人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/ヒッチャー

アマプラで観たホラー映画です。
1986年制作、アメリカの閉塞的サイコサスペンスです。

 

ヒッチャー(1986)(字幕版)

ヒッチャー(1986)(字幕版)

  • C・トーマス・ハウエル
Amazon

 

 


www.youtube.com

 

 

【あらすじ】
雨の日のテキサス、高速道路でジムはヒッチハイカーの男性を乗せる。
だがジョン・ライダーと名乗った男性は自らが殺人者であることを告げ、ジムにナイフを突きつける。
ジムはとっさに車から叩き出すが、以降、ジョン・ライダーは執拗に彼を追い詰める。

 

【ひとこと感想】
開放感と閉塞感が混在する、極めて特殊なBLみ感じるサスペンス。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①開放されているのに閉塞的
②神出鬼没、不可解なジョン・ライダー
③彼を殺せるのは彼だけ

 

【①開放されているのに閉塞的】
本作の始まりは、車の中です。

車とは走る密室。
そんな場所で二人きりになった相手がもし殺人犯だったら……という、世にも恐ろしい『想像』から始まります。

雨の音も相まって、主人公のジムは運転中なのについウトウト。
このままじゃ事故ると危惧した彼は、ヒッチハイクのサイン(👍)を出す男性=ジョン・ライダーを乗っけます。

「目的地は?」と尋ねても「あるとも」と答えられ、絶妙にイラッとする言動をくりかえされる。

業を煮やして「もう降りろ」と言っても聞かず、ジムの前に車に乗せた運転手のことを話します。

 

ジョン:「そいつの両足、手、喉も切った」(※意訳)
    「おまえも同じ目に遭う」

 

そしてジムにナイフを向け、脅します。

 

ジョン:「こう言え、こうだ、〝I want to die 〟」

 

これに対し、ジムは非常に賢かった。とっさの機転でジョンを車から叩き出すのです。

 

ジム:「イエーーーー✌︎('ω')✌︎ーーーーイ!!」

 

元気にはしゃぎますが、ここからが真の地獄の始まり。
道路に叩きつけられてなお、殺人犯ジョン・ライダーはひたすらジムを追いかける。

給油所やレストラン、警察の留置所ですら安住の地になりえない。

逃げられない。

その一点で、

『主人公は車の外にいるはずなのに閉塞感を覚える』

という、なんとも奇妙な心地に陥る。そんな映画です。

 

【②神出鬼没、不可解なジョン・ライダー】
さてこちらのジョン・ライダー、極めて神出鬼没でした。

創作サイコパスとは驚かせることに長けているものですが、彼は相当なタマです。

殺人系ヒッチハイカーをポイ捨てできて安堵した矢先、ジムの車はファミリーカーと並走。
幼い女の子と ☺️ほっこり☺️ なやりとりをしていると――

女の子の隣にあるクマちゃんのぬいぐるみから、ジョンライ(略した)がひょっこり出てきました。

ファミリーカーの家族を始末(子どもを巻き込むなコノヤロウ)するジョンライ。

廃墟のガソスタで、ジムに何故か車のキーを渡すジョンライ。

一旦姿を消したのに、また走行中に車で後ろから追突するジョンライ。

かと思いきやガソスタの車庫からバーンと壁をぶち抜いて出てきて、ガソリンをぶちまけて火をつけるジョンライ――

( ・⌓・)<何がしたいんジョンライ?

という疑問だらけです。

余裕で殺せるのに、何故かそうしない。

ジムは命からがら逃げ、ダイナーに逃げ込み、その店主(?)のナッシュと知り合います。
そして警察を呼びますが、ジョンライの策略(身分証を入れ替え、凶器のナイフを忍ばされた)により、逆に逮捕されます。

ここでジムの『敵』に警察が増えたのが面白いな〜と思いました。

ところがどっこい。
ジムが留置所で寝ている間に、署内の保安官を皆殺しにするジョンライ。
(ワンちゃんが死体を舐めるのが結構きつかった)

ここからもやりたい放題ジョンライ。
ジムと警察のカーチェイスに乱入し、パトカーどころかヘリまで撃ち落とすジョンライ。
レストランで休むも、いつの間にか相席するジョンライ。

発信機とかつけられてんの? とか思う間もなく、ジムはナッシュとホテルで休みます。
束の間の休息を貪る二人。
しかし夜中、ジムがシャワーを浴びていると、

フツーにホテルの室内にいるジョンライ。

( ・⌓・)<神 出 鬼 没 !!!

なんかもういちいち出現が奇抜すぎて面白い。

あとジムに成り代わって、ナッシュの隣に寝転び、彼女の腕をスリスリするの最高に気持ち悪い。

そんな感じで、ジョンライはナッシュをさらいました。

 

【③彼を殺せるのは彼だけ】
ナッシュは両腕をトラックの荷台に縛りつけられ、両足はジョンライが運転するトレーラーにつなげられていました。

トレーラーを走らせれば、ナッシュの胴体は引きちぎれます。
つまり牛引きの刑です。よくもまあこんなの考えついたな。

ジョンライを射殺すればクラッチが外れてナッシュは死ぬ、どうにか説得するしかない――

しかしジョンライの要求は、およそジムには受け入れがたいものでした。

 

ジョン:「何もしないから俺に銃を向けろ」

 

自分を撃て、というもの。
ためらううちに説得は失敗に終わり、ナッシュは死亡、ジムは保護、ジョンライは逮捕されました。
彼の正体は警察でも分からず、護送車で連行されることになりましたが、ジムは断言します。

「ヤツは必ず逃げる」と。

ジムは、自分を助けてくれた警部の銃を奪い、再び車に乗り、 世にもおぞましい『ヒッチャー』と対峙するのです。

 

【まとめ:過激派だった】
ジョンライの正体と目的は、最後まで明言されませんでした。

けれど彼は、最初から言っていました。

 

ジョン:「俺を止めてくれ」

 

そうです。ジョンライの目的は、ジムに殺されること。
何故ジムだったのか。
おそらく、自分を返り討ちにしたからでしょう。

この男こそ、自分を殺すにふさわしい、あるいは自分を殺せる存在だと。

そんな闇色の泥を凝らせたような願望が、執着が、何人もの人間を巻き込んだ――

そう解釈してから、ひとつの所感が浮かびました。

これは。
極めて特殊なボーイズラブではないか……?

🧐

いやBLというより昔のJuneっつうか耽美文学の波動を感じる。
この、たった一人の存在しか見えていなくて周囲を巻き込もうが世界が滅びようが知ったこっちゃない感じが。
(※個人の感想です)

当然、そっこーで思い直しました。
いやいや、名作と名高い映画にそんな俗な感想を抱くなんて、と。

ところがどっこい。
ナッシュが死んでしまい、この所感は正しいのではと思い始めました。

ナッシュ、別に死ぬ必要がなさすぎる。
フツーにギリギリで助かって、病院に運ばれて退場でも良いような。

だってめっちゃ善人ですよナッシュ。
ほぼ関係ないのにジムを助けてくれましたよ。

こんな健気なヒロインを殺す……
おそらくジムにジョンライを殺させるため=ジョンライの願いを叶えるため……

( ・⌓・)<過激派腐女子の思想やん……

という身も蓋もないというか俗すぎる感想で〆。(謎)

 

 

次回は5月20日 5月27日月曜日、
1985年制作、イタリアのスプラッタホラー、
『デモンズ』の話をします。

 

( ・ω・)<そろそろモツが見たい。

 

鳥谷綾斗