婚の女性は墓に入れないという前提がある。
⑤墓に入れない女性の霊は、怨念となりこの世に留まり続ける。
⑥だから、それを救済するために冥婚という『措置』がある。

当然ながらいちばん引っかかったのは④です。

( ・⌓・)<なんで???

としか言いようがない。
一応先に「台湾にある女性差別の思想が基づいている」という前置きはありました。だがそれでもあえて「なんで」って言ってやろうと思います。

 

【②美しい悪夢】
古き良きJホラーを思い出させる、湿度を感じる、じわじわとした、ふと気づいたら足に白い手がそっと触れているような恐怖の描き方でした。

もっとも恐ろしかった場面は、『悪夢から目覚めたハウが右隣で眠る恋人の顔を見て安堵した後、寝返りを打ったら左隣にその恋人がいた』です。

いや怖いわ。と、少々キレ気味につぶやくなど。
両手に花🌻 とかボケしてる場合じゃないです怖ぇです。

かと思いきや、霊能力に覚醒したばかりのJK・インインが見た犬の霊は、ハッキリクッキリ映したり。
シャワーを浴びるハウの横にある浴槽に、まっくろな死体が普通に設置されていたり。

スローな恐怖と瞬間的な恐怖のバランスがばっちりでした👌

あと霊媒師さんの使った交霊術(こっくりさん的なシステムで、ピンと張った革の下から針のようなものが動いて文字で知りたいことを教えてくれる)も、すごい好奇心がそそられました。
いいよね霊感アイテム。異国なので尚のことロマンを感じます。

 

【③意外とハデな最終決戦】
この映画は二部構成です。

婿殿として選ばれたハウの視点と、
次々と恐ろしい幽霊を目にするインインの視点。

二人の道はなかなか交差しなかったので焦れたのですが、きちんとクライマックスに繋がったのが素晴らしい!

そしてそれまで静かだった幽霊さんたちもヒートアップ。
学校のプールで殺された女学生さんは、足をぶらんぶらんさせて「がおー」と襲ってきたり、ポルターガイストも派手派手です。

一方、ハウは、夢の中で見た結婚式の場に訪れます。
そこでの冥婚の儀式は、美しい悪夢そのもの。
土気色の顔の『花嫁』と無理やり契らせれる、生理的な嫌悪感。
新郎新婦が礼をし合った時の、『花嫁』の ガクン!! という首の垂れよう。
お互いの血を酒に入れ、腐りかけた紅が混じった盃を飲まされる気色の悪さ。

おぞましいのに綺麗でした。

 

【まとめ:恐ろしいものが美しいものに】
さてラスト。
「どうして幽霊がいるのか」をきちんと考えたインインのおかげで、ハウは助かります。
そんな彼は呻くように、謝罪を口にします。

「イーハン 僕を許してくれ」


ここから種明かし。
インインの元に現れた恐ろしい幽霊の正体は、イーハンでした。
冥婚の花嫁に操られたハウが殺した彼女は、インインに助けを求めていたのです。

どうかハウを助けてほしい、と。

病院のベッドで眠るハウを見守るイーハン。この場面が綺麗でした。
恐ろしい化け物から優しい恋人に戻った彼女の慈愛の瞳。幽霊だからこその麗しさ。

美しいものが恐ろしいものになることがある。
だが、恐ろしいものが美しいものに戻ることもある。

物語の結びとしては、とてもロマンチックでした。

 


……にしてもこの結末は少々意外。
決して珍しくはない仕掛けなのですが、ここまでこの二人の愛情が深いとは。
何せイーハンの第一声が、

(冥婚の悪夢で魘されたハウに)
「ブタみたいに熟睡するくせに悪夢を見たの?」


だったので。

( ・ω・)<仲悪いの?

って思ったんですよ。
いやいや、これは私の偏見によるものか。『豚』って別に悪口じゃないもんな。いや知らんけど。

ゾクっとするけど派手さもある、オススメの映画です。

(今月中に『返校』を観に行きたいなーー)

(ゲーム未プレイでも理解できるかなーー)

(いやできるはずだホラーへの愛があればーー)

 

次回は8月16日月曜日、
1931年制作、アメリカのSFホラー、
フランケンシュタイン』の話をします。

 

鳥谷綾斗