人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/シライサン

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2020年制作、日本の都市伝説系ホラーです。

 

 

シライサン

シライサン

  • 飯豊まりえ
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【あらすじ】
大学生・瑞紀の目の前で、親友の香奈が突然死した。
香奈の眼球は破裂していた。
一方、大学生の春男も、弟が眼球破裂して死ぬ。
謎の怪死を追う二人は、『その話を聞くと死ぬ、シライサンの怪談』に遭遇する。

 

【ひとこと感想】
作り手の好きなものてんこ盛りな、手堅いホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①行儀の良いプロット。
②シライサンの特徴。
③エンドロールを見逃すな。

 

【①行儀の良いプロット】
物語の筋は、非常にシンプル。

序:
異様な死に様の死者が頻出(※大体が若者)

あの怪談は本物の呪いだった!

ホラー人生で親の顔より見たあらすじです。(いいぞいいぞ!)
(次点は『田舎にバカンスに行ったらひどい目に遭った』)
指南書に模範例として掲載されてもいいくらいです。(これだよこれ!)

破:
怪談の調査をして、生き残る方法を探す。

安心して見れます。(そういうのがいいんだよ!)
ここで主人公の恋愛フラグ、いい感じの家族愛、友情話などを入れてスパイスにします。(ブラボー!)

急:
その怪談の出所・すべての始まりの場所へ向かって怪物とラストバトル。

と、続くのが古来(具体的に言うと『リング』)からの王道なのですが、最後の最後で意外な解決策をふたつも編み出しました。

 

【②シライサンの特徴】
新たなるJホラーモンスター、シライサン。

外見は貞子さんと『コンジアム』の1時間10分頃に突然出てくるお化けの合いの子って感じです。
非常にシャイな子で、まず呪いの対象者の前にフッと現れて、立ち上がって、徐々に近づいてくるタイプです。

ヒロイン・瑞紀が図書館で書き物をしていると、その手をそっと握ります。
バーのナンパかキャバの営業みたいな驚かし方です。

そんなシライサンに遭遇すると、眼球が破裂して死にます。

シンプルに嫌だなー怖いなーなんですけど、あっさり死なずに済む方法が判明。(てかパッケージに書いてた)

シライサンの目を、
見つめ返して目を逸らさないこと。

そして瑞紀と春男、
本当に二人で現れたシライサンを見つめ続けます。
ちなみにどちらかが見つめ続ければOKらしく、

 

春男:「僕が見ているから休憩していいですよ」

 

シューーーール🤔

最初は「うわ、怖いな……」だったものの、緊迫感ってな長い続かないもので、

( ´∞`).。oO(……これ塩で殴っちゃいけないのかな)

などと考えてしまいますね!

(ホラーで実体ありのお化けを見るたびに思う)

(岩塩の塊とかで殴ればいけるのでは、と)

(すみませんロマンがなくて)

(何せ、デビュー作のホラー小説 で『どうやって呪いによる死から逃れるか』を考えて)

(ガッツリ力技で解決した人間なもので)

 

【③エンドロールを見逃すな】
しかしここからさらに話を進めて、ふたつの意外な解決策が出ます。

中盤で突然出てきた記者の幸太と脚本家の冬美夫婦。
過去に娘を亡くした、微妙な溝ができている二人です。

なんやかんやあって、シライサンは3日ごとにしか来ない(原作小説いわく、元ネタの死来山に死体を運んで戻ってくるのに時間がかかるそうです。そこは現実的なんかい)ことに気づき、
怪談を知った冬美のために、幸太は『意外な解決策』を取ります。

シライサンの怪談を世界中に広めて、
シライサンが来るリスクを分散すること。

一万人に広めたら、一生シライサンに遭遇しない可能性も出ます。死ぬ人が増える可能性も出ますが。
シライサンを退散させるのではく、自然現象のように共存する道です。

そしてもうひとつの解決策。
シライサンの話を忘れること。

瑞紀は事故で記憶喪失になり、事件に関するすべてを忘れます。
ただし春男との恋愛フラグ 絆 も失ってしまった。

ほろ苦い結末と、シライサンの影を感じながらのエンドロールには、

 

脚本:間宮冬美

 

ここで、「ああ!」と納得しました。
作品の仕掛けがパッと理解できて、アハ体験でした。

劇中に、すごく違和感のあるセリフがありました。
『見つめあう対処法』を示した森川くんの言葉です。

 

森川:「映画一本分くらいの時間、あいつと向き合わなきゃいけない」

 

つまり、
この映画自体が『シライサンという怪談』を広げるためのもの、
観客であるアナタも呪いに感染しましたよと語りかける、
鑑賞者巻き込み型、第四の壁をぶち破る系の構造だったのです。

 

【まとめ:てんこ盛りだった】
振り返ってみると、

・話の筋/王道のJホラー的展開。
・テーマ/シライサンは現代人が抱える病・『承認欲求』のメタファー。
・怪物の造形/黒髪ロングの不気味な女。
・真相①/呪いの一族や村や巫女などの民俗学系。
・真相②/呪いを広めた人物の目的は、失ったものを取り戻すため。
(これは原作小説のみに出た設定。映画ではカットされて残念)
・結末/切ない別れと恐怖は終わらない系。
・オチ/『この話を知った者は呪われる。観客だろうが無関係ではない』という巻き込み型。


作り手の好きなもの全部盛りやないかーい!


分かるよ! 私も大好き!

ミックスフライで玉子とじ丼作ったみたいな味わいで、
大変手堅い、職人技のような作品でした。満腹。

 

【おまけ:鑑賞時のメモにあったシライサン想像図】

 

シライサン想像図

どうかと思う。

 

 

次回は7月4日月曜日、
2005年制作、日本のミステリーホラー、
『輪廻』の話をします。

( ・ω・)<しちが、つ……?

 

 

鳥谷綾斗