人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/ロープ

アマプラで観た映画です。
1948年制作、アメリカのクライムスリラーです。

 

 

 


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【あらすじ】
ブランドンとフィリップは、優秀な学生。
彼らはニーチェの『超人』を曲解し、「殺人は優れた少数の特権」と考え、「意義深い実験」として友人のディビッドを殺す。
そして死体をチェストに隠し、その上に料理を並べ、ホームパーティーを始める。

 

【ひとこと感想】
映像の技巧が今でも新しい、臨場感あふれるサスペンス。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
ワンシーン・ワンカットの手法
②終始思った「なんでそんなことするん……?」
③否定の物語

 

【①ワンシーン・ワンカットの手法】
サスペンススリラーの巨匠にして神様、ヒッチコック制作の本作。
その特徴は、カットがなく、すべてのシーンが繋がっていること。
(とはいえ、当時の撮影用フィルムは15分が限界なので、うまいこと繋ぎを入れているそうですが)

なので、この映画にしかない独特の画面作りが非常に面白く、「おお!」となりました。

具体的に印象に残ったシーンは3つ。

①ブランドンがキッチンの引き出しに凶器のロープをしまう場面。
(※『隠す』ではなく『しまう』がポイント💡)

蝶番が柔らかいのか押しても引いても開くキッチンのドア。
そのドアに遮られて、一瞬だけ姿が見えなくなるブランドン。
ドアの動きに合わせて、彼のロープをしまう動きがまるでカット割りされているみたいで面白かった!


②家政婦さんがチェストの上を片づけるシーン。
死体が入っているチェストに置かれたお皿や燭台を、家政婦さんが手際よくどんどん片づけていく。
その際、犯人ふたりは映されず、会話する声だけが流れていく。

普通の映画だったら、犯人たちの「アワワ😱🫨」と焦る表情を見せるところです。
でもこれがまた効果抜群で、

( ・⌓・)<ちょいとちょいと片づけられてますよ!

と、まったく関係ない自分の方が焦りました。

「死体が……死体が見つけられちゃう!」とヒヤハラドキ。
こんな緊張感の与えられ方があるんだな〜と感服しました。


③回想がない。
映画の冒頭は、ブランドンとフィリップが、ディビッドの首をロープで絞める真っ最中から始まりました。
彼らがどうやってディビッドを招き、どんなやりとりを経て殺したのかはずっと謎のままです。

その種明かしは、なんと回想ではなく。
探偵役のルパートが推理を話すのに合わせて、カメラが室内のドア、廊下、床、椅子を映す。

単純で分かりやすい映像を使わず、観客に『想像』させることに成功しています。
正直シビれました。

( ・⌓・)<観客の想像力を信頼しているんや……!🫢

疑問の答えを、セリフではなく『絵』で魅せる点にもシビれました🫨

特にルパートが、「彼(ディビッド)はどこへ?」と尋ねるシーン。
犯人ふたりは沈黙し、カメラがチェストをクローズアップする。

セリフよりも雄弁な『絵』。
映画ならではの手法って感じで大好きです

 

【②終始思った「なんでそんなことするん……?」】
そんな感じで画面づくりには終始唸っていたんですが、
物語的には終始、犯人たち(特にブランドン)に対し、

(  •᷄ὤ•᷅)<どうしてそんなことをするの……?

でした。

よしんば、「『優れた人間は殺人してもええねん』『完璧な殺人は芸術やねん』と思ったから友達を殺した」は、まあ理解できます。
(納得はできないですけど)

でも何故それをホームパーティー前に決行する?
何故その死体をチェストに隠して食卓にする?

正直な気持ちは、「意味わからん」でした。本気で。

傲慢なブランドンは、一生自信満々です。

 

ブランドン:「カーテンを開けて堂々と殺ればよかったな」

 

などと凶器のロープを輪っかにしてブンブン振り回し。
対して、フィリップはピアニストなので繊細です。いや普通の神経だわ。

ブランドンは、ディビッドの親と婚約者ジャネットをパーティーに呼び、なんとジャネットの元カレ兼ディビッドの親友のケネスまで呼びやがります。修羅場ァ。
ディビッドが生きてたらとんでもなく気まずい雰囲気だったのでは。

そんな人間関係クラッシャーなブランドンは、ディビッドパパにあげる本を、凶器のロープで縛って渡します。

( ・⌓・)<人の心を図書室にでも置き忘れたん?

ってなもんです。

そんな真性サイコパスなブランドン。
フィリップが罪悪感その他のあまり、「僕はニワトリの首なんか絞めたことない!」と自白系ウソを叫んでも、余裕の表情ブランドン。
その絶対にバレないという自信はどっから出るんだブランドン――

……と、ブランドンに対し、「こいつはマジでヤベェやつだ……!」と固唾を飲んでいましたが。

普通にボロが出ましたし、ルパートにバレました。

思えば大した偽装工作もしていなかった。
そして真実に気づきました。

こいつら全員単なるアホやったんかい。

 

【③否定の物語】

 

ブランドン:「カーテンを閉めよう」

 

ブランドン=単なるアホの方程式を証明するセリフがこちらです。
今から死体を処理するぜって時にほざきました。突然真っ当なこと言うじゃん?

うっかりルパートにディビッドの帽子を渡したり、最後は銃まで持ち出した。
彼を歪めさせた考え=『優秀な人間は道徳概念を超越する』は、元々はルーパスの教えでした。

パーティーの最中、酒を飲みながら語るルーパス
「最前列の観劇チケットが欲しければ、拳銃を使えばいい」、
「暴力を使えば思い通りになる」と朗々と語る彼に、真っ向から否定するのがディビッドの父・ヘンリーです。

あまりの胸糞悪い考えに、自分も「いいぞディビッドパパ、もっと言え」と応援していました。

そんな歪みきった選民思想、そしてバカな考え方を本気にし、さも正しいことかのようにブランドンは実行に移した。
自分の賢さを見せつけるために。
ルーパスなら自分の考えを認めて――否、誉めてもらえるだろうと思い込んでいた。

彼の闇を目の当たりにしたルーパスは、後悔し、『No』を突きつけました。
自分の考えを、否定したのです。

 

【まとめ:実話ベースだった】
この作品は、1924年に実際に起きた少年の誘拐事件を元にしています。

 

ja.m.wikipedia.org

 

フィクションでは興味深い考えですが、現実になると「そんなわけないだろ、ふざけるな」の一言ですね ( •᷄ὤ•᷅)

何が腹立つって、本気で超人思想だのを信じていることよりも、『自分は優秀で、選ばれる側で、生き残るべき存在である』と思い込んでいる点です。

勘違い莫迦ほど始末に悪い莫迦はいないってもんです。

元ネタの犯人の一人も、刑務所内で同じ服役囚に殺されたそうで。
そらそうなりますわ、さもありなん――そんな所感が浮かびました。

 

【余談:俺の勘が鋭かった話】
作中で、ブランドンとフィリップの距離感がやたらと近くて、

(フィリップがブランドンに「そこが魅力的だが」と言ったり)

( ・ω・)<何やね君たち付き合ってるのかね。

とかテキトーに思ってたんですが。

サブテキストで、本当にこの二人は同性愛関係にあるらしく。

変なところで変な勘が当たって、変な感じになりました。

(変な〆)

 

 

次回は4月22日月曜日、4月29日月曜日、
2024年制作、日本の間取りホラー、
『変な家』の話をします。
(※こすったわけではない)

 

( ;ω;)<原稿のためのインプットが終わらない……

 

 

鳥谷綾斗