人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/女神の継承

ツタヤで借りたホラー映画です。
2021年制作、タイ・韓国合作の超自然的モキュメンタリーです。

 

 

女神の継承(字幕版)

女神の継承(字幕版)

  • ナリルヤ・グルモンコルペチ
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【あらすじ】
万物に精霊が宿るという信仰がある、タイ東北部のイーサン地方。
ある取材班は、霊媒師ニムを密着取材する。彼女は女神バヤンの依代だ。
取材中、ニムの姪・ミンに異変が起こる。
巫女の世代交代だとされたが、ミンはそれを拒む。
やがてミンは別人のように変貌する……

 

【ひとこと感想】
『世界の怖い夜』を5億倍怖くて陰湿にした、オカルトモキュメンタリー。

※全力ネタバレです。

※大注意
犬、赤子が死にます。

(茹で殺されますし食い殺されます)
(鑑賞中、「地雷踏み抜きよった……」とつぶやきました)

 

 

【3つのポイント】
①番組中盤は『お祓い』のターン
②「おわかりいただけただろうか」&カメラに突撃
③女神の不在

 

【①番組中盤は『お祓い』のターン】
『コンジアム』もそうでしたが、POVの作品を観るときは部屋を真っ暗にします。

なんならこれこそ正しい作法だと思っています。作品を100パーセント楽しむための😉

結果、死ぬほど怖かった。

鑑賞中、何度心臓を跳ね上げさせられて「バカヤロウ……」と声を出したことでしょう。

そうして凶悪なバッドエンドを目にした後、思いました。

( ・ω・)<これ『世界の怖い夜』だ……

 

ja.m.wikipedia.org


(現在は『絶恐映像 日本で一番コワい夜』など)

あの手の番組って、最初は本当にあった心霊写真や動画を流して、
中盤は『超自然的な存在(悪魔や邪霊)に憑依された人をエクソシスト霊媒師が祓う』ドキュメンタリーになりがちじゃないですか。

あの概念です。(?)

そんな解釈を見つけたら他の恐怖場面がどんどんソレに見えてきました。

 

【②「おわかりいただけただろうか」& カメラに突撃】
冒頭は、霊媒師ニムのインタビューから。

精霊信仰から始まり、ニムが女神バヤンの巫女であり、心霊医術も施すことなど。
ただしガン患者は治せないし、繕い仕事もしています。

そんなニムの姪っ子・ミン。姉であるノイの娘。

ミンは人事センターに働くごく普通のミニスカ女子でしたが(タイの会社ってミニスカ勤務OKなのか)、異変が起こり、徐々に人格すら変わっていきます。

頭痛が続き、血溜まりができるほどの経血が流れる。  
酒の量が増えて、被害妄想がひどくなり、暴力的な言動をとり、深夜の職場に男を連れ込んで行為に耽る。

ニムからミンへと巫女の世代交代が起ころうとしている、と最初は思われました。

( ・⌓・)<なんで良い精霊が取り憑くのにこんなんなるん?

という真っ当なツッコミが生まれます。
それもそのはず。
ミンに取り憑いたのは、女神ではなく、世にもおぞましい呪いだったのです。

それが判明してからが本題。ミン(に取り憑いた悪霊)フルスロットル。
真夜中に暴れるミンを監視するため、カメラを仕掛けます。

監視カメラはやはり怖い。臨場感が段違い。
映像特有のホラー演出。ここはぜひ真っ暗な部屋で見てもらいたい。

薄ぼんやりとした緑色の世界。
四つん這いでケモノめいた――狂犬のような動きをするミン。

1時間22分6秒、そして1時間25分あたりからやばいです。やばいんです。

特に秀逸なのが階段のシーン。
階段を上がる人物に注意を向けさせておいて……というもの。

瞬間的に浮かんだのが、「おわかりいただけただろうか」。
当然巻き戻して、もう一度ご覧いただかれました。(日本語崩壊)

さらに家から消えたミンと赤子を探すため、カメラは鬱蒼とした茂みの中へ。
ミンらしき後ろ姿を発見し、声をかけると――はい、予想できますね。

突進猛進してきます。🐗
やっぱりにほいちコワ夜やないかい。

 

【③女神の不在】
話が進むにつれて、ひとつの疑問が膨らみます。

女神バヤン何してんの?

ニムは、ミンを呪いから救おうと霊媒師仲間のサンティとお祓いの儀式をします。
しかし中途でニムは亡くなりました。

自身の依代すら助けない女神バヤン。
ずっと見守ってきた一族が、過去の悪行のせいで大勢から恨まれ、動物や植物の精霊にまで呪われ、全滅の危機を迎えているのに。

女神は沈黙を守るのみでした。
石像も壊されたので、もしかしたらあまり力が強くない神様だったのかと思いきや。

 

ニム:「バヤンが私の中にいるのか分からない」

 

最後のインタビューで、ニムという巫女は涙を流しました。

さらにニムは、自分の黒い車に、「この車は赤い」というシールを貼っていた。
これはタイの迷信で、『買ったばかりの車を占い師に見せて、「この色はいけない」と言われたら買い換えた方がいい』というものがあるそうです。
けれどそんなお金はない。だからシールを貼って場を凌ぐ、という俗習です。

普通なら、本当に彼女が霊媒師なら、シールなんて貼らなくても良いはずなのに。

彼女が祈りと感謝を捧げていた『女神』は、
何だったのでしょう。

彼女たちは何を、『信仰』すべきだったのでしょう。

 

【まとめ:面白いけれどおいそれとオススメできない】

①邦題が若干タイトル詐欺
(何ひとつ『女神』を継承していなかった。タイトルでミスリードやめなさい)
②犬と赤子が亡くなる。
(ていうか赤ちゃんの親はさっさとどこか別のところに避難しろよなんで危険物がいる家に留まり続けてんだよ)

というげっそりポイントはあれど、面白かったですし恐怖はばっちり味わえました。

ちなみに真相は、
ミンの父方の家系・ヤサンティア家は、大量虐殺をしていて、代々保険金目当てで放火をしたり犬肉販売をする犯罪者一族。
その恨みが集合して末代までの呪いとなった。
ラストは大敗北、霊媒師御一行も取材班も阿鼻叫喚。
(『ヤサンティア家』と書かれた呪術人形がまた禍々しい)

というか。

子孫に一族を根絶やしにさせるという発想が最高に陰湿。

これぞアジアンホラーです。不健全極まりない👍

では、最後に「それを言っちゃおしまい」なツッコミで〆ます。

 

撮影してる場合か。

 

(モキュメンタリーにおける最大のタブー)

(襲われる際に「そのカメラで殴れよぉ!」と何度泣いたことか)

 

 

次回は6月19日月曜日、
2022年制作、アメリカのプリティーな人形SFホラー、
『M3GAN』の話をします。

 

鳥谷綾斗