TSUTAYAで借りたホラー映画シリーズです。
2005年制作、日本のミステリーホラーです。
【あらすじ】
新人女優の杉浦渚は、ある映画の出演に大抜擢される。
気鋭の映画監督、松村による実際に起こった大量殺人を元にした映画だった。
その日から渚の前に、人形を抱えた少女の霊が現れるようになる。
一方、謎の失踪事件が相次ぐ中、大学生の弥生も不可解な夢に悩まされていた。
【ひとこと感想】
ヒロインの迫真の演技が必見、どんでん返しつき理不尽Jホラー。
※全力ネタバレです。
※初見の方は頼むから先に観てください。
【3つのポイント】
①冒頭の不穏さが最高
②前世フェスティバル
③来世も続く贖罪
【①冒頭の不穏さが最高】
物語は、それぞれ年齢も性別もバラバラな人々が同時多発的に心霊現象に遭い、『連れ去られる』場面からスタート。
『懐かしい』の連続でした。
ストラップをジャラジャラつけたケータイを持つ女子高生たちによる噂話、という王道な入り。
(※大体「ねえ知ってる?」から始まる)
(自分も小説でよく使います)
どこか薄暗い、彩度が低いようで妙に線がくっきりした画面。
『一人きりの公園』『一人きりのトイレ』が映っているだけなのに、何故こう不安感をそそられるのか。
そこにいたはずの人間がいない。
そこにいなかったはずの人間がいる。
ざわめく森の木々の中、ぼうっと青白く浮かぶ大量の顔。
赤いスーパーボールが誘うように飛び跳ね、
朽ちかけた人形の目玉がひとりでに潰れて、少女の声が囁く。
“ずっと一緒だよ”
(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)<これですわ〜〜〜〜
不穏に次ぐ不穏、静かな「恐ろしいことが起こる」予感、久々に『あの時代』のJホラーの空気感を浴びて、疲れた体に糖分が沁みるがごとくじわ〜〜〜と感じ入りました。
あの時代のJホラーでしか摂取できない栄養素がある!
【②前世フェスティバル】
物語の骨組は、
①1970年(昭和45年)に、輪廻転生を研究していた大森という教授が、「肉体は器でしかない」と思い込み、実験のために11人もの人間を殺した。
②その被害者たちが、前世の恨みを晴らすために集合し、大森教授の生まれ変わりに復讐する。
――という塩梅です。
その被害者たち(転生したけれど、霊的存在になって他の被害者の生まれ変わりを引き摺り込む)の集合がハデで良いです。
集団で囲んだり、エレベーターで拉致したり、人気の多い真っ昼間の図書館で天井までリフトアップしたりとやりたい放題。
そのハデっぷりに、『前世フェスティバル』と呼んでいました。
(語感重視なので意味は不明)
中心にいるのは大森教授の娘、千里です。
可愛いけど持っている人形は可愛くない。チャッキーばりに動く。
千里とお人形は何度も渚の前に現れる。
やがて渚は、「自分は千里の生まれ変わりなのでは?」と感じはじめますが――
このどんでん返し、演出が最高に好きです。
渚は千里ではなく、
輪廻転生を信じて大殺戮を行なった人でなし、大森教授の生まれ変わりだったのです。
(夢の場面で千里と手を繋いでいたのが伏線ですね)
そうなると、松村監督のセリフも、意味が反転します。
松村監督:「これ(人形)を抱いたまま死んでいった少女の魂と、真剣に向き合ってほしい」
松村監督は、同じく大森教授に殺された息子の生まれ変わり。
記憶自体はなくとも、彼は父親の魂を持つ渚に対して、
「おまえが命を奪った妹の魂と向き合え」
と言っているのです。
それは、転生しても終わらない『贖罪』でした。
【③来世でも続く贖罪】
公開された当時は、この真相に「なるほど!」と膝を打ちましたが、今回改めて観てみると、
( ・⌓・)<転生の意味が無いのでは……?
と、虚無になりました。
個人的に、輪廻転生とは一種の救済措置だと思います。
前世で悲惨な目に遭っても、次の生では異なる道を歩める。
それなのにこの11人は、前世の恨みを三途の川の水でも流せなかった。
別の人間に転生して、それなりに、女子高生として会社員としてトラックの運転手として女優志望として、そして女子大生として生きてきただろうに。
それほどまでに身勝手な、つまらない『実験』で殺された恨みは深かったのか。
どうしても自分たちを殺した男が――かよわい女性に生まれ変わり、よりにもよって『被害者である千里』を演じることが許せなかったのか。
地獄でも大森教授の罪はすすがれず、
現世では何もしていないはずの渚が復讐され、
心を壊して狂気に堕ちて、
白い部屋に白い拘禁服を着せられた結末は、
苦々しく、理不尽だ――と思います。
(魂が同じでも別人格だろう、的な)
(そして前世フェスティバルの始まりが気になります)
(最初に前世を思い出し、霊となって復讐を始めたのは誰なのか)
(殺害現場であるホテルを、映画のセットとして作り上げて、その中で惨劇を再現するというのは『追体験』という名前の復讐方法なのだろうけども)
(映画の制作がキッカケで復讐が始まったのか?)
(はたまた、復讐劇のために映画の制作があったのか?)
(どっちが先か気になります)
【まとめ:優香さんの演技】
忘れてはならないのは、渚を演じた優香さんの演技です。
個人的意見を言いますね。
間違いなく彼女こそ和製スクリームクイーンだと思う。(強調)
表情だけでなく全身から、どんどん追い詰められる渚の不安定さが伝わってきます。
また、事件の唯一の生存者で、大森教授の妻だった歩美を演じた三條美紀さんもすごかったです
(あんなことがあったのに苗字は『大森』のままなんだなぁ)
渚が気が狂った際の映像を目にして、満足そうに笑う歩美。
そしてその傍らで、ちょこんと『父親』を見つめる息子と娘の姿を発見した瞬間、
どんな形でも再び我が子を見れた、そんな『喜び』を感じました。
ラストシーン。
渚が入れられた白い部屋で、
歩美は覗き窓から、渚――殺しても飽き足りないくらい憎い夫を見つめる。
そしておもむろに、
“ずっと一緒だよ”
と囁く人形と、血のように赤いスーパーボールを外から差し入れて、……
最後の最後、微笑んだ渚は美しかったです。
『ミッドサマー』のダニーと、同じ笑顔でした。
【おまけ:お気に入りと驚き】
お気に入り場面。
ドアスコープの向こうでチューチュートレインするお化けたち。元気だなオイ。
驚き場面。
①弥生の彼氏が小栗旬氏だった。
②キャストに黒沢清監督と藤貴子さんがいた。
(呪怨の伽椰子さん。こういう遊び心大好きやで)
次回は7月11日 7月18日月曜日、
2005年制作、日本の密室劇系ホラー、
『感染』の話をします。
鳥谷綾斗