人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/ザ・ボーイ 〜人形少年の館〜

アマプラで観たホラー映画です。
2016年制作、アメリカのホラースリラーです。

 

 

 

 

 


www.youtube.com

 

 

【あらすじ】
イギリスの田園地帯にある豪奢なお屋敷を訪れたグレタ。
屋敷の主であるヒールシャー夫妻にベビーシッターとして雇われ、DV夫から身を隠そうとしていた。
だが息子だと紹介されたブラームスは、精巧で緻密な『人形』だった……

 

【ひとこと感想】
ラスト18分、ゴシックホラーから現実的な嫌悪感に急転直下。(夢壊された)

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①エンタメホラーに食傷気味だった
②ゴシックホラーを楽しんでいた
③突然だが叙述トリックの話をしよう

 

【①エンタメホラーに食傷気味だった】
自己紹介をします。
もっとも親しんでいるホラーのジャンルは、バリバリのエンタメ、特にスラッシャーです。

しかし大好物も続けば飽きるというもの。
要は『ロマンチック』なホラーに飢えていました。

つまりジェイソンではなくエクソシストです。
(※分かる人にしか分からない喩え)

ゆえに選んだ今作、予告を見て思いました。

舞台は、妖精があちこちにいてバズビーズチェアを生み出したイギリス。
自然に囲まれた豪華で瀟洒なお屋敷。
老夫婦に大切に溺愛される、等身大の少年人形。
早逝の美少年の身代わりとして、生きた人間の扱いを受けていた……

このラインナップなら間違っても殺人鬼の魂が人形に乗り移ってめっちゃ元気に殺戮だの結婚だの子作りだのせんやろ。

という考えでした。そしてそれは当たりでした。

人形であるブラームスを我が息子同然に扱う老夫婦。
食事の残りは捨てない、屋敷の窓はすべて密閉するなどの奇妙なルール。
この妄想めいた『人形あそび』を、ベビーシッターとして全うせよと課せられるグレタ。
案の定、人形あそびを蔑ろにするグレタの身に起こる異常な出来事……

( ・ω・)<これですわ〜〜〜〜👍👍👍

これが欲しかったんですわ。プリンを注文してプリンアラモードが出てきた気分でした。

『でした』。(※過去形)

 

【②ゴシックホラーを楽しんでいた】
『異常な出来事』。
具体的には足音や物音、物が勝手に移動するなどのポルターガイスト現象です。

まるで ブラームスは生きている”  かのような現象が起きます。

追い詰められたグレタは怯えて部屋に閉じこもる。
ですが、ドアの向こうに気配がし、少年の甲高い声が彼女に囁きます。

 

ブラームス:「いい子にするから。これ好きでしょ」

 

初日にイタズラで盗んだ靴と、グレタが食べていたサンドイッチを置いて。

その瞬間、グレタは受け入れました。
ブラームスという存在を。この人形あそびを。

人形相手に朝の身支度、食事、3時間以上の勉強、音楽鑑賞など老夫婦に決められたルールどおりに行動します。
グレタはかつて、DV夫のせいでおなかにいた子どもを喪っていました。
ブラームスに喪った我が子を投影する――そんな切なさがありました。

同時に破綻の予感もしました。
こんな人形あそびを、いつまでも続けられるものか? と。
というのも、ブラームスの両親である老夫婦は、人形をグレタに任せた後、旅行と偽って入水自殺したからです。

自分はこの展開に、

ああ、耐えきれなくなったんだな。
傷ついた心を慰めるためだったとはいえ、人の心は移ろっていくもの。
でも人形あそびをやめたらブラームスを忘れることになってしまう……そんな苦悩に疲れちゃったんだな……(※1)

と思いました。切ないです。

人形あそびの後継者にされたグレタは、そうとは知らず、生活必需品を運ぶマルコムと仲良くなるも、ブラームスを優先します。

そんな彼女の元に、DV夫・コールがやってきます。
グレタを連れ戻すために。

コールはクソ野郎なので狼藉を働きます。
なんとブラームスを叩き壊しました。
「いやいや人んちだし人のもんやでコール」とか思っていたら、ブラームスが怒った気配が。

最大級のポルターガイスト現象を覚悟した時――

バリーン!!!
(鏡が割れる音)

壁の向こうから、人形の仮面を被った成人男性が出てきました。

Σ( ⊙⊙)!!

 

【③突然だが叙述トリックの話をしよう】

叙述トリックとは。
推理小説の手法の一。 文章の記述上の仕掛けによって、読者をわざと誤認に導くもの。 一般に、記述から想像される人物像や犯人像に関する読者の先入観を欺くものが多い。
(goo辞書より引用)

 

代表的なものだと、男と思ったら女だった、など。
そして数ある叙述トリックで、もっともホラーと親和性が高いものが、

『子どもだと思っていたら大人だった』。

つまりブラームスは人形ではなく、
幼い頃遊び相手の女の子を殺したせいで両親に罪の隠蔽・愛情ゆえの庇護のために幽閉された、
心は8歳児の、アラサーの成人男性だったのです。

その事実を知ると、グレタの持ち物を盗んだりマルコムとの仲を嫉妬したり、そういう、困ったことだけど見る分には微笑ましい諸々が一気に気色悪くなりました。

キモい。大人が子どものように振る舞うのまじでキツい。(ド直球)

この嫌悪感こそ、上記の叙述トリックがホラーと相性が良い理由です。

 

【まとめ:そういえばアメリカ映画だった】

だ、騙された……

というのが正直な気持ちです🙁
綺麗に騙されました。ブラームスの両親の自殺の理由を(※1)だと真剣に考察した自分がちゃんちゃらおかしいです。

 

ブラームスパパ:「神よ許したまえ。彼女はおまえのものだ」

 

おまえのもの、じゃないよもう。犯行発覚当時にちゃんと警察に行っておきなさいよ。(身も蓋もない)

ラストはブラームスとのガチンコ勝負。
グレタは立場を活かして、機転も効かせてマルコムと共に脱出します。コールはたぶん死にました。

( ・⌓・)<いや最後はやっぱり拳かーーーーい。

そういえばこの映画、舞台はイギリスでも制作はアメリカでした。
ちゃんちゃん! とつけたくなるほど良いオチですね!

ちなみに、大きな音で驚かせるタイプ――いわゆるジャンプスケアなので苦手な人はご注意を。

 

 

次回は2月27日 3月6日月曜日、
1999年制作、日本のリアルサイコサスペンス、
『黒い家』の話をします。

 

鳥谷綾斗