人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/X

アマプラで観たホラー映画です。
2022年制作、アメリカのホラースリラーです。

 

 

 

 


www.youtube.com

 

 

【あらすじ】
1979年。テキサスの田舎に、老父婦が営む農場があった。
世界的スターを夢見るマキシーンは、恋人とその仲間たちとポルノ映画を撮影しに訪れた。
撮影は順調に進むが、彼らを老女・パールがじーーーーっと見つめ続ける。

 

【ひとこと感想】
ホラー×ポルノ×エンドクレジットで判明する仕掛け=『クソッタレなホラー映画』。

※全力ネタバレです。
※映画に大きな仕掛けがあります。未鑑賞の方はご注意を!

 

 

【3つのポイント】
①想像と違った展開
②パールの恐ろしさ
③テーマを託した仕掛け

 

【①想像と違った展開】
鑑賞前に想像した『X』

たぶんおバカ 無軌道な若者たちが好き勝手して、老夫婦にお仕置きされる話やろ。

 

実際の『X』

( ・⌓・)<思ってたのと違っっ!!!

まず若者たちは全員一般的な『いい人』でした。
クスリのお世話になったり無許可でポルノを撮ったりしますが、老夫婦――ハワードとパールに対しては普通に親切。

なので(?)
最初の殺人まで58分(およそ半分)かかりました。

それまで何をしていたかというとポルノなシーンです。
男も女も脱ぐ脱ぐ脱ぐ。肌色パーリーナイト。
どうして雑木林を裸オーバーオールで散策するのか。
どうして70年代〜80年代のアメリカの若者って汚い池や湖ですっぽんぽんで泳ごうとするのか。
全裸で眠るのはいいとしても、「消えた仲間を探しに行く」っつってんのにそのまますっぽんぽんで歩き回るなよ。
(案の定、裸足で釘を踏んづけていました)

ついでに池にワニがいて、「おいおいジャンルが違うがな」とツッコみました。

パールが放つ不穏さはあるものの、ポルノパートが長々と続き、
ちょっと のまーん _(┐「ε:)_としました。

監督であるRJの彼女・ロレインが「私もポルノに出たい!」と言い出した時には、

( ・⌓・)<うぉお……この監督くん自分が撮った映画に彼女をNTRれたぞ……

という自分史上初、まさにX(未知)の感想が浮かびました。

ショックを受けたRJ(ポルノは立派な芸術だけれども自分の身内が出演するとなると話は別な模様)は、みんなを置いて一人で車で帰ろうとします。せこい。

そんなRJを、パールは静かにおもむろに殺しました。

 

【②パールの恐ろしさ】
待望の 戦慄の殺人シーンの寸前、RJは親切でした。
ふらつくパールを手助けし、一緒に夫を探そうと言いました。

けれどパールは彼を殺しました。

何故なら、
パールが誘惑したのに彼が拒絶したからです。

( ・⌓・)<確かに未知!!!

さすがに『老女に欲情される恐怖』は未知すぎた。
しかもパールとハワードからしてみれば、

 

ハワード:「裸同然で歩き回って家内を誘惑した」

 

彼ら彼女らが若い体を露出させたから悪い。とのこと。

そんな理由で殺されるとかある???

一体何が目的なんだ? と思いきや、メイン女優であるマリリン・モンロー系美女のボビーが殺されるシーンで判明しました。

ボビーも優しい人でした。
池のほとりに佇むパールを心配して駆けつけて、「私の祖母もよく混乱するから慣れてるの」と自分の羽織をかけてあげる人。
なのにパールは、

 

パール:「私の前で自慢げにはしゃぐな!」

 

そう彼女をビンタし、ワニの餌にしました。

ハワードも、一日に何度も女を抱ける男たちに告げます。

 

ハワード:「家内の求めには応じられない。
      わからんだろうな。現役のおまえには」

 

( ・⌓・)<あぁ〜〜〜〜……
(※本当にこんな声が出た)

パールとハワードを凶行に駆り立てるもの、狂気の元凶は、「若さ」と「老い」でした。
それはないものねだりを通り越して、ねだってはいけないものでしょう。

かつて自分にも与えられていた何よりも尊いもの。
それを奪ったのは、絶対的で誰にもどうすることができない『時の流れ』。

けれど彼らの『若さ』は、戦争によって奪われた……と考えると、切ないものを感じます。

 

パール:「私は特別だと言って」
    「もう一度若さを感じさせて」

 

パールの切実さは、なんとなくエスターを思い出させます。
抑えきれないほど『女』が激烈な女。
エスターにはやむを得ない理由がありましたが、パールは年を重ねてもそれが落ち着くことはなかった。

それこそが、この映画の恐怖だったのです。

 

【③テーマを託した仕掛け】
上記に加えて、

高齢殺人鬼たちがベッドインしている部屋から脱出する。

という未知オブ未知な恐怖も追加されました。サービスが満点。(?)

ハワードは心臓発作で亡くなり、パールも転んで腰を痛めます。
殺人鬼でも人間なのです。時間の流れ、すなわち老化には勝てないのです。

その好機にマキシーンは脱出しますが、
パールは最後に呪いをかけました。

 

パール:「おまえも最後はこうなる」

 

それに対し、マキシーンは「私はスターよ!」と『おまえとは違う』と拒絶します。
そしてパールの頭蓋骨を車で轢いて砕きます。

そして流れるエンドクレジット。

 

マキシーン/パール:ミア・ゴス

 

( ⊙⊙)<同一人物だったの!?!?

これにはやられました。

とんでもない皮肉じゃないか。
呪いじゃないか。
エグすぎる。全人類共通の恐怖の地雷を踏み抜きおった。

まさに、最後に保安官が言ったとおりの『クソッタレなホラー映画』。

娯楽と思いきや死角から刺してくる。

だがそこがいい。
(※ホラージャンキーの意見)

 

【まとめ:『若さ』に罰を】
ホラー映画のひとつの側面に、
『若さに罰を与えたい』というものがあります。
『キャビン』でも言及されていましたね)

ただキャンプ場に泊まって、つい盛り上がりすぎていちゃついただけなのに殺人鬼にぶち殺されるというアレです。

『愚かな若者』を嫌悪して、罰したい大人たち。
かつて自分も若かったということなど忘れて。

そういう意味では、『X』は本当に古典的ホラーを踏襲しているんだなぁ、と思いました。
(そもそも舞台が『テキサスの田舎』な時点でもう)

そういう観点では、マキシーンの『私は世界的スターになる女だ』も、若さゆえの万能感ってやつかもしれません。

演技力は高いけれど、人を殺し、クスリに溺れる役者が世界的スターになれるのか?
パールの言うとおり、いずれ何もかも色褪せてしまうのではないか、と思ってしまいます。

ラスト、マキシーンがパールを殺すシーンは色々と考えてしまいました。
最初は普通に「あらやだ親切」と感じました。
腰を痛めたパールは、動けないまままま餓死にする展開かと予想したので。
(その発想もどうなんだ)

もしかしたら、マキシーンからのせめての手向けかもしれません。
いずれ自らがパールと『同じように』なったら、誰かの手でトドメを刺してくれないかと、無意識で思っていたのかもしれません。

仮に世界的スターにならなくても、
マキシーンの世界が色褪せないといいなぁと思います。

続編も楽しみです。

 

 

次回は7月31日月曜日。
7月のまとめということで、
『小説教室の講師してきたよヒャッホー』な話をします。

ホラー映画の感想は8月7日月曜日、
2013年制作、アメリカのSFディザスター映画、
『シャークネード』の話をします。

( ・ω・)<8月はサメ祭しよっかなって思っている。

 

 

鳥谷綾斗