人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/さんかく窓の外側は夜

アマプラで観たホラー映画です。
2021年制作、日本のミステリホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
書店員の三角は、幼い頃から幽霊が見えることでつらい思いをしてきた。
除霊師の冷川は三角の能力を買い、助手にする。
ふたりは巷で起こる不審死事件の謎を追う。
死体には『呪い』がかけられた痕跡と、「非浦英莉可」という名前が残されていた。

 

【ひとこと感想】
「呪いに負けるな!」を伝える、バックハグが基本スタイルの心霊バディ映画。

 

※全力ネタバレです。
※原作未読です。

 

 

【3つのポイント】
①ブロマンス以上BL未満
②『信じない強さ』と焼き肉のタレの契約
③呪いは罪にならないのか?

 

【①ブロマンス以上BL未満】
ビジュアルポスターで察せましょうが、こちらはイケメンたちがものごっつスキンシップします。

ヒロインはいますが、『呪いをかける者』という立場ゆえにフラグは立ちません。
霊を祓える冷川は、霊が視える三角に触れることで視覚を共有する――ゆえに基本スタイルはバックハグです。

率直な意見。

( ・ω・)<肩に手を置くとかじゃダメなん?


自分は年季の入った腐女子ですが、BLよりも遥かにホラーが好きなので、どうしても『ホラーとして』を重視してしまいます。

結論。そこまで怖くない。
唯一怖い部分は、③で書きます。

幽霊は出ます。
でも顔色が悪いヴィジュアル系です。
バラバラ死体も血糊もクリーチャーも出ます。
でもグロ度は控えめです。

なので怖いのが苦手な方、ホラーは不得意だけど岡田将生氏と志尊淳氏のいちゃいちゃ(率直な表現)は見てぇんだよって人も安心です。太鼓判。

 

【②『信じない強さ』と焼き肉のタレの契約】
プロットはバディものとして非常にスタンダード。

出会って、一緒に行動して、喧嘩して、仲直りして絆を深める。
起こる事件も『バラバラ死体のありかを追う』。

そんなお手本展開の中で、「お、珍しい?」と思ったのが、『信じない強さ』でした。

テーマである『呪い』は、信じたら作用する。
信じなければ、呪いは怖くない。
けれど信じないというのは難しい。
それは現象に対して反抗し続けることであり、精神的には信じる方が楽である。

その理屈を具現化したのが、二人の協力者である半澤刑事。良い味出してました。
滝藤さんの粗野だけど思いやりがあり、愛妻家な刑事さんっぷりにブラボー。何なら彼が主役でもいいです。

もいっちょ「珍しい?」と思ったのが、冷川が三角を自分専用にするためにこっそりと術をかけていた点の、その方法。
術のために署名捺印をするのですが、その捺印が朱肉ではなく焼肉のタレ製でした。

焼肉のタレで結ばれる契約って何だよ。

さらにもいっちょ。
クライマックスで、呪いの原動力になる穢れを貯める貯金箱を攻略する場面です。
三角と非浦を縛りつけるワイヤーみたいなものが、死ねという文字を形作っていました。

 

感想イラスト





シュールすぎるだろ。

(ちゃんと事前に『SNSで気軽に書き込まれた「死ね」も呪いである』というのがありましたが、それにしても絵面が面白すぎる)

といった塩梅にまったく怖がれなかったのですが、最後にちょっとした恐怖を投下されました。

 

【③呪いは罪にならないのか?】
そもそもの始まりは、十数年前のカルト教団の信者による集団殺し合い事件。

それは教祖として監禁されていた冷川の仕業でした。
過去を思い出し、苦しむ彼を三角が救います。

同様に、非浦英莉可もカルト教団に命じられて呪殺を行なっていました。

冷川も非浦英莉可も出会いによって救われ、
彼は彼の運命である三角と焼き肉を食べに行ってメデタシ――って、待て待て待て。

冷川のその呪った罪どうなんの?

なんか過去から解放されましたみたいな顔してますけども。
確かに母親に裏切られて絶望する気持ちは分かるけれど、数十人単位で人が死んだことはスルー?
幽霊を祓う仕事で贖う? でも冷川、マッチポンプ商法(呪いを拡散させて自分が祓って儲ける)の計画を立ててたよな?

(いやでもそれは罪の記憶が蘇る前だからセーフか……どっちにしろ人でなしですが)

(真っ当に育ってないから善悪の判断が曖昧ってアナタ、事務所構えている大人が何言ってんだ)

ていうか非浦英莉可の罪もどうなんの?
別に悪者を成敗したわけではなくて、依頼人(?)の政敵なだけなんだよね?
特に、道を尋ねられて親切に答えたのに呪い殺された北川景子氏(が演じていた女性弁護士)どうすんの!?

( ・⌓・)<呪いって法律以外でも罪にならないの……?


――という疑問が怒涛のように押し寄せ、メデタシどころじゃなくなってしまいました。

少々ささくれ立ったので、折角のクライマックス感動シーンもいまいち乗り切れず。
母親呪い殺した後でも人は腹が減るんだな、などと考えていました。我ながらヒドイな。

 

【まとめ:『呪い』に負けないために】
③の引っ掛かり点は、原作を読めば解消されることを願うとして、さて。

この作品の愛のメッセージは、『呪いに負けるな』だと思います。
オカルト的なものではなく、現実社会やSNSでの気軽な「死ね」「キモい」という言霊を受けても、気に病まなくていいというエールです。

そんな呪いを信じるな。
不埒者からの言霊を信じるな。
信じるべきは、主役の美しい男二人のイチャイチャだ。
それを見て活力を得ろ。
傷ついた男たちが手を取り合ってトラウマを乗り越える姿はいいよね!!!

冒頭で冷川が、

 

冷川:「僕と一緒にいれば怖くないですよ」

 

と言葉をかけるのに対し、ラストで三角が、

 

三角:「俺と一緒にいれば怖くないですよ」

 

と言葉を返すのってエモいよね! 手を繋いで目覚めるシーンもつけよう! 持ってけ泥棒!


そんな力強いエールの波動を感じます。
つまりそういうことです。

受け取ったぞその親切心、ありがとうな!!
(ホラー映画の感想とは思えない文で〆る)

 

 

次回は2月6日月曜日、
1959年制作、日本の怪談映画、
四谷怪談』の話をします。

 

鳥谷綾斗