人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/生き人形マリア

アマプラで観た映画シリーズです。
2014年制作、フィリピンの人形ホラーです。

 

 

 


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【あらすじ】
セレブ妻フェイスの娘、マリア。
夫の浮気に悩むステラの娘、テレサ
シングルファーザー教師フリオの娘、レオノーラ。
彼女たちは小学校の遠足バスで事故に遭い、幼くして亡くなった。
親たちの悲しみを癒すため、医学博士・マノロが娘たちにそっくりな人形を提供するも、奇妙な事件が起こり始める。
一方、小学校には少年の幽霊が現れる。

 

【ひとこと感想】
話が進むにつれて『忍ぶどころか暴れるぜ!』な人形ホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
① 『序』の悲惨なバス事故
②人形の不気味な造形
③お化けも人間もすごく元気

 

【①『序』の悲惨なバス事故】
予告編からバレバレでしょうが、基本的にはこちらの作品はB級です。
ただし、最初に起こったバス事故の描写は「どうした?」と言いたくなるほど非常に『抉って』きます。

救急車のサイレンの音。
横転したバスから引き上げられる、血まみれの小さな子どもの体。
叫び声。泣き声。慟哭。
家の中の太陽を失った家族の姿。

リアルで怖かったです。
胸が潰される感じで、本気で「やだよ……」と呟いた。

子どもが死ぬのはつらい。

硫酸で満たされた沼に囚われるような悲しみならば、掬われるために人形にすがるのも当然と言えます。

 

【②人形の不気味な造形】

だがその人形の造形がアレすぎだ。(オブラート表現)

( ・⌓・)<もう少し可愛くできんかね?

そのド派手なまつげ、特に下まつげは何かね。昔のヤマンバギャルリスペクトかね。
最初のバス事故の悲しみが和らぐほどのツッコミだらけでした。

ていうか人形ホラーっていつもこう。溢れ出る「それは可愛いという認識で合ってるのか?」オーラ。アナベルもチャッキーも。市松人形はケースバイケース。

そんな「うわ絶対に夜に動き出すぞこれ」感が凄まじい人形たちは、ニンゲンたちを害するために暗躍します。

否、暗躍どころじゃなかった。

 

【③お化けも人間もすごく元気】

視聴の際の自分のサイレントツッコミを羅列します。

・めっちゃ分かりやすく笑うやーん。
(※人形たちの表情はチャッキーばりにコロコロ変わる)

・めっちゃアクティブに動くやーん。
(※自撮り大好きお手伝いさんの寝姿を撮ったり)

・めっちゃキレてんじゃーん。※①
(※父親が校長先生に怒られるのを見たレオノーラ、母親が第二子を妊娠したことを知ったマリアなど)

ちなみに動く人形のカラクリは、生きた人間に人形マスクを被せていました。
なので生命力に満ちていました。まさに『忍ぶどころか暴れるぜ!』。

お気に入りは、

①部屋から出てきた校長を待ち伏せてぶん殴る場面。
(シュールすぎる)
②フェイスの夫を車でキャッキャしながら轢き殺す場面。
(「テレサ、乗って!」じゃないよ、なんで人形っつうか推定7歳児が車の運転してんの)

です!

人形ホラーだって言ってるのに(観ている分には)人形がまったく怖くないというカオスの中。
恐怖成分を担うのは、人形のレオノーラに依存していくフリオ。
そして、バス事故の前から現れる火傷だらけの少年・エンドルでした。

 

【まとめ:最後に残った感情は怒りでした】
真相は、このエンドル少年の親による復讐です。

とある黒魔術師が人形たちを傀儡にしていると悪魔祓師が言いました。
(ここでそういう世界観だったんだと驚く)

三人の親たちがエンドル少年の死を隠蔽したことが判明する際、こんなセリフが出てきました。

 

黒幕の弟:「金持ちには勝てないよ」

 

フィリピンでは貧富の差が激しいと聞きます。こういう密かに風刺を紛れ込ませるのもホラーの妙です。
(この部分は日本も同様ですが)

だがしかし。
黒幕の怒りには共感しますが、やり方には絶対に納得できない。
フェイス、ステラ、フリオに復讐したいのなら直で本人に行くべきだ。
何故その子どもまで巻き込むのか。挙げ句の果てにバス事故を起こして、関係のない子どもたちも大勢亡くした。

「ただ殺すだけじゃ飽き足らない」じゃないよ飽き足っとけ、健全に復讐しろ!!

という感じでエンドロール中にキレ散らかしました。

いや、この『実は人形たちは死んだ子の魂が乗り移ったのではなく、黒魔術師が復讐のために操っていた』という真相によって、(※①)部分の場面の意味がクルッと変わる……という手法には唸らされましたけども!

(マリアの嫉妬ではなくてフェイスの妊娠=幸せになるに対しての怒りだった、とか、レオノーラの父への思いではなく校長への怒りだったとか)

そしてエンドロール後。ホラーにありがちな『悪夢はまだ終わらない』展開。

何故新しく人形を提供するのがフリオなのか。
自分が人形によって癒されたからガチの布教なのか。謎は深まるばかりです。

というか、人形へのスタンスが男女で違っていて面白かったです。
女性陣は襲ってくる人形に対して「私の子じゃない!」と切り替え早く蹴っ飛ばすに対して、
男性のフリオは「パパ、私よ。殺さないで🥺」攻撃にまんまとハマっていました。なかなか興味深い💯

 

次回は4月4日 4月11日月曜日、
2021年制作、日本のサイコホラー(シュールコメディ)映画、
『リカ 自称28歳の純愛モンスター』の話をします。

 

鳥谷綾斗