人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/ザ・ハント

新年あけましておめでとうございます。
2022年です。
今年の目標は積ん読をすべて昇華して、曖昧なあらすじしか覚えていない映画を観ることです。具体的にはジブリとかディズニーですね。

ですが、このブログでは変わらずホラー映画の話をしますので、のびやかに付き合ってくださいますと幸いです🥳

新年1発目は(も)アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2020年製作、アメリカのサバイバルスリラーです。

 

 

ザ・ハント (字幕版)

ザ・ハント (字幕版)

  • アイク・バリンホルツ
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【あらすじ】
まことしやかに流れる噂、『富裕層による庶民の人間狩り』は本当にあった。
最後まで生き残るのは、狩る側か狩られる側か。

 

【ひとこと感想】
「人間のやることはくっだらん」な虐殺エンターテイメント。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①開始5分で殺戮ストーム。
②主人公は誰?
③2022年随一のくだらん真相。

 

【①開始5分で殺戮ストーム】
この映画、展開が非常に早い。
謎の人物たちによるチャット、謎の人物たちによる飛行機の移動と来て、「うっわ、なんかコイツらいけ好かんな」と思いきや、突如錯乱した男性が登場しました。
医者らしき人物が男性を落ち着かせますが、医者(仮)はCAから借りたペンで男性の喉を突き刺します。

( ・ω・)<わーお。

普通に死ななかったので、いかにも強そうな女性が現れてハイヒールを目玉に突き刺します。

( ・ω・)<わーお。

ここまでで開始5分です。早いわ。ペンとハイヒールで殺人すな。

デスゲームというジャンルの特性上、人死には早ければ早いほど良いと言いますが。
この時点で、本作は従来のデスゲームとは一線を画していることが分かりました。

 

【②主人公は誰?】
前座、もとい最初の犠牲者から視点(カメラ)がとある人物に移ります。
ブロンドヘアのお嬢さんです。
口枷の鍵を見つけて、他者にも気遣える優しい心根の持ち主。

最初に思いました。
「おっ、この人が主人公か?」

そんな彼女は、遠方からの銃撃で死にました。開始13分です。

次に視点は銃の扱いも心得ていて串刺しになった女性を助けるナイスガイへ。しかし彼は地雷を踏んでため息をついて死にました。開始15分です。

次に視点はヒゲメンへ……ちなみにこの間で、串刺しになった女性がものすごく力強い自害があり、うっかり笑いました。
ヒゲメンは他のメンバーと合流、三人組となってガソリンスタンド付きの雑貨店に行き、店主に扮した『狩る側』に殺され以下略。

いや誰が主役なのこの話!?
さっきから「この人生き残りそうだな」って人が死にまくっとるがな!

と、初ツッコミを果たした後、満を辞して登場したのがクリスタル。
本気で「こんな人いたっけ?」と巻き戻して確認しました。最初のブロンドヘアちゃんが見かけた人だった。

そんな彼女は、アフガンでの戦争経験もあるバリバリの戦闘員。
ここからブラムハウスさんちのお家芸、反撃展開が始まります。
『サプライズ』『クリスティ』的展開とも言う。)

 

【③2022年随一のくだらない真相】
クリスタルの味方すらどんどん死んで&殺していく中、真相が明らかにされます。

すべては冒頭のチャットが原因でした。
実はこれは、富裕層の人々の会話。
その中の一人であるアシーナは、ちょっとしたブラックジョークで、

 

アシーナ:「マナー(領地)でデプロラブル(哀れ・惨めな連中)を殺すのが楽しみ」

 

と書き込んでしまいます。
このチャットはハッキングされ、ネットに流出し、噂でしかなかった『富裕層による庶民の人間狩り』の証拠にされました。
ネット民はこれを信じ、アシーナたち富裕層は失脚します。
そして彼女らは憤怒の末に、

「だったら本当に人間狩りをしてやるよ!!!」

という発想に至ります。
要は仕返し、復讐だったのです。
正直に書きますね。

( ・ω・)<アホがおる!!!

始まって約2週間ですが、たぶん2022年随一のくだらん真相です。
一応、狩られる庶民は、その炎上騒ぎに加担した人たちっぽいのですが……いやそんなんで人間を狩るなよ。

ホラー脳がホラー映画を観ているのに至極真っ当な意見になりました。(遺憾)

 

【まとめ:それでも生き残った方が勝ち】
決着はガチンコ勝負でした。
ブラムハウスさんちらしい『最後は拳』です。

ただ、いつものに比べれば牧歌的というか平和というか。

途中で「休憩」と言って本当に並んで寝転んで休憩したり、
「ガラスはイヤ! やめて!」と言えば本当にガラスに叩きつけるのはやめたり、
高いシャンパンが割れないよう庇ったり。
最後はアシーナは死にますし、クリスタルの土手っ腹に穴が開くんですけども。

見事に勝利したクリスタルは、傷を焼いてドレスに着替え、アシーナのジェット機で家に帰ります。
戦利品は高いシャンパン。
ラッパ飲みをして、晴れやかに笑うのでした。

ちなみにクリスタルが人間狩りに拉致られた理由は、『人違い』だったというオチ。
最後の最後まで「くだらねー」と笑っちまう内容ですが。
そもそも、富裕層と庶民層で分断して争うこと自体がくだらない。
どちらが完全な悪というわけでもなく、どちらも同じくらい愚か。
何の意味があるんだ、とドッと疲れました。

そしてこの「くだらねー争い」は、現実にも起こっているということを思い出して、さらにドッと疲れました。

(日本で言うとアレですかね。表現の自由戦士とツイフェミ。(それ以上はいけない))

 

次回は1月24日月曜日、
2004年の韓国のミステリーホラー、
『箪笥』の話をします。

 

鳥谷綾斗

映画/劇場版 きのう何食べた?

映画館で観てきました。
2021年製作、日本のほろ苦ハピネスグルメドラマです。

 

kinounanitabeta-movie.jp

 

 

 

ドラマ版感想も書いておりました!
情熱のまま書き散らしちゃいますが愛だけはごっついです。(太文字)

 

word-world.hatenablog.com

 

【あらすじ】
とある秋の日。弁護士の筧史郎は、相方の矢吹賢二に提案する。
「今年のおまえの誕生日は、京都に旅行に行こう」
最初は浮かれる賢二だったが、やけに優しい史郎に徐々に不安になる。
「シロさん……まさか死ぬの!?」

 

【ひとこと感想】
あいすべし人たちの、おいしい日常。

 

※全力ネタバレです。
※セリフなどは曖昧です。

 

【3つのポイント】
①ケの日とハレの日だけ。
②料理がしたくなる。
③ほどけるような変化、ゆるゆるとした成長。

 

【①ケの日とハレの日だけ】
推し作品の感想を読むの大好きなので、この映画も感想ローリングしました。
大体皆さん、ツッコむ点は同じ。

( ・ω・)<ドラマ版と何にも変わってへんやーん。

この映画最大の特徴は、本当にマジのガチで『大きな事件』はないこと。

( ・ω・)<すげえ。西島秀俊内野聖陽が同じ画面にいるのに死体が転がってない。

(※『MOZU』と『黒い家』を心に浮かべながら)


殺人事件も爆破テロも何もない、誰にでも覚えがあり、それゆえ郷愁と憧憬を抱いてしまう日常があるのです。

「映画にする意味ある?」という意見も見られますが、この作品に限っては、この形が大正解だと思います。
自分は真夜中におなかを空かせながら観た、彼らの日常の続きを目にしたかったので。

なのでオープニングもドラマ版と同じ、『かえりみち』です。
流れた途端、「帰ってきたー!」と思いました🥲

しかしそれでも、
冒頭で賢二が「シロさん死んじゃうの!?」となる場面と
ラストでシロさんが「ケンジ死ぬのか!?」となる場面。
『対比』が光る脚本は、「映画っぽい!」の一言でした。
(ドラマではあまり見られないゆるリンクですね)

 

【②料理がしたくなる】
肉団子とぶり大根は作りました。

 

 

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肉団子

 

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ぶり大根

 

作ってみるとかなり手間でした。
特にぶり大根。塩振ってお湯で洗ってうんぬんかんぬん。
弁護士の仕事から帰ってこんな手間暇をかけた主菜と最低2品の副菜を作るなんて。

( ・⌓・)<愛情だなぁ……

これを愛情と言わずに何と言うのか。
作ってみて分かった、そんな感じです。

 

【③ほどけるような変化、ゆるゆるとした成長。】
この映画、大きな事件は確かにないです。

ですが、大きな事件はなくても変化して成長するのが人間というもの。

ドラマ版最終回で、シロさんはケンジを実家に連れて行きました。
ですが映画冒頭で、シロさんの両親は心底申し訳なさそうに言います。
「もう来ないでくれるか」と。

息子の男の恋人を、理性ではなく感情で受け入れられなかったのです。
京都旅行はそのお詫びでした。
けれどシロさんは、たくさんたくさん考えて、悩んで迷って、お正月はケンジと過ごすことを決めます。

 

シロさん:「いいじゃねぇか 俺とお前だけで」

 

原作でも大好きなセリフです。
この言葉を口にするまで、いったいどれだけの月日と一緒に食べるごはんがあったのでしょう。

 

シロさん:「俺たち、年取ったなぁ」

 

最後はこのセリフで締めていました。
いろんなものが詰め込まれた言葉です。

一緒に年を取ってきましたね。(過去の振り返り)
「年を取った」と言えて、「そうだね」と絶対に返してくれる相手。(信頼感)
まあこれからも(先はどうなるか分からないけど)、普通に当たり前みたいに暮らしましょう。(約束)

なんかもうラブラブですね。
世界って愛に満ちてますね。

(※突然語彙力が下がる)
(※それはそう)

 

【まとめ:来年最初、もう一度観に行きたい】
これ以上は多く語るのは野暮というもの。
円盤もたぶん買います。

そしてドラマセカンドシーズンを是非。何とぞ。
孤独のグルメばりの主演おふたりのライフワークにしてくれ。

次回は1月17日月曜日、
アメリカのアクション・スリラー、
『ザ・ハント』の話をします。

 

( ・ω・)<それでは皆さま佳いお年を!!!

 

 

鳥谷綾斗

映画/カリガリ博士

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
1919年製作、ドイツのサイコホラーミステリです。

 

 

カリガリ博士(字幕版)

カリガリ博士(字幕版)

  • コンラート・ファイト
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【あらすじ】
青年・フランシスは、隣に座る男に身の毛もよだつ恐ろしい過去を話しだす。
故郷であるホルステンヴァルに現れた、カリガリ博士のことを。
博士は夢遊病者を操って、人を殺める『怪物』だった。

 

【ひとこと感想】
『怪物とはこういうもの』を定義づけたかもしれない無声映画

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①初めてのモノクロ無声映画
カリガリ博士とは❶
カリガリ博士とは❷

 

【①初めてのモノクロ無声映画

サイレント映画とは、
音声、音響、特に俳優の語るセリフが入っていない映画のことである。
(※wikiより引用)

 

1919年製作のこの映画もBGMのみ、字幕も別画面に表記されるスタイルになります。

正直に書きますね。
映画感想ブログとしてどうなんだとは思いますけども、

( ・⌓・)<めっっっちゃ眠かった。

自分の脳みそがいかに刺激の多いコンテンツに慣らされていたか分かりました。
対策として立って観ました。

(そこまでして観たいかって話なんですけど、観たいかどうかという話ではなく、この機を逃すと一生観ないだろうなぁと思ったので)

(万事一期一会、観ると決めたら観よう)

(ついでに何故ホラー映画で無駄に大きな効果音が採用されまくってるか分かってしまった)

ですが。
この年代独特の、薄暗く荒い画質と大仰な演技で形成された場面。
ホラーに必要な要素・『悪夢を覗き見ている』感覚は、現代のものより格段に強かったです。

 

【②カリガリ博士とは❶】
主人公・フランシスの語るカリガリ博士は、いわゆる狂った研究者、マッドサイエンティストです。

博士は、木の棺で眠る細身の男・チェザーレを使って、他者に死の予言を与えたり、自分を邪険に扱った役場の職員などを殺害するような人物です。

 

カリガリ博士:「夢遊状態にすれば人殺しさえできる」

 

そう話して、チェザーレを意のままに操ります。

このチェザーレがまた異様な出立ちで。
骸骨を彷彿させる姿。
ヴィジュアルはマイケル・ジャクソン氏っぽい。
命令を受ければ美女の寝室に忍び込み、かどわかす彼の背後で笑うのが、カリガリ博士なわけです。

そして『カリガリ博士』とは、作中の古い本に記載された見せ物師の名前でした。
夢遊病者を操って人を殺す架空の存在になろうとする――怪物に憧れたものがカリガリ博士の正体でした。

それを突き止めたフランシスは、警察と共に精神病院の院長を追い詰めます。

 

【③カリガリ博士とは❷】

 

“I must know - I will become Caligari!”

(私はカリガリになるのだ!)

 

カリガリ博士に憧れた男は、そう宣言しました
(この時『CALIGARI』とアルファベットの形をしたネオンが点灯するんですけど、めっちゃ斬新な演出で笑った😊)

カリガリ博士の顛末について、フランシスはこう語ります。

 

“Today he is a raving madman chained to hiscell”

(今や彼は鎖につながれた異常者なのだ)

 

これでフランシスの話は終わりますが、ここからまさかのどんでん返し。

すべてはフランシスの妄想だったのです。

 

【まとめ:怪物を夢見るものこそ】

( ・ω・)<……

( ・⌓・)<この手のオチってこんな昔からあったの!?

別の意味で驚きました。
いわゆる『信頼できない語り手』オチです。
「再読必至! どんでん返し! あなたは必ず騙される!」的な煽りがついたミステリがあったら、まずこれを疑うレベルでありふれたトリックです。

「私はカリガリ博士になるのだ!」はフランシスの言葉で、
フランシスの婚約者である美女もチェザーレも精神病院の患者で、
「鎖につながれた異常者」は自己紹介乙ってやつでした。

ラスト。フランシスは、医師をカリガリ博士だと思い込み、襲って、拘束衣を着けられます。

カリガリ博士という怪物を語った者が、怪物自身だった。

では何故、フランシスの意識にここまでカリガリ博士が根付いてしまったのか。
それはたぶん、彼が『カリガリ博士』に相対しすぎたから。
最初の感情は憧れか恐れか不明ですが、彼は『カリガリ博士』のことを考えすぎてしまったのです。

怪物を夢見た者が、怪物自身だった。
ホラー映画の『怪物』とは、夢見た末にそれに成るものだった。

ありふれた、けれど皮肉を感じるオチです。

怪物と相対するうちに怪物そのものに成るとは、
まさしくB級ホラーな顛末だなぁ、と思います。

やっぱり人生ってB級ホラーですね。
(うまいこと〆たって顔🤐)

さてこちらのブログ、ホラー映画中心です。
書き手である私は、それらを日常的にべらぼうに摂取し、これすなわち『怪物』に深く触れて深く考えて深くアウトプット(?)しているわけです。

やばいですね。 ( ・ω・)<フフッ
(※謎の笑い)

 

そんなわけで怪物にならないためにも今年最後の映画感想はホラー以外にしまーす。

次回は12月27日月曜日、
2021年制作、日本のほろ苦ハピネスグルメドラマ、
『劇場版 きのう何食べた?』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

映画/新感染半島 ファイナル・ステージ

2021年1月、映画館で鑑賞してきました。
なぜ感想が11ヶ月もかかったのか。光陰って矢の如しだよね、としか言えません。

思い出はチョコクリームチュリトスを食べたことです。オイシカッタァ😋

2020年製作、韓国のゾンビ映画です。
(ちなみに原題は『半島』です。シンプルでかっこいいけど確かに何の話か分かりにくい、でももう少し邦題どうにかならんかったか)

 

 

全力ネタバレです。

 

【あらすじ】
韓国全域を襲ったパンデミックから4年後。
姉と甥を喪ったジョンソクは、香港のスラム街で差別される生活から抜け出すため、ゾンビに支配された祖国に戻ることになった。
目的は、ソウルに乗り捨てられたトラックから2,000万ドルの金を持ち帰ること。
感染者と生存者に邪魔をされ、義兄とも離れ離れになる。
ジョンソクを助けたのは、かつて彼が見捨てたミンジョン家族だった。

 

【ひとこと感想】
よくぞこちらのオチを選んでくれた。大号泣カーアクションゾンビ映画

 

【3つのポイント】
ゾンビ映画を観に行って、カーアクションを観てきた。
②痒いところに手が届くサービス精神。
③「マタ守レナカッタ……」なんていらない。

 

【①ゾンビ映画を観に行って、カーアクションを観てきた】


www.youtube.com

 

予告以上に、そして予想以上にカーアクションでした。
クライマックスはちょい昔のハリウッド映画を彷彿させるハデハデっぷり、力こそパワーで群がるゾンビを薙ぎ払います。

ジョンソクを助けた少女・ジュニが運転うますぎ驚愕然。
(どう見ても十五、六歳の無免許運転で、色々と規則が厳しい日本ではこの表現できるのかしらとふと思ったり)

そしてこの映画、びっくりするほど有能な人しか出てこない。
ジョンソクも冴羽獠 ばりに狙撃がうまく、その点もスカッとできます。

 

【②痒いところに手が届くサービス精神】
前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』に引き続き、鑑賞者の感情管理が巧みと思いました。

クズの集団が出てきます。その名も631部隊。
本来はゾンビと戦って市民を守る側だったのでしょうが、環境は人を変えるもので、世紀末ヒャッハー系に成り下がった連中です。
捕虜(?)にゾンビと鬼ごっこをさせて誰が生き残るか賭ける、そんなどこにお嫁に出しても恥ずかしくないほどクズっぷり。

ですがご安心を。

頼むからこいつらゾンビに食われろ勢は、全員その通りになりました。

なので前作も含めてこの映画に感じたものは、
制作側の『細やかな配慮』でした。

 

【③「マタ守レナカッタ……」なんていらない】
ジョンソクは4年前のパンデミックの際、誰も救えませんでした。
優秀な軍人でありながら自分の家族――姉家族を優先し、「車に乗せて」と助けを求めた一般人を無視し、結局は死なせてしまった。

そんな彼に、この物語は『やり直し』のチャンスを与えます。

ジョンソクの義兄・チョルミンは、妻と息子(姉と甥っ子)と共に死ぬことを望んだのに、彼はそれを阻みました。
そんな負い目のある義兄の望みを叶える『機会』。

何より一度見捨てた女性――ミンジョンと再会し、彼女の家族を守る『機会』。
ミンジョンは「約束を守って。必ず私の家族を半島から脱出させて」と言います。

そしてラスト、アメリカから救助のヘリがやってきます。
阻むのは大量の走るゾンビたち。

娘たちを生かすため、ミンジョンは自らを囮にします。
ゾンビたちを呼び寄せようと、クラクションを鳴らして。
暁の空を切り裂くこの音、悲壮な覚悟の証みたいでなんとも物悲しい。

不安が生まれました。
これは前回と同じオチではないのか。
前回と同じく、親の愛を描いて終わるのか。
嫌だ。それはとっても尊いけど、シンプルに嫌だそんな結末は観たくないと私の心が叫んだ時、

ジョンソクが、ミンジョンの元に走ります。

もう二度と見捨てないために。

結果、生きる意思を取り戻したミンジョンは、もう一度娘たちを抱きしめることができたのです。

( ・ω・)<……

( ;ω;)<ありがとう……

よくぞこのオチにしてくれた!!!

そうだ、いらなかったんだ、「また守れなかった」と流す涙なんて。
人はやり直せると、素直に希望を描いてくれてよかった。
これこそ、この閉塞的な、薄暗く、真綿が常に首に巻きつくような時代が求めている『映画』だったんだ!

ありがとう監督。
『ソウルステーション・パンデミック』の方向に舵を切らず、素直にハッピーエンドにしてくれて。

 

ジュニ:「違うよ、家族が一緒なのにどうして地獄なの」

 

そう言った彼女に、

 

ジュニ:「私がいた世界も、悪くなかったです」

 

という台詞を言わせてくれて、本当にありがとう。

そんな感じで映画館で泣きました。

 

【まとめ:好きな場面つらつら】
前述のとおり、ジョンソクがめっちゃ優秀なのでめっちゃかっこよかったです。

特にチョルミンを助ける場面。無理や、あんなん惚れる。

また、チョルミンの死に様が意外でした。
彼は義弟を助けて、その命を散らしました。
普通ならこういう場面は、少しだけ息があり、手を握って最期の会話を交わすものなのですが。
チョルミンは即死でした。

なんとも言えないリアルさがあり、やりきれなさが凄まじかったです。

 

【余談:最大のお気に入り場面】
大量のゾンビが閉じ込められたガラスを銃で撃って、ゾンビがドバーッと出てくる場面。

最初にあの『ゾンビ収納部屋(ガラス製)』が出てきた時、きっとこう展開するんだろうと期待しましたが……きちんと応えてくれました。
最後までサービス精神たっぷりな映画でした。

ちなみに相変わらずゾンビたちの身体能力はやばかったです。
観ていると謎に笑えてきますねアレ。無理オブ無理すぎて。

 

次回は12月20日月曜日、
1919年制作、ドイツのサイレントホラー映画、
カリガリ博士』の話をします。

 

鳥谷綾斗

映画/降霊

ツタヤで借りたホラードラマシリーズです。
2000年製作、黒沢清監督の日本のスリラーホラーです。

 

 

 

 

【あらすじ】
純子と克彦は穏やかな夫婦生活を送っていた。
しかし純子は霊能力者で、心理学を学ぶ大学院生・早坂や、大切な人と死別した人物に請われ、降霊術をする。
少女の誘拐事件が起こる。被害者の少女は、何故か克彦の荷物から発見された。

 

【ひとこと感想】
ホラー以上に恐ろしいかもしれない、哀れで愚かで身に覚えがある人間ドラマ。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①びっくり要素のないホラー
②追求されたリアリティ
③壊れていく夫婦関係

 

【①びっくり要素のないホラー】
「ホラー映画が苦手」な方の意見で、こういうものがあります。

「突然、大きな音が出て驚かせるのが苦手(。ŏ_ŏ)」

分かります。(太文字)
自分もものごっついビビリなので、急に大きな音を出されるとキュウリを前にした猫ばりに飛び上がります。
特に効果音。『シーン……(どことなく甲高い緊張感のあるBGM)』→『ドンッ!』とかやるやつ。絶対ゆるさん。

ですがご安心ください、この『降霊』のホラー描写はそんなお化け屋敷要素はありません。

この映画の幽霊たちは、

ただ そこに いるだけ です。

 

【②追求されたリアリティ】
この映画を制作する際、黒沢清監督は、『霊能力者』の方々への丹念に取材したそうです。
その結果、この映画は幽霊描写は、霊能力者の方々に「自分が視ているモノに一番近い」と称賛されたとか。

特に有名なのが、純子が働くファミレスの一場面。

4人がけの席に陣取る、嫌な男性客(まさかの大杉漣さんじゃないすか)。
「カレー」「コーヒー」と不機嫌そうに命じる男性客の横に、赤いワンピースの女性が、さりげなく、さも当然のように座っているのです。

血も、恨み言も、見開いた目も、不気味な声もなく、
ただ横に座っているのです。

男性客が会計を済ませ出ていくと、スーーーーーーーーーと足のない姿で追いかけていきました。

死んだ少女の幽霊も、部屋の隅でただ立っているだけ。

これが本当に『もっともリアルな幽霊の姿』だとしたら、
目にした瞬間の感情は『恐怖』などではなく、

『混乱』

なのだろうな……と、少しだけ「幽霊が見えること」に対する解像度が上がりました。
(自分はホラー小説を書くのですが霊感のれの字もないので)

 

【③壊れていく夫婦関係】
そんなリアルな幽霊描写と同じくらい、心を惹かれたのはヒューマンドラマ部分。
仲睦まじく、穏やかに暮らしていた夫婦が、暗い方向へ向かっていく展開です。

あらすじにあるとおり、変質者(明らかな不審者が公園にいるのに警戒されない辺りに時代を感じます)に誘拐された女の子は、夫・克彦の荷物に紛れ込みます。

そんなことある? ってなもんですが、要は、

①克彦は、仕事で使う効果音を録音しに山に行った。
②その山には犯人のアジトがあり、逃げ出した女の子が克彦の車を発見し、機材用のアルミケースの中に逃げ込む。
(なんで克彦に助けを求めないん? と思ったけど、大人の男性が怖かったのかもしれない)
③克彦、気づかずに家に帰る。

です。「そんなことある? ……ありそう」という微妙なさじ加減が最高です。

純子の霊能力(霊媒千里眼というハイスペックさ)で女の子は発見され、なんとか生きていました。
ここからが不幸の始まり。
純子は、『誘拐された女の子を発見した霊媒師』となる自分を夢想してしまったのです。

暴走し、浅はかな計画を立てる純子と、妻に逆らえない克彦の姿を観ながら、
「とりあえず先に病院連れてってあげて!」
「いや普通に『急に女の子がいる場所が視えて、先に現場に行って発見しました』でええがな! 『警察に助言して発見させる』にこだわるの!?」
と、ずーっと叫んでました。

積極性を見せる純子は、訪ねてきた刑事に言い切ります。

 

純子:「女の子、無事に必ず帰ってきます。私にはどうもそう思えるんです」

 

家の2階にその女の子がいる状況で。
実に晴れやかに、嬉しそうな訳知り顔で。

そんなことをしているうちに、女の子は唐突に死んでしまいました。
それでも彼女は、『嘘』をやめようとしませんでした。

 

【まとめ:霊能力者でも、平凡な人間だ】
純子は何故、こんな馬鹿げたことを思いついたのか。

何故、自分自身をフィクションの中に出てくるような、『霊能力で捜査協力をする英雄』に仕立て上げようとしたのか。
哀れな女の子を犠牲にしてまで。

自己顕示欲。承認欲求。
そんな言葉で片づけるのは簡単です。

純子には何も無かったのです。
幽霊が見えて、任意の幽霊を呼び出せて憑依させて、千里眼まで持つ彼女なのに。
平凡な主婦で、ファミレスのパートさえ数日も続かず、子どももおらず、穏やかな、つまり何の刺激もない毎日を送る自分に辟易していたのです。

彼女は夫に訴えます。
「自分はこのまま、年とって終わっちゃうの?」

 

何者にもなれないまま、終わりに向かう人生。
自分の人生が無価値だった、と純子は気づき――思い込んでしまったのです。

……これは共感を通り越して、身に覚えがありすぎますね。

本当はそんなことはないのです。
歴史に名を残さなくても、ネットの検索ページに自分の名前が載らなくても、その人生に無価値なはずがない。
ですが、そういう『虚無』に近い感情に襲われ、妙に焦る瞬間は、誰しもに平等に訪れると思います。
最悪だったのは、純子のその『瞬間』が『誘拐された女の子を発見したとき』だったこと。

霊能力者と言っても、
みんな同じなんだな。
そう思いました。

純子の切ない焦燥感に対する、作品の答えがこれです。
克彦がお祓いを頼んだ神主さん(なんと哀川翔さん)の言葉。

 

神主:「平凡さを恐れないことですね」

 

純子こそこの言葉を聞くべきだった。
けれど彼女は既に、夫の言葉すら届かない……

ラストはぶつ切りで、それゆえにひどく余韻を残すものでした。

 

【余談:お気に入り場面】
何かを燃やす克彦が目にした、窓の向こうで佇む『女の子』の幽霊。

クライマックスで、足音もなく人形めいたカクカクとした動きで近づいてくる『女の子』の幽霊も捨てがたいですが。
「なんか見え方が変だな……?」と本当に首を傾げたので。
妙にハッキリしているけど、奥行きのようなものが無いと感じました。
この場面、窓に女の子の写真を貼って撮影したそうで、

( ・⌓・)<うまいことやってるぅ……

と感心しました。ブラボー、さすが世界の黒沢清

 

次回は12月13日月曜日、
2020年制作、韓国のゾンビヒューマンドラマ、
『新感染半島 ファイナル・ステージ』の話をします。

驚いたことに今年の1月に映画館で観てました。
(もう12月やで)

 

鳥谷綾斗

映画/ミッドサマー

ネトフリで観たホラー映画シリーズです。
2020年製作、アメリカのサイコロジカルホラーです。
ちなみにディレクターズカット、18禁版を観ました。
(まじで18禁だった)

(リンクはアマプラ版)

 

ミッドサマー(字幕版)

ミッドサマー(字幕版)

  • フローレンス・ピュー
Amazon

 


【あらすじ】
心理学を学ぶ大学生、ダニー。
精神を病んだ妹が両親を道連れに自殺し、天涯孤独となる。
ダニーは恋人のクリスチャンとの仲を取り戻すために、スウェーデンからの留学生・ペソの誘いを受けて、彼の故郷の村・ホルガに向かう。
壮大な緑に囲まれ、花が咲く美しい白夜の村では、90年に1度の“祝祭”が催されていた。

 

【ひとこと感想】
やっぱりハッピーエンドな気がする精神汚染ホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①単純すぎるプロット
②色彩あざやかな映像美
③白日に晒され続けるグロテスク

 

【①単純すぎるプロット】
この映画、あらすじは実に簡単。

『大学生グループが旅行先でひどい目に遭う』。

人生で2番目くらいによく見たホラー映画のあらすじですね。
(1番目は『あの噂(怪談あるいは都市伝説)は本当にあった!』です。)

そんな馴染みがありすぎるこの作品、斬新な点は、『行き先が山奥のキャビンでも奥地の秘境でもなく、明るく解放的な観光地っぽい村だった』ことです。

穏やかな装いの山々に囲まれ、村人が親しげに微笑み歓迎してくれる、この世の天国のような村でした。

そんなホルガにいきたいかーーーー。

という視点でお話ししたいと思います。

 

【②ホルガに行きたいか/色彩あざやかな映像美】
ホルガは風景のロケーションが最高ですが、それ以外のビジュアルもとにかく良いのです。

ベッドカバーやタペストリーなどのキルティング、そしてファッション。
とにかく村人の服が可愛い。
夏至の祝祭のために、村人は白を基調とした民族衣装を着ています。
軽やかな風合いのリネン生地、手作りっぽいあたたかみのあるゆったりとした白いワンピース。
祝祭が進むにつれて、衣装には色あざやかな刺繍を施して、花冠でおめかしします。

インスタ棲息民なら『#ミッドサマーコーデ』とタグつきで写真をアップしたいくらい可愛いです🌻🌺🌼

特に村の女王・メイクイーンとなった時のダニーの衣装。
白いワンピースに花飾りをあしらったつけ襟をつけて、黄色や青の大きな花冠を頂いていました。

(女王の決め方は、謎の柱の周りで女性たちが踊り狂って最後まで立っていた者であること)

(要は体力勝負か理にかなってるな…と思いきや、アレな薬を投与されていたので実はダニーを女王にするための出来レースかもしれない)

しかしラストシーンの、メイクイーンの衣装は『神秘的』と『ギャグ』の紙一重でした。
大量の花でできた『🌼花だるま🌱』に埋もれるダニー。動くと芋虫みたいでした。
裏話によると、花だるまは15キロもあるそうです。おつさまです。

こんな感じでラスト以外は、服装その他がとても好みなので、「あらこの村に行ったみたいわねウフフ」みたいな気持ちでした。

 

【③ホルガに生きたいか/白日に晒され続けるグロテスク】
さて滞在2日目で、ホルガの闇の部分が明かされます。

まずは『アッテストゥパン』という儀式。
これは72歳を過ぎた老人が、自ら崖から飛び降りる棄老の儀式でした。
ダニーたち余所者は当然嫌悪します。

自分もこの時点では、「これはこれで良い死に方なのでは……」と思っていました。
死ぬまで共同体の一部として見なされ、決して孤独死にならない。
万が一死に損なった(老人の2人目は推定5階建てのビルの高さから落ちたのに、足からだったので一命を取り留めてました。めっちゃタフやん)としても、きちんと面倒を見てくれる。

いいんじゃないでしょうか。
(理屈ではなく感情で物を言う)

『アッテストゥパン』の次に、幼い子どもが我が身を犠牲にしそうな儀式がありましたが、それは回避。
そこの倫理観はしっかりしてるな……と、好感度をキープし続けました。

ダニーの恋人・クリスチャンが、村の美人娘・マヤに目をつけられてワンチャン狙われるまでは。

ダニーの『理解がある彼くん』だった(しかしそこはかとなくクズかった)クリスチャン。
彼は普通にクスリを盛られ(ていうかめっちゃ気軽に薬物摂取するなこの監督の映画)、マヤと、生の営みを強制させられます。

村人の女性(すっぽんぽん)数人に囲まれて。

来ました、18禁の18禁たる所以のシーンです。

他にも頭が潰れた死体とか芸術的に飾られた死体とかお人形遊びみたいにリメイクされた死体とか色々出てきましたが、いちばんキツかったのはこの場面。

ハッスル中、老女(すっぽんぽん)に尻を鷲掴みにされてインサートを促されるクリスチャン。
姉に頭を撫でられながら快楽に悶えるマヤ。
その快楽に共鳴して喘ぎ声を出す女性たち。

よくもまあこんな場面を思いついて且つ撮影したもんだな???
『ヘレディタリー』でも思ったけど)

 

これを『普通』とされる村です。
そんなホルガに行きたいか。
私の答えはノーです。

けれどダニーは、この村の一部になる結末を選びました。

 

【まとめ:ハッピーエンドの定義が『苦しむ主人公の救済』だとしたら】
ダニーはとても哀れな女性です。
心を病んだ妹に両親を殺され、天涯孤独となりました。
唯一の拠り所、クリスチャンは優しいけれどその場凌ぎの対応しかせず、電子図書館の使い方も分からないくせに友人の論文のテーマを真似するというごく普通のプチクズ。
クリスチャンの浮気で一縷の糸すら切られ、絶望する彼女を救ったのは、

ホルガの共鳴精神と、
女王として生贄を決められること――でした。

最初こそ死にゆく生贄を目の当たりにし、ダニーは拒絶し、泣き叫びます。
ですがダニーは、やがて実に晴れやかに笑うのです。

その瞬間、彼女は正気をぶん投げました。
彼女は真の自由を得た。すべての苦しみから解放された。
すなわち『人間』をやめた。

だから、ダニーはもう苦しくない。

と、いう点はまぎれもなく超絶ハッピーエンドなんだなぁと頷きました。

しかしホルガ、最初は良い村だと思いましたが、
やはり御免ですね個人的に。
オブラートを取っ払うと、「大変うぜぇ」のです。
特に感情に共鳴する点。

あなたの悲しみは私の悲しみ。
私の苦しみはあなたの苦しみ。

ホルガの人々は、
クリスチャンと営みをするマヤの快楽、
恋人の浮気を知ったダニーの絶望、
そして業火に炙られる生贄の苦痛を感じ取って、同じように息を合わせて悲鳴や嘆きを大合唱します。

それはどことなく芝居かかっていて、実際にやられたら「バカにしてるん?」と言いたくなるような様でした。

非常にうるさい。非常にうっとうしい。
共鳴・共感で救われる面はあるけれど、「気持ちが分かると言うけれど何の助けにもならない」と言うのは非常にイラッとしました。

何よりここは、マイノリティは生きていけない。
大多数が殉ずる『普通』の外に出てしまった人間は、ここでは絶対に生きていけない。
ホルガの村は、全員が同じ思考を持っているからです。
こういう共同体は、滅ぶのは一瞬なんだろうなぁ、と思いを馳せました。

世にも恐ろしい、真っ白な夏の悪夢でした。

 

次回は11月29日月曜日、
2021年制作、日本のホラースリラー、
『降霊』の話をします。

 

鳥谷綾斗

映画/ヘレディタリー / 継承

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2018年製作、アメリカの家族系ホラーです。

 

 

 

【あらすじ】
老婦人・エレン=リーが死んだ。
喪主を務めるのは、折り合いが悪かったドールハウス作家の娘・アニー。夫、長男、長女と暮らしている。
エレンの墓が荒らされた日から、次々と家族に災厄が降りかかる。
アニーの母親が遺し、彼女たちが『継承』したものとは何なのか?

 

【ひとこと感想】
実はハッピーエンドかもしれない侵食系ホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①何系のホラーなのか掴みにくい
②暴走していく母親の恐怖
③「祖母の影が薄い?」とか思っていたら

 

【①何系のホラーなのか掴みにくい】
一口にホラーと言っても種類はあります。
スラッシャー(ジェイソンなど系)、オカルト(エクソシストなど系)、心霊(雑に言うとJホラー)、ヒトコワ(感想の最後に『結局は生きている人間が一番怖いんだよね』で〆られる系)など。

さてこの作品。
あらすじを読んだ時点では、ばーちゃんの霊が何かする(心霊)系だと思いました。
しかし冒頭の(やたらと弔問客が多い)お葬式以外では、登場人物の語りにだけ登場します。
代わりに、アニーの家族に不幸が襲いかかります。

ミッドポイントとなるのは長女・チャーリーの事故死。

この流れが非常にえげつない&スリリング。

クサでトンだ(俗語表現)長男・ピーターの運転ミスで、女の子のちいさな頭が吹っ飛ぶのです。
しかも兄は自分の目で確認するのを恐れ、自宅に帰り、妹の首無し死体を乗せたままの車を放置します。

翌朝、晴天の下で、無数の蟻にたかられるチャーリーの頭部。母親の悲鳴。

こんな画(え)をよく思いついたな&よく撮ったなとドン引き(感心)しました。

アニーの精神状態は一気に危うくなります。
ここで、「この作品は、人間――母親という子どもに最も影響を与える立場の――が壊れゆく恐怖を描いた作品か?」と直感したのですが。
微妙に外れました。
結論から言うと、この作品のジャンルは『オカルトホラー』でした。
宗教色が強く、しかし恐怖のポイントは前述のコレ(↑)なので、直感はあながち間違ってもいない……ような。

 

【②暴走していく母親の恐怖】
母に続き、娘を亡くしたアニーは追い詰められ、互助会で自らの『畏れ』を吐露します。
自分の父親は餓死し、兄は統合失調で自殺(※)をし、最近死んだ母親は解離性同一性障害認知症で、高圧的な言動でアニーを抑圧してきた。
これに加えて息子はハッパの常飲者(※)。生き地獄やんと心がキッツくなりました。

とうとう彼女は、『チャーリーが死んだ事故現場』を再現したミニチュアを作ります。

 

ティーヴン(夫)「嘘だろ、アニー」

 

( ・⌓・)<まじで嘘だろアニー。

いくら箱庭療法で自分を救うためとはいえ、息子を追い詰めるようなものをなぜ作るのか。
さらに互助会で知り合った女性・ジョーンに交霊会の方法を教わり、夫と息子を巻き込んで『チャーリーの霊(仮)』を呼ぶ。

話が進むにつれて浮き彫りになっていく、アニーの『異常さ』。
(ていうかあの家族、マトモなのは夫のスティーヴン氏だけです)

アニーは、家族への愛は確かに深い。
その愛が悪い方へ悪い方へ流れていく様は、観ていて落ち込みました。

『こういう気質』は親から子へと受け継いでしまうのかもしれないと、常に不安を抱えるアニー。
『継承』ってそういう意味なのか……と思ってたら、

そうではなかった。

彼女らが受け継いだのは、もっと恐ろしく強大なものでした。

 

【③「祖母の影が薄い?」とか思っていたら】
完全ネタバレですが、すべてはばーちゃんが孫息子のピーターに悪魔ペイモンを取り憑かせるための策略でした。
(余談ですが洋画ホラーならではの真相だなーと。日本じゃあまり見かけない仕掛け)

アニーはまんまと引っかかってしまったのです。
親愛なる隣人と信じたジョーンの罠に。
実の母親・エレンが数十年単位で作り上げた蜘蛛の巣に。

ばーちゃんの影が薄いと思いきや、そんなことはなかった。

ばーちゃんがチャーリーを特に可愛がっていた(自分のお乳をあげようとしていた)(でも男の子になればいいのにとも言っていた)というほっこりエピソードすら伏線で、すべては彼女の掌の上。

目的を果たし、悪魔をこの世に復活させることに成功し、
悪魔信仰の信者(すっぽんぽん多め)から『王妃』と呼ばれ、
完全勝利を果たしたエレン・リーという女性は、間違いなくこの物語の中心人物でした。

あまりの手腕に少々混乱し、
「つまりこのばーちゃんは孫息子と夫婦関係になったってことか……? 怖……?」
と、あさっての方向に飛んだ感想が出てきました。(謎)

 

【まとめ:家族の物語として観るとハッピーエンド?】
クライマックスは大必見です。

悪魔信仰の手先となったアニーは、ピーターを追い詰めます。
天井に張り付いたり戸棚から出てきたり息子を追いかけ回したり糸鋸を引いて自らの首をゴリゴリゴリゴリと切り落としたり。
今までの陰気さが嘘のようなアクロバティックさです。(最高)

アニーは自らの首と命を捧げて、息子の体を悪魔復活の依代にした――この結末を見て、自分は思いました。

( ・ω・)<……これ、ハッピーエンドでは?

考察や監督のインタビューをネサフで読みましたところ、

 

〝不幸によって家族の絆が強まること。それは嘘ではない。
 けれど、不幸が起こってそこから立ち直れない人たちがいるのも真実。自分は後者についての映画を作りたかった〟
(※意訳)

 

アニーの家族は、間違いなく後者です。
現実のミニチュアを作って俯瞰したつもりになっていたり、悪魔を信仰したり、クスリに依存したりと悲しいくらい弱く、そしてどこにでもいる小さな家族です。

そんな家族が、知らなかったとは言え、協力しあって――祖母が土台を作り、母親が環境を整え、娘が繋ぎをし、息子が依代となり――

悪魔ペイモンをこの世に復活させる。

という、一部の人間にとっては賞賛と祝福すべき『偉業』を成し遂げたのです。

結果と方法はどうあれ、
家族が協力しあって大きなことを成し得た。

ある意味ではハッピーエンドではないでしょうか。

ただ残念だったのは、夫であり父親であるスティーブン。
彼は最後まで『境界線の向こう側』の人間でした。
ですがこのやるせなさも、ホラーとしては最高の味付けだと思います。

 

【おまけ:お気に入り場面】
①アニーの首が落ちることを音だけで表現。
(音量控えめなのが非常に素晴らしい)
②首無し死体がワイヤーアクション。
(アニーの死体が悪魔の儀式の会場である屋根裏部屋に浮いて移動していた)
③ラストカットはドールハウス

特にドールハウス
アニーの箱庭療法のためのアイテムかと思いましたが、ちゃんと意味がありました。
あれは人間ではない存在の示唆――悪魔の目線から見たものなんですね。
アニーが自分が作ったドールハウスを覗き込み、好きなように手を加え、興奮してぶっ壊したように、
絶対的な、人ではない存在の前では、人間はただ無力だという隠れメッセージだった。

 

つまり伏線です。これはやばい。面白すぎる。再鑑賞しよ。

(②の項でつけた※マークも伏線です)

 

 

次回は11月22日月曜日、
2020年制作、アメリカのホラー、
『ミッドサマー』の話をします。

 

鳥谷綾斗