アマプラで観たホラー映画です。
2018年制作、アメリカのディストピアヒューマンドラマホラーです。
【あらすじ】
隕石と共にやってきた巨大な地球外生物により、人類は壊滅しかけていた。
『奴ら』は盲目であり聴覚が超鋭敏で、音を立てた人間を殺していく。
5人家族のアボット一家は、ほぼ音を立てずに生活していたが、末っ子のボーが『奴ら』に殺されてしまう。
それから約1年後。母親のイヴリンは出産を間近に控えていた。
【ひとこと感想】
殺人エイリアンがそばにいても人は暮らしていく。90分間息を潜める緊張型ホラー。
※全力ネタバレです。
【3つのポイント】
①そこにあったのは『暮らし』
②そこにあったのは『世界一高難度の出産』
③そこにあったのは『父の愛』
【①そこにあったのは『暮らし』】
こちらの作品、なんと分かりやすい説明ターンがありません。
一言もしゃべらず手話で会話をして、戸棚に薬瓶を緊張しながら置くなど、『動作』『行動』をただひたすら描写します。
説明の補助となるのは、新聞のそこには【音だ!】【奴らは音に反応する】などの情報。
トドメとなるのは、アボット一家の大きな傷となる末っ子ボーの死。
サイレント映画のような雰囲気の中、突如鳴る、『ピロロロロロロロロ!!!』
(難聴の長女リーガンがおもちゃを持っていけない弟を思って渡しました。電池さえなければいいと思って。でも4歳ってスゲー賢いのでこっそり持っていった)
巨大な蜘蛛めいた化け物が、すばやい動きでボーを連れ去ります。
小さい子が亡くなることにダメージを受けつつ、映画ならではの手法に憧れちまいます。
(小説では難しいんだよぉ)
アボット一家による音を出さないことに特化した『暮らし』は、とにかく工夫がすごい。
食器音も控えるために、お皿代わりにレタス。(サムギョプサル的な)
双六も布製で、愛を伝えるダンスの音楽はイヤホンを共有して。
特に工夫を凝らしていた(?)のは、生まれてくる赤ちゃんを育てる備え。
地下室に酸素ボンベを用意し、ベビーベッドには木の蓋。
怒り心頭になっても怒鳴ることも物を投げて八つ当たりすることもできない彼らの生活に、釘付けになりました。
【② そこにあったのは『世界一高難度の出産』】
いよいよ出産間近ですが、映画なのでタイミングが最&悪です。
夫のリーと長男マーカスが魚を獲りに川へ。
リーガンは父娘の諍いがあり、弟の墓参りへ。
しかし近所で、妻に先立たれた老人が 「アーーーー!!!」 と叫び、『奴ら』を呼んで自殺。
さらにイヴリンは破水し、階段でクギを踏んで転びます。
( ・⌓・)<何故クギを抜かない!?!?!?
(思わず叫んだ)(たぶん自分はいの一番で殺されると思った)
イヴリンは自力でバスタブへ行き、出産開始。
家の中に入り込んだ『奴ら』が背後にいる中、必死でいきみます。
サイレント出産です。そんな単語がこの世にあるのか。
見ているこっちが息を詰める中、生まれた子はボーと同じ男の子でした。
アボット夫婦:「It’s a boy.」
このセリフで、「ああこの人たちは、これまでに何度大きな声を出そうとしたんだろう」などと考えてしまいました。
【③そこにあったのは『父の愛』】
出産という大イベントを終えてもピンチは続きます。映画なので。
気づいたら育児ルームが浸水していて、『奴ら』がそこにいた時は、「いやおる〜〜めっちゃおる〜〜」と頭を抱えました。
(家庭内害虫を見かけた時とほぼ同じ反応)
外で再会したリーガンとマーカスが、穀物用のサイロに落ちて、『奴ら』に襲われてとっさにドアを被った時は、「ナイスコンビネーション!」を膝を打ちました。
(緊張感とスカッと感のバランスがべらぼうに良いな!)
なんとか対処してきた一家ですが、
とうとう父のリーが、家族のために我が身を犠牲にします。
ボーのことで父娘の間には確執がありました。
リー:「お前を愛してる。ずっと変わらずに」
その言葉を残し、覚悟の断末魔をあげてリーは守り抜きます。
けれど父親の深い愛は、それだけではなかったのです。
家に帰ったリーガンは、父の部屋で愕然となります。
難聴である自分のために、父は補聴器の改良を続けていた。
リー:「うまくいくまで何度でも試す」
生前のその言葉どおりに。
リーはあきらめなかった。何故なら彼は父親だから。
少しでも娘の暮らしが快適になるように、手を動かしていた。
あきらめなかったことにこそ、何より『愛』を感じました。
最後に伝えられてよかったと、改めて思いました。
【まとめ:暮らし=『生きていく』という意思】
さらにそこから『奴ら』の弱点を探り当て、イヴリンは化け物の頭をショットガンで吹っ飛ばすことに成功します。
(たぶん弱点を突かれて弱体化したかと)
(これ以前にも、『奴ら』を駆逐しようと武器は使っていただろうし)
(ていうか出産直後なのにスゲーな母親)
銃撃音を聞きつけ、『奴ら』が集まってきます。
マーカスが生まれたばかりの弟を抱きしめる傍で、
母と娘はお互いを見合って、戦う覚悟を決めます。
( ・ω・)<かっこいい……
と、映画らしいクールなラストでしたが、やっぱり印象的なのは一家の工夫だらけの『暮らし』。
化け物が襲来して常に監視状態な中でも、
人間は寝て食べて、試行錯誤して、遊んで算数を勉強してすれ違って嘆いて、子どもだって授かる。
暮らしを整える=生活していくというのは、
そのまま『生きていく』という意思なのだな、と思いました。
(人間の生命力というか)
( ・ω・)<生活力って生命力だ。
次回は11月13日月曜日、
1995年制作、アメリカのサイコサスペンスホラー、
『セブン』の話をします。
鳥谷綾斗