ケーブルテレビで観たホラー映画シリーズです。
1976年制作、アメリカの青春オカルトホラーです。
【あらすじ】
狂信的な母親に育てられ、学校ではいじめられる内気な女子高生、キャリー。
クラスメイトの前で初潮を迎えた彼女は、強い念動力に悩まされる。
クラスの男子に誘われ、高校のプロムに出ることになったが……
【ひとこと感想】
鏡付きのサンドバッグが皆殺しに至るまで。
※全力ネタバレです。
【3つのポイント】
①キャリーの人物像。
②そこまでやるか的いじめ描写。
③恐ろしい『母親』の呪い。
【①キャリーの人物像】
この映画の特徴は、
( ・ω・)<倫理観どうなってる?
と言いたくなる悲惨で陰湿ないじめ描写。
特に冒頭の体育(球技)の場面では、「キャリーを狙うのよ!」で古い記憶を刺激されて ( •᷄ὤ•᷅) になりました。体育の球技嫌い。
からのシャワー室で、『初潮でパニクるキャリー(しかも全裸)に笑いながら生理用品を投げつける』場面。
加えてパートナーがいないとプロム(卒業パーティー)に参加できないというぼっち皆殺しシステム。
正直な感想。
( ・⌓・)<キッツ……
以前、友人氏とこんな話をしました。
鳥谷:「ホラー観てると、昔のアメリカの高校生の倫理観どうなってんの? って思うことが多いんですよ」
友人:「それなら『キャリー』がいっちゃんヤバいよ」
鳥谷:「まじか。観る」
友人氏の所感に寸分の狂いなし。
そんな日々に泣き叫ぶキャリーは、踏み潰された花に似た少女です。
全裸でも情欲をそそられる前に痛々しさを覚えるような、下がり眉の女の子。
そんな彼女は、クラスの男子・トミーにプロムに誘われます。
(生まれて初めて自分を飾るキャリー、とても素敵な笑顔で可愛かった!)
そしてそれは、彼女をいじめたスーの計らいでした。
【②そこまでやるか的いじめ描写】
鑑賞する前は、スーはキャリーに罠を仕掛けたのだと思いました。
「自分の彼氏をいじめた相手にあてがう……? そんなん本気になったところを笑う精神的なアレやん、漫画で500回は見た……」と疑いの目を向けましたが、スーは本当に反省して、キャリーのためを思ってトミーにお願いしたのです。
(これは『boyfriend』を『彼氏』ではなく『男友達』と捉えるべきだった)
てっきり四方八方敵だらけかと思いきや。
学校のコリンズ先生といい、少なくてもキャリーの味方はちゃんといたのです。
けれどこの物語の結末は皆殺し。
何故なら、数少ないキャリーの味方の親愛をはるかに上回る悪意が存在していたからです。
いじめっ子・クリス。
彼女はキャリーに恥をかかせる――否、完膚なきまでに自尊心をズタズタにしようと画策します。
そのために養豚場に忍び込んで、豚を一頭殺しました。
( ・⌓・)<そこまでするか……?
呆然としました。ペンキじゃダメだったのか。
底知れない執拗さを感じました。何がクリスたちにそうさせるのか。
【③恐ろしい『母親』の呪い】
クリスたちの悪意にも眩暈がしますが、さらに最悪なのがキャリーの母親。
キリスト教っぽい何かを狂信し、それをキャリーに押しつける――それでもキャリーが母親に甘えるそぶりを見せるのがキツい――泥沼の共依存親子です。
『女になるのが罪、性交も罪で、生理と出産とニキビは罰』と教える宗教です。冷静に考えておかしいと思わないのかシンプルに疑問。
けれど、倫理的や論理的、心情的や世間的におかしくても、キャリーにとっては母親は絶対の存在でした。
母親:「笑いものにされるのよ」
だから、ステージ上で豚の血を浴びせられた時、キャリーは思い込んだのです。
“みんなが、わたしを笑いものしている” と。
本当はコリンズ先生は心配していた。スーはクリスを止めようとしていた。(早とちりした先生に追い出されたけど)
なのにコリンズ先生も自分を嗤っていると――認知の歪みを起こした。
笑いものにされている。
だってパーティーに行く前、ママがそう言ったから。
ひどい。許さない。みんな死ね。
そうしてキャリーは、味方もろとも皆殺す、悪魔になってしまったのです。
【まとめ:キャリーは悪魔か?】
鑑賞し終わると、母親もクリスも、キャリーに投影していたように思えます。
自分の心に宿る、意地が悪くてどうしようもない、クソッタレな悪魔を。
母親は、「性交は罪なのに、酔っ払った旦那に手を出されて愉悦を覚えた」自分に罪悪感を抱いていた。
その行為の結晶であるキャリーに、それをぶつけただけだった。
クリスは、いじめた罰としてハードトレーニングとプロムへの参加禁止を命じられ、それに反抗したけれど友達の同意を得られなかった苛立ちを抱えた。
その原因(※思い込み)であるキャリーに、八つ当たりしただけだった。
身勝手なものです。自分の悪意は自分で処理しろって話です。
つまりキャリーは、
『鏡が付いたサンドバッグ』だったのです。
そして一番恐ろしくて悲しいことは、スーもキャリーを『悪魔』と認識してしまったこと。
夢の中で花を手向けようとしたらキャリーに襲われて魘される……悲しい。
せっかくの親愛が悪意でズタズタにされるのは、悲しい。
最後、母親が崇拝する『神様』の偶像が、バカにしたような表情(どこ見てんだアレ)だったのがまた腹が立ちます。
「所詮、親愛は悪意には勝てないのだ」と言われているようでした。
( ・ω・)<……
次回は4月25日月曜日、5月2日月曜日、
1982年制作、アメリカのSFXホラー、
『ポルターガイスト』の話をします。
鳥谷綾斗