人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/血を吸うシリーズ

アマプラで観たホラー映画シリーズです。

1970年公開/『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』(洋館もの)
1971年公開/『呪いの館 血を吸う眼』(洋館もの)
1974年公開/『血を吸う薔薇』(学園もの)

山本迪夫監督の三部作をまるっとまとめて話します。

 

 

  

 

 

 

 

【あらすじ】
美女が吸血鬼に目をつけられる。(大体これ)

 

【ひとこと感想】
これはホラー映画ではない、怪奇映画だ。

 

【3つのポイント】
①昭和レトロの浪漫あふれる画面。
②昭和のコンプライアンスどうなってる???
③美女たちよ、蹴り飛ばせ。

 

【①昭和レトロの浪漫あふれる画面】
まずは予告編をご覧ください。

 


www.youtube.com

 

鑑賞の際、私は飢えていました。

最近のホラーには、ロマンが足りない。

画面がスッキリしている。画面がミニマリスト
現代日本・海外の平均的な家屋やゴミ屋敷に現れるお化けもオツですが、よく分からん事象が起こって人が死ぬという非日常を、より非日常な背景で味わいたい。
非日常を極めたい一心で、パッケージ・予告編からして非日常感あふれていた『血を吸う人形』を観ました。

したら早速、

( ・ω・)<初っ端から雷雨に濡れる洋風お屋敷きたー!

 

タクシーのメーターにすら可愛いと萌えました。
レンガでできたお屋敷、シャンデリア、テカテカ光る階段、陶器の調度品、天蓋つきベッド、「何これ掃除大変そう〜!」とニッコリはしゃげるインテリア。
『血を吸う眼』のヒロインの家も可愛かったです。台所が芥子色×クリーム色の市松模様の壁紙でした。
美女たちの就寝時はレースのネグリジェ。血に染まるのはお約束。

これだよこれ、求めていたの!

どっぷり世界観にハマりました。
ここに出てくる吸血鬼は『ヴァンパイア』ではありません。
『ドラキュラ』です。

ホラー映画ではありません。これは『怪奇映画』なのです。
(同義語は「ミステリ小説ではなく『探偵小説』」)

 

【②昭和のコンプライアンスどうなってる???】
そんなレトロあふれる昭和の風景ですが、ちょいちょいヤバい場面がありました。

『血を吸う人形』では、
若かりし中尾彬氏が、市役所の窓口でタバコを吸って、「ちょっと見せて」と職員から戸籍謄本を勝手に閲覧する。
個人情報保護法のない時代……)

『血を吸う薔薇』では、
「生徒がひとり消えましてねー流行りの蒸発ですなー」というセリフがある。
(軽ぅ。昔の学校教育法には学生の安全は含まれていなかったのか……???)

さらにもういっちょ、
若かりし黒沢年男氏が、「(痴漢に)覗かれるのは君たちがキレイだからさ。怒ることないだろ?」と軽く流す。
(教師というか人間としてどうなん???)

こういうのがあるから「昔はよかった」的な言葉には反発してしまうんですよねぇ。

ちなみに「キ」で始まり「イ」で終わる放送禁止用語も普通にありました。

 

【③美女たちよ、蹴り飛ばせ】
基本的には大満足な作品ですが、でっかい不満がありました。

とにかく美女たちが弱いのです。
雪虫以下の戦闘力でした。

ヨボヨボのおじいさんに肩を掴まれただけで体が動かなくなり、大した抵抗もせずに謎の注射を打たれる美女。
バシッと頬を叩かれただけで気絶する美女。
「誰か、誰か来て!」と助けを求めるしかしない美女。
愛する男(?)が戦っているのに見ているしかしない美女。
やっと抵抗したかと思いきや枕しか投げない(せめて花瓶を投げろ)美女。

(# ゚Д゚)<蹴 り 飛 ば せ !!!

反撃しろ! じっと見てないで後ろから追撃しろー! と飛ばす野次。
反撃ヒロインを何より愛する身にはもどかしい限りでした。

あの時代はこういう女性が求められていたんでしょうか。分からんとです。

そして何故人間が吸血鬼化したかというと、
『黒幕が死にかけた美女や美男に催眠術をかけたから』でした。
死人すら蘇ってました。あとは普通に血を吸って増えた系。 

( ゚д゚)<昭和の催眠術すごいな!?

今こんな真相にしたら絶対企画が通らない。たぶん。
当時では、『催眠術』も『吸血鬼』も同じカテゴリだったんですね。

 

【まとめ:ひとつずつ感想】

『人形』
雷雨の中、婚約者に会いに山奥の洋館に向かったまま戻らない兄。妹は兄を探し、恐怖の夜を過ごす。
肉体は死んでも執念は消えない。黒幕がそもそもの元凶すぎて、だからあのラストは溜飲が下がりましたし、何より哀しくて美しかったです。ロマンです。
見所はカラスの死に様。ド派手で素晴らしい。 

『眼』
少女時代に見た悪夢。洞窟を通った先にある山の中のお屋敷。ピアノを弾くミイラと真っ赤な目の吸血鬼。
棺桶に入った吸血鬼が運送屋に運んでもらっていた。斬新。
追い詰められたヒロインがクローゼットに隠れ、隙間から鏡台の鏡を見て誰もいないことを確認し、ホッとして出てきたら吸血鬼がずっとそこにいた、という場面が最高でした。鏡には映らない吸血鬼。ロマンです。
ヒロインの幼い身勝手さもよかったです。 

『薔薇』
若く美しい女たちが通う学園に、夜な夜な現れる吸血鬼。
婚活とアンチエイジングに勤しむ吸血鬼がいました。斬新。
血を吸うと白い薔薇が紅く染まる演出に、ロマンの粋が込められていて最高でした。
学園長とその夫人(夫人が元凶)が斃れた時、夫が妻に懸命に手を伸ばす場面は、和風な笛のBGMもあって能っぽいラストでした。ロマンです。

そしてもうひとつ。
吸血鬼たちが消える際は灰ではなく、嘔吐物のような幼虫のような溶けた内臓のような造形でした。
(『死霊のはらわた』のラストシーンにも出てくるやつ)

( ・ω・)<カルト映画のグロ造形でしか得られないロマンがある。

ロマンです。怖い映画にロマンチックをお求めの方はぜひどうぞ。

 

次回6月21日は、夏の風物詩・サメ映画の『パニック・マーケット』の話をします!



鳥谷綾斗