人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

映画館で観たホラー映画です。
2023年制作、日本の子ども向けホラーアニメの大人版因習系家族愛ホラーです。(長い)

 

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既に映画館で2回観てきました。

 

梅田ブルク

1回目は梅田ブルク、

 

大阪ステーションシネマ

2回目は大阪ステーションシネマです。キタ横断(?)です。
念願の『12月1日の映画の日に映画鑑賞』を叶えられてハッピーです😘

 

【あらすじ】
令和の現代より時は遡って昭和31年。血液銀行に勤める水木は、山奥にある哭倉村を訪れた。
当時の日本を牛耳っていた龍賀時貞の後継者が決まる場に立ち会うためと、謎の血液製剤Mを調べるためだ。
だが、長男の時麿が何者かに殺されてしまう。
怪しい人物として捕らえられたのは、『見えぬものが見える』白髪の男だった。
水木がゲゲ郎と名付けた男は、生き別れの妻を探していた。

 

【ひとこと感想】
容赦はないが救いは絶対にある、鑑賞後は思わず謝った、因習陰湿一縷の光系ホラー。

 

※全力ネタバレです。
※未鑑賞の方は映画館に行ってください頼みますマジで。
※いつもより長いです。ポイントが4つになりました。

 

【3つのポイント】
①導入は原風景
②見えざるふたつの戦い
③龍賀沙代という少女について
④クライマックスは吐き気、鑑賞直後は謝罪

 

【①導入は原風景】
唐突ですが連想ゲームです🍌

マジカル因習村👏

因習村と言ったら横溝正史👏

横溝正史と言ったらドロドロの遺産争い👏

という答えが成り立つレベルで、この国においては、
『閉ざされているコミュニティと、まかり通るのはそこだけだが深く根付いている俗習』

と、
『とんでもねぇ遺言によって起こる本家分家ごった煮の骨肉の争い』
は、この偉大な作家が生み出した世界観が基本とされています。

そんなわけであらすじだけ読んだときは、

( ・ω・)<横溝正史やないかーい💕

大喜びでした。大好きです。
そんなわけで入りは完全に『犬神家の一族』でした。
ていうかモブが「祟りだ」と言っていたので『八つ墓村』でもあります。
何そのチョコパ(昭和っぽい言い方)にプリン(昭和の代名詞)をのっけたような豪華さ。好き☺️

一族全員が体育館くらいの広さがあるハイパー大広間に集まって、真ん中に弁護士と、立会人という名の探偵役。
(地味ですが座布団に座る作法が正しくて感動した)

この光景は、日本のホラーミステリ好きにとってはいわゆる原風景ですね! 若い世代の遺伝子にも刻まれてほしい!(?)

昭和の影の部分を描くための空気作り、特にタバコの扱いが素晴らしい。
職場でも電車内でも平気で喫煙。
車内でも道端でも当然のようにポイ捨て。
咳き込む子どもがいてもお構いなし。

冒頭の車内で、その子を気にして喫煙を迷う水木は、その時代的には『異端』でした。
(水木の役割を何気に描いてた!)

薄暗い取引には葉巻。高価なガラス製のライターと灰皿を添えて。
盟友の誓いはタバコ。うまい酒と酔わないとできない話を添えて。
「一本くれ」――ゲゲ郎(のちの目玉おやじ)との距離感の描写もタバコが担っていました。

良いアイテムです。
自分はタバコが大嫌いですが、アイテムとしては相当好きです。

 

【②見えざるふたつの戦い】
そんなエモい始まりを経て、龍賀家の人々が惨殺されます。
『犯人は誰?』というミステリーから一転、禁足地と言われる島で、ふたりは妖怪『狂骨』と対峙します。

そういえばこれは鬼太郎のアニメだった。(思い出し)

そして謎は、『殺人は狂骨の仕業。では、その依代は誰?』という特殊フーダニットへ。

並行して、ゲゲ郎の見えざる者との戦いの裏に、水木の戦いも描かれていました。

それは本当に『見えない』戦い。
血液銀行の上司から、血液製剤Mについて調べろと命じられます。
投与すれば不眠不休で動く人間が作れるそれは、戦時中のように軍隊ではなくサラリーマン――企業戦士に卸すというのです。

 

水木の上司:「戦争はまだ終わってない」

 

敗戦からのし上がるために、血液銀行と――龍賀一族は『争って』いました。

日本という国を世界に君臨させるという『大義』のため、
『国』の権力者は戦争を始め、最中は一般兵士に「お国のために死ぬのが本望だと思え」と命じ、
『龍賀』の権力者は、幽霊族を捕らえて血液を奪い、村外の人々をさらって犠牲にし、より優秀な子孫を残すために実子や実孫に「当主に身を捧げろ」と命じたのです。

その犠牲のさらなる犠牲になったのが――水木が村で最初に出会った少女と少年、沙代と時弥でした。

 

【③龍賀沙代という彼女について】
彼女を想うと泣きます。
あまりにも憐れでした。

水木に鼻緒を直され、ほおを赤める彼女。
「おいおい今ので惚れたのか。チョロすぎんかこのお嬢さん」と思った自分を殴りたい。
今まで彼女は、自分を女(女体や子を作る臓器)として扱われてばかりで、女の子としては扱われなかった。
必要とされたとしても、たとえば鼻緒が切れても放置された――大事にはされなかった。

東京や自由に憧れた。でもここを出てもどうせ幸せになれないと泣いた彼女。
それでも水木を信じたかった。自身を利用したいだけだったとしても。

一旦は村から出ようとしたのに、水木が囚われたゲゲ郎を助けようと戻り、彼女は同行して――

 

乙米:「知っているのですよぉ、おまえがお父様のお気に入りだってこと!」

 

よりにもよって!
実の母親に、確実に時貞に同じ目に遭わされて誰よりも沙代さんの苦しみも怒りも理解できるはずの母親に!
死んでも知られたくない人に、殺してでも知られなくないことをとっくにバラされていた!

その瞬間の彼女の絶望は、想像してもしきれません。

すべてを呪った彼女は人間をやめ、狂骨に成り果て、母親を筆頭に村人を殺戮します。当然です。
笑いながら嘆き、泣きながら水木を手にかけようとした彼女は、「化け物め」と言われて殺され、青い炎に包まれました。「嫌だ」と悲鳴を上げながら。

祈りました。

頼む水木、抱きしめてやってくれ。
その子に、本来なら当たり前だったものを与えてやってくれ。
せめて最期に、手だけでも握ってくれ。

けれど叶いませんでした。
深く重い傷を背負う水木には、それはとんでもなく難しいことだったのです。

彼女には、ひとつの救いもありませんでした。

 

【④クライマックスは吐き気、鑑賞直後は謝罪】
そんな水木の泣き声(と自分のサイレント嗚咽)の中、決戦の舞台へ。

幽霊族の血で染まった巨大な桜の下で待っていたのは、
孫の時弥の体を奪った時貞でした。

すげぇ😦
骨肉の争いストーリーで誰もが思う、「遺言残したジジイが一番悪くないか?」を解消しに来た。(どんな感想?)🫨

若い体を得た時貞は有頂天で語ります。

幼い孫は今頃、自分の代わりに地獄で獄卒にいじめられてると笑い、
自分こそが日本を救うと、救世主に値する人物だと豪語し、
頭部は醜い老体で、体は幼い子どもという、心そのままを表現したようなグロテスクな姿で。

さらに幽霊族からは、血を奪うだけではなかった。
捕らえたものを生き永らえさせる血桜を使って、幽霊族を苦しめて怨念を募りに募らせ、
それを呪い返しすることで、怨念を糧に強くなる狂骨を作り出し、操っていました。

(# ゚Д゚)<そんな凶悪なSDGsがあってたまるかー!!!

今すぐやめろ持続さすなそんなもん! 絶やせ!

と、ダダギレしました。

こんなグロい存在がいていいのか。
関わるだけで魂が濁りそうな存在が。

そんな存在を目にして、水木は完全に絶望しました。
コントローラーを失った狂骨によって、この国が滅ぶのを望みました――が。

相棒のゲゲ郎は、ずっと探していた妻と再会し、

 

妻(岩子さん?):「ひとりじゃなかったわ」

 

その言葉を聞いて、このどうしようもない世界を『我が子が生まれる世界』『友が生きる未来』として守ることを決めて。

自らの肉体を犠牲にして、戦いました。

 

【まとめ:容赦は本当に無かったが】
公開初期の方のレビューに、『容赦も救いもない(試験も何にもない♪と掛けてる?)』とありましたが、断言します。

救いは確実にある。
鬼太郎が生まれたことが、ほぼ唯一だけれど絶対の救いだった。

だから鑑賞直後は謝りました。
かつて墓場で生まれた鬼太郎のことを、「怖い」とか「不気味」だと思ってすみませんでした。

ひとさまの大事なお子さんを、あんなに一族総出で望まれたお子さんをそんなふうに思って本当にすみませんでした!

鬼太郎が無事に生まれてきてよかった。
土をかき分けて地上に出てくるだけのガッツがあるお子さんで本当に良かったです!!!

 

【おまけ①:他の人物に対してつらつらと】
糸目の石田彰こと村長の長田。
自分が数十年間ずっと好きだった女(乙米)が、誇大妄想選民思想クソジジイとまぐわうのが栄えある役目だと言うの、どんな気持ちで聞いてたの。

奔放な次女・丙江さん。
最初はただの阿婆擦れ(失礼)だったのが、すべてを知った後で見ると、つらく苦しい過去を感じます。
人間が壊れるには理由がある。

廃人同然の次男・孝三さん。
ゲゲ郎妻さんとの脱出ストーリーが観たいです。

そして沙代さん。
目玉おやじと鬼太郎に掬われた時弥くんを迎えにきたけど、それでも『よかった』とは思えませんでした。

でも、もしかしたら。
彼女は救われてはいけなかった、のかもしれない。

何故なら現実世界にも、彼女と似たような境遇の人がいます。
昭和の当時にも、あまり考えたくないけど現代にも。
だから、せめて――沙代さんの生涯を目にした人間が、その境遇に、環境に、嫌悪感を覚えるべきだと思います。

性的虐待や暴行、ひとの尊厳を強奪して搾取する……そういうものを現実できちんと憎めるように。それが悲惨な物語の役目のひとつなので。

だからあんなに、直接的な描写はないのにリアルだったのかなと思いました。

 

時弥:「忘れないで。ぼく、ここにいるよ!」

 

時弥くんが残した言葉は、そのまま沙代さんにも当てはまります。

権力者どもがのたまう大義のために犠牲にさせられた人々。

(ちなみに沙代さん以外で泣いたのは、夜行列車にいた母子の末路と霊毛ちゃんちゃんこの誕生のくだり)

(自分がどんなことになっても愛すべき弱き子に心を寄せる。こう在りたいものです)

 

【おまけ②:「霊毛ちゃんちゃんこ!」じゃないよもう】
今回の映画で。

今まで『ご先祖さまの髪を編んだ』だけだった霊毛ちゃんちゃんこに。

とんでもなく重い設定を付与されました。

そんな気軽に投げていいんすかそれ。

(いや、ええやろ)
(鬼太郎が妖怪と人を守るためだし!)

 

 

次回は12月18日月曜日、
2007年制作、アメリカのモキュメンタリーホラー、
パラノーマル・アクティビティ』の話をします。

 

( ・ω・)<原稿中なのでお休みしま!

 

 

鳥谷綾斗

映画/ヘル・レイザー

ゲオで借りたホラー映画です。
1987年制作、イギリスのスタイリッシュオカルトホラーです。

 

 

ヘル・レイザー(字幕版)

ヘル・レイザー(字幕版)

  • アシュレイ・ローレンス
Amazon

 

 


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【あらすじ】
究極の性的快感を体験できるパズルボックス、『ルマルシャンの箱』。
それを手に入れたフランクは行方不明となる。
数年後、彼の弟のラリーが後妻のジュリアを連れて実家に帰ると、そこには肉体を失ったフランクがいた。
フランクと関係していたジュリアは、彼の復活のために他者の血肉を捧げる。

 

【ひとこと感想】
グロテスクで美しい怪物造形が光る、SM育成推奨ホラー。
(ただし最後はびっくりハウス)

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①グロ造形が素晴らしい
②前半はサイコサスペンス
③後半はびっくりハウス

 

【①グロ造形が素晴らしい】
この作品の特筆すべきは、こだわり抜いたグロ造形。

キッチンの腐った食べ物に本物のウジやG。
ラリーの血を得て(床が吸水力バツグンでウケた)復活したフランクの、骸骨に肉をまとったような姿。
皮膚がなく人体模型みたいな男がタバコを吸い、女をたらし込む様。
病室の壁が割れ、異空間につながり、点滴の袋が真っ赤に染まり、
ついでに謎のヒゲもじゃ男が虫を鷲掴みにして食い、ヒゲに羽虫がついているところなどに、


( ゚∀゚)<ウヘハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

よく分からん笑いが出ました。

この嫌悪感がゾクゾクする。見るも耐え難いのに見てしまう。
80年代のホラー映画に出てくるグロ造形でしか得られない栄養素がありました😘

特にデザインが秀逸なのは、ルマルシャンの箱を解いたら現れる『セノバイト(魔道士)』たち。

リーダーっぽいピンヘッド、
紅一点なフィメール、
ぬっぺふほふみたいなバターボール、
歯をカチカチ鳴らすチャタラー。

怖いけどオシャレで、目だけやたら綺麗な彼らはシリーズの顔です。

が、彼らの正式な出番まで1時間6分ほど待ちます。

何故ならこの映画、最初は完全にグロつきサスペンスでした。

 

【②前半はサイコサスペンス】
前半は、究極の官能とやらを求めた挙句に肉体を失ったフランクを復活させたい、ジュリアの頑張り物語です。

実は義兄と関係していた彼女。
そのときの回想が完全に三文オペラで、特にナイフでキャミソールのヒモを切るところは「浸ってんな〜〜」と笑ったのです、が。

フランクと他の女とのアレな写真を見ても、その想いは壊れないジュリア。
復活に必要な血を求めて、行きずりの男を家に連れ込みます。

最初は戸惑いながら男を誘い、苦しげに殺して返り血を拭う彼女。
(空っぽの死体を担いでいて、血がないと人間の死体って軽いんだなぁと思いました)

その献身のおかげでフランクはどんどん元気に。

ネズミを磔にしたり、ジュリアがラリーとおっ始めようとするその背後でネズミを削ぎ切りにしたりと大はしゃぎです。
(ネズミが何したって言うんだ……)

( ・⌓・)<うわこいつ嫌いだわ〜〜

となったところで、ラリーの娘(ジュリアには義娘)であるカースティが本格参戦。
ヒロインはカースティになり、皮剥ぎスーツのフランクと出会って、ルマルシャンの箱を持ち出します。

 

【③後半はびっくりハウス】
ノリで箱を解いてしまうカースティ。(そんな得体の知れないものをいじくるなよ)

セノバイトたちが彼女の前に現れ、

 

ピンヘッド:「快楽の領域を広げる案内人」

 

と自己紹介して、「快感と痛みは紙一重だしこの苦しみを耐えれば悦びもひとしおだよ🤗」と、魔界で拷問を受けるよう強います。

しかしカースティは強かった。
フランクを脱走者だとチクり、自分の身代わりに連れていけと交渉したり、
クローゼットに隠れていると死体が倒れてきて、胸や腕にウジがボロボロ落ちてきたのに叫ばなかった。(いや死体をそのままで収納すな)

キモの座ったオンナでした。(好き)

対して父親兼夫のラリーが可哀想すぎた。
なんと兄であるフランクに殺されて皮を剥がれました。

ジュリアは大喜びでフランクと一試合します。物の例えです。
愛してはいてもさすがに皮剥ぎスーツと寝る気にはなれなかったようです。それ外見は殺した旦那だがいいのか。

NTR通り越したNTR(乗っ取り)です。この人でなし!

カースティはフランクと戦い、セノバイトたちに引き合わせます。
ここからがギミックだらけです。
フランクを捕えんと走る鎖、彼の肉に突き刺さるフック、爆散する顔面と肉体。
壁から血が流れ、自動でドアが開閉し、ピカピカ光りまくり、『ポルターガイスト』ばりに大暴れする家。

追いかけてくるセノバイトたち、扉を開けたらバターボール、箱を使いこなして逃げるカースティ。

びっくりハウス感があって面白かったです!😚

ラストは一瞬で全焼した家を前に、カースティは箱を燃やそうとしますが、
謎のヒゲもじゃ男がそれを拾い、🦕プテラノドン🦅 みたいな姿になって飛んで持っていきました。

意外とファンタスティックな映画でした。

(箱で始まって箱で終わるところ大好きやで)

 

【まとめ:究極の快楽って】
セノたちと発言とフランクの証言をもとに推察すると、

究極の快楽=SM

という公式が成立しました。
(そんな賢いものではない)

しかしまあSMならSMでもいいんですけど、それならちゃんと相手(カースティ)の了解を得ないとねってセノたちに言いたいです。

それはそれとしてフランクに腹が立った93分でした。

殺した弟・ラリーのことを『生ける屍』と抜かしたのが特に。
いやラリーは立派な人間だろうよ。
ちゃんと働いて家を持ち、妻子を養い、毎日を生きている社会人で大人だった。

それに引き換えフランクがやったことは、弟の嫁を寝取って事後に「物足りない」とほざき、ドスケベを求めて肉体を失ったくせにまた女を利用して最後はポイ捨てした外道の所業。

加えて、父親を心から心配するカースティをニヤニヤ見下ろす嫌らしさ。

さらに肉体が爆散する寸前の捨て台詞が、

 

(顔面をフックで引っ張られながらも舌をペロォっとして)
フランク:「キリストは泣き、俺は復活する」

 

(# ゚Д゚)<いや貴様何様〜〜〜〜???

性欲もコントロールできない人間が何を抜かすのだ。
同列に並べるな恥知らず。

そんな輩には究極の快楽っつーか至高の喜びは絶対に得られん、と断言します。
そういうものは、毎日をきちんと生きた者しか味わえないものです。

喜びを受容できる器を自分で育てないとどんな快楽も幸福も意味がない。
労働後のビールが死ぬほど美味いように。
日々のしんどさを耐え忍んだからこそ推しの現場が輝くように!

つまり人生ってメリハリが大事。
(また変な〆で終わる)

 

 

次回は12月4日月曜日、
2023年制作、日本の子ども向けホラーアニメの大人版因習系家族愛ホラー、
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の話をします。

( ・⌓・)<12月……?

 

 

鳥谷綾斗

映画/セブン

アマプラで観たホラー映画です。
1995年制作、アメリカのサイコサスペンスです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
定年を1週間後に控えたサマセット刑事は、新人のミルズと組むことになった。
彼らは、肥満体の男が内臓破裂して死んだ現場に呼ばれる。
だが被害者は、何者かに銃で脅され無理やり食事させられていた。
7つの大罪』になぞらえた連続殺人の始まりだった。

 

【ひとこと感想】
見る人によって解釈が驚くほど異なる、陰鬱な現実世界への叫び。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①実はシンプルなプロット
②殺人鬼ジョン・ドゥ
③トレイシーの死

 

【①実はシンプルなプロット】
名作のプロットは大体シンプルという法則(?)があります。

この作品も、

①殺人事件が起こる
②刑事が捜査する
③ヒントを得て殺人犯の正体に迫る
④直接対決する

お手本のような起承転結のストーリーラインで、映画史に残った傑作となった理由は、『冒頭の衝撃的なグロさ』。
そして『衝撃的な結末』。『さらにそれに付随する答えが難しい・人によって異なるテーマ』の2点かと思います。

ネットでいろんな感想を漁ると、ほんっとーーーーに色んな意見があります。
最悪のバッドエンドという人がいればハッピーエンドという人も。
ただ、7つの大罪や原罪という考えに馴染みがない、無宗教だったり異教徒だったりするとピンと来ず、『?』になる傾向。

(ちなみに自分は神道寄りです。神社検定受けました⛩️)

(加えて、生き物が生きるには多かれ少なかれ犠牲が必須、自分も何かや誰かを犠牲にしていて、何かや誰かの犠牲になっているという塩梅の思想です🦗)

そんなわけで。
ピンと来ない勢の人は、犯人であるジョン・ドゥがいかに無茶苦茶なのかという視点で楽しむと良いかと。

 

【②殺人犯ジョン・ドゥ】
ジョン・ドゥ。英語で言うところの名無しの権兵衛。
彼の何が無茶苦茶って、殺人方法です。

その犯行一覧をテンポよく紹介していきましょう。
BGMはロシア民謡の『1週間』です。
(映画の内容も画面もあまりに暗いので明るくいきたい)

月曜日は『暴食』で殺す〜
肥満男の手足を細いワイヤーで縛って銃で脅して12時間以上食わせ、最後は腹を蹴って内臓破裂

(スパゲティに顔を埋めた死体というインパクト。大量の虫がわき、血文字ではなくあえて脂でメッセージを残す、世界一有名な殺人現場の冒頭かと。サイコ殺人映画の原点にして頂点やでほんま)

火曜日は『強欲』で殺す〜
悪徳弁護士に自身の肉を1ポンド分切って秤に載せさせ殺す〜

(合いの手→ \ベニスの商人!/)

水曜日は特になし〜

木曜日は『怠惰』で殺す〜
前科者を1年前に拉致して左手首を切断してベッドに拘束して観察したので死なず〜

(舌を噛み切っても人間って死なないもんだ)

金曜日は特になし〜

土曜日は『色欲』で殺す〜
娼婦を客の男に装着させたナイフ付きパンツで殺す〜

日曜日は『高慢』で殺す〜
モデルの顔を傷つけてまだ生きていきたいなら助けを求めて嫌なら自殺しろと殺す〜

……。

( ・ω・)<創意工夫が凄まじすぎんか???

このように、突飛な発想と独自性を持ち、それを実行に移す常人では考えられないほどの行動力、あと冗談のような忍耐強さを持つのです。

ターゲットや刑事を調べたメモを部屋中に貼るのは殺人鬼あるあるですが。
びっしり書き込んだ250頁のノートが2,000冊あったり、
『暴食』では、食事の追加のために二度も買い物に行ったり、
『怠惰』では標的の尿道に管を通したり、薬物投与や床ずれ防止のために抗生物質まで打つなど、

( ・ω・)<妙な生活感がある……

犯行自体はエキセントリックなのに、細部が細やかで変なリアリティがある。

そんなおもしれー殺人犯なのです、

 

【③トレイシーの死】
これまで、『暴食』『強欲』『怠惰』『色欲』『高慢』の罪を犯した(と彼基準で判断)者を 贖罪 のために殺してきたジョン・ドゥですが。

残る『嫉妬』と『憤怒』を背負う罪人は、
ジョン・ドゥと――ミルズ刑事でした。

ミルズ刑事が築く、平凡であたたかな家庭に嫉妬したジョン・ドゥは、妻のトレイシーを殺害し、その生首を劇的に見せつけます。

ミルズ刑事を憤怒で染め上げ、自分を殺させるために。
サマセット刑事は「やめろ。殺したらそいつの勝ちになる」と止めますが、

 

ミルズ:「Oh, God……」

 

そう何度もつぶやき、引鉄を引きました。

という、「世の中は最悪だと思いたくない」ミルズ刑事に、最低最悪な世の中を突きつけるラストでした――が。

ものすごくモヤモヤしました。

トレイシーの死に対して、です。

これまでの被害者はそれぞれの罪を犯したから、それを贖わせるために殺した。
逆に言えば、罪を贖った被害者たちは救済されたのです。
ジョン・ドゥだってそうです。『嫉妬』の罪を犯したからミルズ刑事に殺されて、それで救われた。

だとしたらトレイシーの死は、一体何なんだ?

他の死のように贖罪のためではなく、ただ、ミルズ刑事に『憤怒』の罪を犯させるために無惨に、無意味に殺されたのか?

冗談じゃない。
彼女は夫のおまけじゃない。

トレイシーは立派な人だった。
地下鉄が近くて振動がすんごい家で、大きなワンちゃんを育てて、ちゃんと妻として家を守っていた。
妊娠したときは悩んでサマセット刑事に相談した。
こんなひどい世の中で子どもを産んでいいのか。真剣に子どものことを想って悩んでいた。

「もし産むのなら、思いっきり甘やかしてやれ」という助言をもらって、おそらくは覚悟を決めた。

そんな彼女が、イカれた殺人鬼のしょうもない願望のためなんかに殺されていいはずがない。
まるで舞台装置や映画の動機付けのように、殺されていいはずがないんです。

だから自分は、ミルズ刑事が撃った弾丸はトレイシーのためのものだと思いたい。
彼女の死が重く悲しいものである証こそ、ミルズ刑事の復讐なのだと。

決してジョン・ドゥなんかのためではない。

勝ちも負けもない。殉教者きどりの殺人犯など、最初からお呼びじゃない。
ミルズ刑事の目に映っていたのは、愛する妻だけです。

……と、
ミルズ刑事に負けないくらい理想主義のトリは思うのです。🎩🦉

 

【まとめ:戦う価値はある世界で】
連行されるミルズ刑事を見届け、サマセット刑事はひとり考えます。

 

サマセット:ヘミングウェイが書いてた。
      この世はすばらしい。戦う価値がある
      後の部分は賛成だ。

 

……サマさん。(※1)

ヘドロの中でも生きていくのかサマさん。
無関心が美徳とされる世の中で。
アパートの一室で1年間も世にも恐ろしい拷問が起こっていたのに、「理想的な店子だと思っていた」と言われる世の中で。

生まれながら罪を背負っているとかホザかれる世界で。

長く刑事として働いてきて、犯人逮捕ではなく裁判のための捜査をしている、世間はヒーローを求めていないと疲弊しきった、倦んでしまっていたサマさんなのに。

せめて戦うくらいの価値はあると、一筋の光に手を伸ばすことに決めたのか。
生まれ落ちてしまったから。

私はあなたに賛成だ、サマさん。

(※1)鑑賞中、ずっとそう呼んでました)

そんな感じです。
いつか刑期を終えたミルさんには、決して第二のジョン・ドゥなんぞにはならず、サマさんと一緒に戦ってほしい。

ていうかジョン・ドゥよ。

おまえその忍耐強さを前向きに活かせたら、絶対にひとかどの人物になれたぞ。

ジョン・ドゥよ。
君がそんな危険思想になったのは、君が嫌なものばかり見ようとしたからだ。
見方を変えれば、一杯の水さえ、公園の散歩さえ尊く思えるものなんだ。

(しかしそう思えてもデスゲを仕掛けることを選んだ犯罪者はいますが🧩)

では最後に、この世に数多ある『セブン』の感想の中で、おそらくもっとも身も蓋もないツッコミを言います。

平凡な家庭に嫉妬したなら人殺しなんかしてないで婚活しなさいよ。

愛するより殴る方が楽。本当にそうですね。(〆)

 

 

次回は11月27日月曜日、
1987年制作、イギリスの(スタイリッシュデザインな)オカルトホラー、
ヘル・レイザー』の話をします。

 

( ・ω・)<原稿のため1週おやすみ!

 

鳥谷綾斗

映画/クワイエット・プレイス

アマプラで観たホラー映画です。
2018年制作、アメリカのディストピアヒューマンドラマホラーです。

 

 

 


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【あらすじ】
隕石と共にやってきた巨大な地球外生物により、人類は壊滅しかけていた。
『奴ら』は盲目であり聴覚が超鋭敏で、音を立てた人間を殺していく。
5人家族のアボット一家は、ほぼ音を立てずに生活していたが、末っ子のボーが『奴ら』に殺されてしまう。
それから約1年後。母親のイヴリンは出産を間近に控えていた。

 

【ひとこと感想】
殺人エイリアンがそばにいても人は暮らしていく。90分間息を潜める緊張型ホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①そこにあったのは『暮らし』
②そこにあったのは『世界一高難度の出産』
③そこにあったのは『父の愛』

 

【①そこにあったのは『暮らし』】
こちらの作品、なんと分かりやすい説明ターンがありません。

一言もしゃべらず手話で会話をして、戸棚に薬瓶を緊張しながら置くなど、『動作』『行動』をただひたすら描写します。
説明の補助となるのは、新聞のそこには【音だ!】【奴らは音に反応する】などの情報。

トドメとなるのは、アボット一家の大きな傷となる末っ子ボーの死。
サイレント映画のような雰囲気の中、突如鳴る、『ピロロロロロロロロ!!!』

(難聴の長女リーガンがおもちゃを持っていけない弟を思って渡しました。電池さえなければいいと思って。でも4歳ってスゲー賢いのでこっそり持っていった)

巨大な蜘蛛めいた化け物が、すばやい動きでボーを連れ去ります。

小さい子が亡くなることにダメージを受けつつ、映画ならではの手法に憧れちまいます。
(小説では難しいんだよぉ)

アボット一家による音を出さないことに特化した『暮らし』は、とにかく工夫がすごい。
食器音も控えるために、お皿代わりにレタス。(サムギョプサル的な)
双六も布製で、愛を伝えるダンスの音楽はイヤホンを共有して。

特に工夫を凝らしていた(?)のは、生まれてくる赤ちゃんを育てる備え。
地下室に酸素ボンベを用意し、ベビーベッドには木の蓋。

怒り心頭になっても怒鳴ることも物を投げて八つ当たりすることもできない彼らの生活に、釘付けになりました。

 

【② そこにあったのは『世界一高難度の出産』】
いよいよ出産間近ですが、映画なのでタイミングが最&悪です。

夫のリーと長男マーカスが魚を獲りに川へ。
リーガンは父娘の諍いがあり、弟の墓参りへ。

しかし近所で、妻に先立たれた老人が 「アーーーー!!!」 と叫び、『奴ら』を呼んで自殺。

さらにイヴリンは破水し、階段でクギを踏んで転びます。

( ・⌓・)<何故クギを抜かない!?!?!?

(思わず叫んだ)(たぶん自分はいの一番で殺されると思った)

イヴリンは自力でバスタブへ行き、出産開始。
家の中に入り込んだ『奴ら』が背後にいる中、必死でいきみます。
サイレント出産です。そんな単語がこの世にあるのか。
見ているこっちが息を詰める中、生まれた子はボーと同じ男の子でした。

 

アボット夫婦:「It’s a boy.」

 

このセリフで、「ああこの人たちは、これまでに何度大きな声を出そうとしたんだろう」などと考えてしまいました。

 

【③そこにあったのは『父の愛』】
出産という大イベントを終えてもピンチは続きます。映画なので。

気づいたら育児ルームが浸水していて、『奴ら』がそこにいた時は、「いやおる〜〜めっちゃおる〜〜」と頭を抱えました。
(家庭内害虫を見かけた時とほぼ同じ反応)

外で再会したリーガンとマーカスが、穀物用のサイロに落ちて、『奴ら』に襲われてとっさにドアを被った時は、「ナイスコンビネーション!」を膝を打ちました。
(緊張感とスカッと感のバランスがべらぼうに良いな!)

なんとか対処してきた一家ですが、
とうとう父のリーが、家族のために我が身を犠牲にします。

ボーのことで父娘の間には確執がありました。

 

リー:「お前を愛してる。ずっと変わらずに」

 

その言葉を残し、覚悟の断末魔をあげてリーは守り抜きます。

けれど父親の深い愛は、それだけではなかったのです。

家に帰ったリーガンは、父の部屋で愕然となります。
難聴である自分のために、父は補聴器の改良を続けていた。

 

リー:「うまくいくまで何度でも試す」

 

生前のその言葉どおりに。
リーはあきらめなかった。何故なら彼は父親だから。
少しでも娘の暮らしが快適になるように、手を動かしていた。

あきらめなかったことにこそ、何より『愛』を感じました。

最後に伝えられてよかったと、改めて思いました。

 

【まとめ:暮らし=『生きていく』という意思】
さらにそこから『奴ら』の弱点を探り当て、イヴリンは化け物の頭をショットガンで吹っ飛ばすことに成功します。

(たぶん弱点を突かれて弱体化したかと)

(これ以前にも、『奴ら』を駆逐しようと武器は使っていただろうし)

(ていうか出産直後なのにスゲーな母親)

銃撃音を聞きつけ、『奴ら』が集まってきます。

マーカスが生まれたばかりの弟を抱きしめる傍で、
母と娘はお互いを見合って、戦う覚悟を決めます。

( ・ω・)<かっこいい……

と、映画らしいクールなラストでしたが、やっぱり印象的なのは一家の工夫だらけの『暮らし』。

化け物が襲来して常に監視状態な中でも、
人間は寝て食べて、試行錯誤して、遊んで算数を勉強してすれ違って嘆いて、子どもだって授かる。

暮らしを整える=生活していくというのは、
そのまま『生きていく』という意思なのだな、と思いました。
(人間の生命力というか)

( ・ω・)<生活力って生命力だ。

 

次回は11月13日月曜日、
1995年制作、アメリカのサイコサスペンスホラー、
『セブン』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

映画/リゾートバイト

映画館で観たホラー映画です。
2023年制作、日本の都市伝説ごった煮Jホラーです。

 

シアタス心斎橋で観てきました!

 

リゾートバイト

個人的にこちら、オススメの映画館です。
座席同士に仕切りがあって、あまりお隣を気にせずに映画の世界に没頭できます🥳

 

resortbeit.com

 

 


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【あらすじ】
引っ込み思案な大学生・桜は、幼なじみの聡と希美に、島のリゾート地でバイトを始める。
楽しく過ごしていたが、先輩の岩崎に肝だめしに誘われる。
女将の真樹子が、使用不可の2階へ食事を運んでいたらしい。
2階の閉じられた部屋に入ってから、桜たちの身に恐ろしい出来事が次々と起こる。

 

【ひとこと感想】
ああ来るとは思わなかったしこう来るとは思えなかったし、最後はそう来たかと膝を打った、予測不能青春闇鍋ホラー。

 

※全力ネタバレです。
※未鑑賞の方は、今すぐブラウザを閉じて映画館に行ってくださいまじで。

 

 

【3つのポイント】
①ああ来るとは思わなかった=八尺さま。
②こう来るとは思わなかった=憑依TS。
③そう来たかと思った=Jホラー的ラスト。

 

【①ああ来るとは思わなかった=八尺さま】
冒頭は完全に、ムズキュン青春ものです。
野いちごのように甘酸っぱいです。( ⸝⸝ ⌓ ⸝⸝ )キャッ 🫶

船の上、スマホのサーキットゲーム(圧倒的な伏線み)で無双する希美の横で、桜は海を眺める聡を見つめます。
キラキラとした背景に、ああ、恋をしているんだと分かる演出。
バイトの合間にビーチバレーや花火。「桜と聡をくっつけるのが私の使命なの!」という希美。それを受けて、少しずつ距離を縮めるふたり。
もう二度と戻れない『あの頃』を想い、( ⸝⸝ ω ⸝⸝ )キュン🫰

そんな中、いい感じにウザいオッサン 先輩の岩崎が提案した肝だめし。

(   º △ º )<やめろやめろ! 試すな肝を!

そのまま自然にくっつくのを待てとか磁石みたいなことを思いましたが、肝を試さねばホラーにならないというもの。

聡は、まんまと女将さんが謎行動をとっていた2階へ上がります。
ここからはホラー大放出。
無意識で腐った食べ物を貪る姿は、生理的にクるものがあってグッときました。

幽霊が見えてパニクる聡のために、桜も2階へ。
そこには鏡台に髪の毛と爪と、『禁后』と書かれた紙。
この時点で、

( ・ω・)<ん?

となりました。
まんまと桜も呪われ、子どもの幽霊たちに追いかけ回されます。
そして聡は、幽霊に囲まれ、目の前に現れた化け物を見上げて倒れてしまいます。

……ぽっ、ぽっ、ぽ…… と声を出す化け物、それは――

Σ( ・⌓・)<八尺様やないかい!

リゾバイだっつってんのに何故八尺様。このコラボは聞いていない。
いやまあ2階に仕舞われていたが『禁后(パンドラと読む)』な時点で予感はバリバリでしたが。

そんなわけで、2階にあったのは海で亡くなった子どもを復活させる儀式であり、真の敵は八尺様だと判明しました。
桜は旅館の無愛想な主人に連れられ、ある『住職』のもとへ。

 

【②こう来るとは思わなかった=憑依TS】
そのあとは『朝までここから出るな』の流れです。
八尺様とリゾバイ、共通の儀式ですね。
(発語と飲食と睡眠厳禁がつらいやつ)
(読書はありですか、京極夏彦のレンガ本なら朝までいけるのですがと言いたくなる)

のちの展開も予想どおり。桜は声真似で騙され、まんまと扉を開けて八尺様に魂を取られました。
(声真似で嵌めてくる点は事前に注意してほしい、と切に思う)(※1)

魂を取られ、抜け殻になった桜と聡。
二人を助けるためには、本人の体が魂を取り返しにいかなくてはならない。
そのために、希美が桜の体に、住職が聡の体に憑依することになりました。

ですがどういうわけか、(※2)

希美の魂は岩崎の体に、
岩崎の魂は聡の体に、

そして肝心の桜の体には、住職の魂が憑依しました。

( ゚∀゚)<うまいことやったな〜〜〜〜!!

心の中でスタオベしました。

さてここで、邦画ホラーにおけるしょっぱい話を。
一部を除外して邦画ホラーとは、『主に新人の俳優を売り出すもの』なのです。

半ばで桜が倒れ、あわや主役交代になってしまうところを、まさかの憑依TS(性転換)で解決!

素晴らしい手腕! これぞプロの技術!👏
あと単純に祓い屋女子かっこいい!

その後、見てはいけないイベント、八尺様とのカーチェイス(伏線回収✌️)――この辺は絵面がどえらい面白かったのでぜひ劇場でご覧ください――を経てのラストバトル。

 

桜(中の人は住職):「破ァーー!!」

 

( >ω<)<寺生まれのTさーーーーん!

都市伝説三部作、ラストでやっと出てきた、寺生まれってスゴイ一般人(?)。
いよっ、待ってましたって気持ちです☺️

まさかの憑依T(てぃー)S(さん)でした☺️

 

【③そう来たかと思った=Jホラー的ラスト】
無事に旅館の2階にたどり着き、住職が経文を唱え、静かに夜が明けました。

部屋で荷造りする桜と聡。
変な感覚だね、と笑い合うふたり。

浜辺では希美と岩崎がその後のことを語ります。
女将さんは客を別の宿に移動させてから、音信不通になったこと。
ついでに岩崎は希美から桜に乗り換える宣言。(※世界一どうでもいい)
自分がフラれた感に納得いかない希美は、旅館に戻ります。

そこには、

 

聡:「ブリは醤油なしで食べた方がおいしいよね!」(※意訳)

 

刺身を生臭いと言って決して食べなかった聡が、うまそうにブリを食べる姿が。

それに疑問を持たず、笑っている桜。

ふたりは『別人のように』なっていました。

一方、Tさん 住職の元には旅館の主人と、行方知れずのはずの女将さんが。
彼らは同志のように、お互いを労り合います。
早くに子どもを亡くした彼らは、願いが叶った喜びを分かち合います。

八尺様に連れ去られた娘と息子の魂が、
別の人間の体を宿り、再び現世に戻ってきたことを。

そして旅館の1階、『桜と聡』がはしゃぐその真上で、
2階の障子には、ふたつの影 が映りました。

 

桜:「……たすけて……」

 

【まとめ:制作側の思い、受け取ったぜ🥲】
このオチには痺れました。
何よりJホラーらしい、後味の悪い結末。

『きさらぎ駅』と同じ系譜ですね。
都市伝説や恐ろしい怪異すら利用する、人間の業です。

地味に、元ネタの穴である『(※1)』が補強された点(故意に教えず、八尺様に魂を抜かせた)と、

(※2)』が予想外のアクシデントではなかった点、
足の怪我をしていたはずの旅館の主人が普通に歩いたという、映画ならではの種明かし。

最高でした!!!

何よりサービス精神に感動しました。

ホラーに限らず、昨今は物語にスピーディーさを求めます。
ホラー特有の間=もったいぶる感じは、「ダレる」と評されることもある、悲しい時代です。

そこでゲームっぽい要素や画面作りを盛り込み、最後まで絶対に飽きさせない姿勢をバーンと。

でもラストは、きっちりJホラーであることを明示する。

世界中のホラー好きを唸らせたJホラーは、
まだ! ここに! 『生きている』と!

制作側の熱き思い、自分はしっかりと受け取りました……!!
(※一方的に)
(※オタクのヒートアップした戯言です。妄想です)

🥲

ですが最後に一言、

希美が可哀想すぎん???

(岩崎の態度以外はめちゃくちゃ健気ないい子だったのに!)

 

 

次回は11月6日月曜日、
2018年制作、アメリカのサスペンスホラー、
クワイエット・プレイス』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

映画/マタンゴ

CATVで観たホラー映画です。
1963年制作、日本の特撮ホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
窓から都会のネオンが見える精神病棟の一室。
元心理学者の村井は、世にも恐ろしい体験を語り始める。
かつて彼は海で遭難し、友人たちと無人島に漂着したのだ。
そこには『マタンゴ』という巨大なキノコがあった。

 

【ひとこと感想】
『幸せ』の概念への自信を失う、キノコ人間の悪夢。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①最初の願いは『帰りたい』
②最初から提示された『食うべからず』
③最後の思いは『食えばよかった』

 

【①最初の願いは『帰りたい』】
のっけから『協力:星新一』の文字に驚きつつ。

元心理学者の村井が、遭難者グループの唯一の生き残りとして証言するところから始まります。

ここで余談。
この映画の美術セット、とんでもなく好きです。

冒頭から、窓の外は昭和レトロでポップなネオン。
対する精神科の一室は無機質な牢獄風。
古びた廃船に、キノコが支配する奥深い森。
全部悪い夢に出てきそうで、ある種の美しさがあります。


さて、最初のパートは大海原。
ナウでヤングな成功者たちが、よんせんまんえんのヨットで遊んでいます。

心理学者の村井、彼の教え子明子、船の持ち主で社長の笠井、歌手の麻美、作家の吉田、笠井の部下の作田、雇われ漁師の小山の7人です。
船長っぽくパイプを燻らせたり、ラララ〜と歌ったり、他人の女にコナをかけたり乱痴気騒ぎ。
(もうこの時点でイラっとします😇)
(ホラーですから必要な感情です😇)

天気が悪いのに引き返さず進んだら、案の定嵐が来て遭難。
たどり着いたのはあまりに静かな無人島。

身を寄せられそうな廃船はカビと胞子だらけ。
人が住んでいた様子なのに、出ていった形跡も死体すらない……

ここで物語の目的が判明しました。
要はサバイバルものです。脱出要素は弱めですが。
住処を整え、食べ物や水を集め、元いた快適な都会、『選ばれた』自分たちの本来の居場所に『帰りたい』――というのが目的です。

しかしそうはいかないのが人間というもの。

(ところでそのカビに覆われた廃船、パッと見がカレー粉とココアをまぶしてるみたいでした)

 

【②最初から提示された『食うべからず』】
意外だったのは、

 

マタンゴを食うな』

 

と最初から提示されている点。

戸棚を開けたら身の丈1メートルはありそうなマタンゴ。いやでかいなマタンゴ

核実験の影響を調査する過程で発見され、水爆実験の放射線によって変異したらしいマタンゴ。つまりゴジラの仲間かマタンゴ

先人たちが『マタンゴを食べたことで仲間が次々と消えた。だから食うな』と書いているにも関わらず――

彼らはマタンゴを食べました。

何故なら彼らは限界だったからです。
事前に耳にしたラジオで捜査は打ち切られたことを知り、船に残された食料はわずか、脱出しようにもヨットも船も壊れ、獣どころか鳥も寄りつかない島で、
真夜中になれば キノコを被った黒い人影 が現れ、自分たちを監視している。

空腹と不安で壊れた彼らは、缶詰を独占しようとする、実験用のアルコールを飲む、女をめぐって争う。

その延長線上に、『マタンゴを食うこと』を選んだのです。

 

【③最後の思いは『食えばよかった』】
雨が降り始め、7人は船に閉じ込められます。
反対に島内のマタンゴは、ムクムクと大きくなります。

限界を迎えた彼らは、一人、また一人とマタンゴを食べ、暴れ、命を落とします。

そして卑怯な手を使い、村井、明子、笠井に船を追い出された麻美。
彼女はひどく穏やかで妖艶な笑みを浮かべ、

 

麻美:「このキノコを食べるといつかキノコになるのよ」
   「でも一度食べたらやめられない」

 

そう囁き、笑い声が響くマタンゴの森へ誘います。
巨大化し、増殖するマタンゴは、突然むくっと立ち上がりました。
それはキノコの群生ではなく、マタンゴに寄生された人間でした。

残された村井と明子も諍いが絶えなくなり、
キノコ人間たちの襲撃を受け、再びマタンゴの森へ。

先に拉致された明子は、

 

明子:「先生ー!」

 

それはもう幸せそうな、最高に可憐な笑みでマタンゴを食べていました。

そのとき、思いました。

この人たちは、マタンゴを食う前から人間をやめたんだな。
いつか訪れる死を想う、想わずにはいられない人間であることがつらすぎて、マタンゴになることを選んだんだな。

そう選んだ人間の成れの果て=グロテスクな姿のキノコ人間たちが、アハハハ……フフフフフ…… と笑い声をあげて襲ってくる。
眩暈がするほどの悪夢でした。

そこから命からがら脱出した村井。
ですが彼は、『きちか“い』扱いされ、動物のように檻の中に閉じ込められ、医者たちに監視されました。

 

村井:「明子を愛してるならキノコを食うべきだった」
   「生きて帰って何になる(帰っても隔離されただけだった)」
   「あの島で暮らした方が幸せだったんです!」

 

そう訴えた村井の顔には、マタンゴが生えていました。

 

【まとめ:いつだって現代人は弱い】
この登場人物に対して、「弱い」というのは簡単です。

特に笠井の『弱さ』が際立っていました。
社長として堂々と偉そうに生きていたのに、食料も探さず船から出ようともしなかった。

 

笠井:「僕はもうダメだ」
村井:「君は食わなくても生きていけると思ってるのか。
    どうして君は自分で動こうとしないんだ!」
笠井:「いっそ殺してくれ。僕は、自分で死ぬこともできない人間だ」

 

しのごの言わずに動けっつってるのにこの返し。

(その直前に、笠井にウミガメの卵を1万円で売りつけていた小山があっさり死んだのも、彼のダメージになったのかもしれませんが)

(小山はたくましかった。この状況でも金を集め、「俺はこの金を絶対に生き金にしてやるぜ💴」と意気込んでいた)

(こういうやつは大好きですが、あっさり撃たれて死亡しました。彼の死体に散らばった金が切ない)

笠井アカンな、と呆れました。
それに対して「貴様一人くらい何とでもしてやるよ」と言える村井がかっこいいです。

でも自身に置き換えると、そう断じることはできなくなります。

たとえば自分は、出先がトイレが綺麗じゃない際は、つい我慢しようかなと思ってしまいます。
トイレなんて用を足せれば十分なのに、そこに快適さを求めてしまう。それを当然だと思ってしまう。
夏場は毎日入浴したい。毎日洗濯したい。
それを取り上げられたら――こんな感じになるんじゃないかなぁと予想するのです。

だからちょっと耳が痛い😨

あの状況なら、
マタンゴを食う方が幸せなのかもしれないと思う。
『幸せ』というものの概念が揺らぐような、そんな作品でした。

 

 

次回は10月30日月曜日、
2023年制作、日本の都市伝説闇鍋Jホラー、
『リゾートバイト』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗

【🥳商業お知らせ🥳】「5分後にゾッとするラスト」発売日!

秋の夜長にこんばんは。

( ・ω・)<鳥谷です。

最近は、「で、最終的に『SAW』の最新作の日本公開はいつなん???」と検索しまくる日々です。
『リゾートバイト』は来週の月曜日に映画館に行く予定です!

 

さて本日、10月18日。
河出書房新社さま×エブリスタさま刊行の5分シリーズ最新作、


『5分後にゾッとするラスト』の発売日です!

www.kawade.co.jp

 

estar.jp

 

( ・ヮ・)<おめでとうございまーす!!!🎉🎉🎉


地元の本屋さんに行ったところ、面置きされていました!
ありがたいです!
たくさんの方に届くよう、心からお祈りしております!


学園もの幽霊ホラー、🪢『首吊りトイレ』🚽

ホラーが持つ『恐ろしさの裏にある哀しみ』をテーマにしました。

ご近所サイコホラー、👶『タダで使える託児所(笑)』🩸
こちらは、『誰もが持つ小さな悪意と、それを遥かに凌ぐ巨大な悪意』をテーマに。


それぞれ、楽しく苦しく書かせていただきました。
担当してくださった編集さんに、改めて御礼申し上げます。

お手に取ってくだされば幸いです!
ハッピーホラートゥーユー!(?)

 

以下は、ツイッターことXでの宣伝用です。
(宣伝用に頂いた表紙画像を使わせていただきました)

 

5分後にゾッとするラスト

 

これは単なるファンレター


以上、
『単なるホラー好き。』でした!

 

 

鳥谷綾斗