人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/呪詛

ネトフリで観たホラー映画シリーズです。
2022年制作、台湾の超自然的ファウンド・フッテージモキュメンタリーホラーです。(長)

 

 

呪詛
https://www.netflix.com/jp/title/81599888

 


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【あらすじ】
精神病院を退院したシングルマザーのルオナン。
ずっと施設に預けていた6歳の娘を引き取るも、奇妙な出来事が次々と起こる。
それは6年前、ある村で遭遇した怪異が原因だった。
ルオナンは娘との思い出と怪異の記録のためにビデオを回し、
「私と一緒に呪文を唱えてほしい」「あるいは念じるだけでもいい」「このマークを覚えてほしい」と『誰か』に語りかける……。

 

【ひとこと感想】
主人公も信仰対象も邪悪すぎる、拡散オチのド不健全ホラー。

 

※全力ネタバレです。
※未見の方はできれば先に鑑賞してください。

※今回はちょっと邪道(?)な感想の書き方です。

 

 

【3つのポイント】
①拡散オチだった
②主人公の邪悪な傍迷惑さ
③クライマックス〜結末の鳥谷の反応

 

【①拡散オチだった】
視聴のきっかけはツイッター。突然大勢のツイッタラーがこの作品の話をしましたね。

それもそのはず。
こちらは、視聴者も巻き込んで呪いを拡散する――いわゆる『拡散オチ』だったのです。
(最近だと『シライサン』がこれに相当します)
ツイッターらしい、なんとも微笑ましい悪意ですな!

ものすごく簡単に説明すると、

主人公たちは罰当たりな心霊系動画配信者の3人組。
とある神様(仏様?)・『大黒仏母』を崇める村を訪れ、撮影しながら不敬を働きまくり、禁足地である地下道に潜入して2人は死亡。
生き残ったのがルオナン。当時妊婦で、おなかの中にいる娘も祟りの対象だった。
それから逃れるためにルオナンは呪いを拡散、これを観たあなたも呪われました、私の娘のために犠牲になってね→派手に自殺。

という塩梅です。

個人的所感。

・洒落怖やないかい。
(『姦姦蛇螺』を彷彿しました)
・本当にあった呪いのビデオやないかい。
(リプレイ機能があった。お分かりいただけただろうか)
・ホラーに不慣れな人はオススメしない。特にホラー初心者が最初に観るのは避けるべき。
・慣れていても、①虫、②ブツブツだのツブツブだのの集合体恐怖、いわゆる蓮コラ、③幼い子どもがひたすら可哀想で理不尽な目に遭う――この3点が無理な人にもオススメしません。

私は③がダメなので、途中からキレ散らかしました。
ですが、ホラーとしては『冷たい恐怖』『得体の知れない空虚な闇』『さまざまな狂気』を見事に作り上げていて、古いようで新しくて楽しかったです。

観覧車や電車の映像で、この作品のテーマを暗に伝える手法も良かったし、
何より『あのマーク』、白い画面を使って網膜に焼きつける手法は感嘆しました。現代っぽい!

 

【②主人公の邪悪な傍迷惑さ】
この作品の要は、主人公のシングルマザー・ルオナン。
外道っぷりが凄まじかったです。

ですが人物描写は秀逸で、きちんと段階を踏んで「こいつヤバいで」と視聴者に伝えていました。

娘・ドゥオドゥオと6年ぶりに暮らし、幸せそうにがんばる姿は応援の対象だったのですが、

①(親親)幼稚園に呼び出され、急に早退すると言い出し、周囲に引き止められたら「なんとかして!」と丸投げして押し切る。
②娘に怪我させられた子におもちゃを与えて、「うちの子と遊んであげてね」と言う。
③商店から凧を盗んで娘と遊ぶ。娘が咎めてもスルー。
④例の村で生贄にされ、6年前の騒動で逃げ出してなんとか生き延びた巫女の少女の耳を切り取る。

こんな人間をどう応援しろと。

けれど、相談した霊媒師から娘を7日絶食させろと言われた場面は同情しました。点滴はアリですかと思わず尋ねたくなります。
娘に隠れてこっそりパンを食べる場面、ズキッとしました。誰が幼い我が子を飢えさせたいものか。

結局食べ物を与えて、霊媒師たちは巻き添えで死んだわけですが。

(ていうか「何か食べさせてからじゃないと点滴できない」は無いだろう台湾の医者よ)

(ていうかルオナンも動画を観ながら自分でやるな……痛々しいわぷっくりした子どもの腕に点滴の針の跡が点在するの!)

最終的に、例の村の人々による『大黒仏母』の力を弱めさせる工夫を破壊して封印を解き、この動画(あえて映画ではなくこの呼び方で)を観た不特定多数を巻き込んで犠牲にしようとしたわけですが。

終結論、

( ・ω・)<……こいつ腹立つわぁ。

絶対我が子が他人の物を(過失ではなく故意で)壊したら、「子どものやったことだから仕方ない! 許さないなんて心が狭い!」とは言うタイプやで。
(※これは単なる悪口です)

ていうかなんで娘に真名を教えたん???
(真名を知らないままだったら呪いを回避できたままだったのに)

 

【③クライマックス〜結末の鳥谷の反応】

事情は分かったがおまえの態度が気に入らない。

となったので、クライマックスの視聴者に呪いを取り込ませようとするシーン、がっつり抵抗しました。
恐ろしい意味を持つ『呪文』とマークと漢字だけが流れ、視聴者(つまり俺)を呪おうとする圧巻の流れ、がっっっつり抵抗しました。

以下、文字に飽きたのでイラストで。

 

『呪詛』感想

 

すみませんあまりにもルオナンにムカついて。
絶対に呪われてなるものか、誰が貴様のために犠牲になるかと意地で抵抗しました。
(実際には声に出さずに心の中で唱えてました)

脳裏に浮かぶは『哭声』の國村隼とファン・ジョンミンの祈祷合戦シーン。

ちなみにこの祝詞は、『ミュージカル刀剣乱舞 歌合 乱舞狂乱2019』に出てきたものです。

 


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神には神をぶつけんだよ。

おまえたちが信じる神と!
私が信じる神!
どちらが強いか勝負しようぜぇええええ!!!

という心構えで臨みました。(間違いなく喧嘩腰)

 

【まとめ:ある意味ものすごく楽しんだ】
ルオナンへのヘイトが蓄積した理由は、
『親がやらかしたのに子がその尻拭いをさせられる構図』
が嫌すぎたからだと思います。

親の因果が子に報いてはいけない。逆も然り。そう思います。

さらに他者を巻き込むって発想が傍迷惑すぎる。
身から出た錆くらい自分で処理していただきたい。

ラストも単に命を差し出すのだけではなく、大黒仏母に「命ある限りお仕えします。今生だけでなく来世もそのまた来世も。1万回くり返します」と交渉すればいいんじゃないすかねルオナンさん。

これくらい言えばさすがに子どもの一人くらい見逃してもらえるんじゃないっすかねルオナンさん!!!

 

(・_・)

 

前回話したのが、「子どもが怖い目に遭うけど反撃する」という健全ホラーだっただけに、余計にカッとなりました。
やはり。「子どもが理不尽に可哀想な目に遭うのみ」な展開とは相性が悪い。

しかしそれはそれとして、自分は全力でこの作品を楽しんだと思います。
本気で憤って本気で怖がって、そして本気で抵抗したので。ので!

 

【おまけ:怖かった場面】
冒頭、ルオナンの両親の交通事故シーン。
右端上部に張り付いたデスマスク。夢に出そう。

パンツいっちょでみっしり立つ村人のおじさんたち。
シュールかつ恐怖。

 

続編も決まってるそうです。
是非ともドゥオドゥオには元凶をぶん殴ってほしいですね!

 

次回は8月22日月曜日、
2011年制作、アメリカのサメ映画、
シャーク・ナイト』の話をします。

( ・ω・)<夏を惜しんでサメ映画!

 

 

鳥谷綾斗