人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/NOPE

アマプラで観たホラー映画です。
2022年制作、アメリカのSFホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
父と妹と牧場を営むOJ。たまに調教した馬を映像制作現場に貸し出している。
ある日、彼の父親が、空から降ってきた5セント硬貨に衝突して死亡する。
空には謎の飛行物体が浮かんでいることに気づく。
妹のエメラルドはそれを撮影して一攫千金を狙うが……

 

【ひとこと感想】
テーマがつかみとりにくい、けれどしっかり(チンパンジーが)怖いSFホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①完璧に溶け込んだ『テーマ』
チンパンジーが怖い
③ノープな真相

 

【①完璧に溶け込んだ『テーマ』】
映画含む『作品』というものには

テーマ

が必要です。

脚本術の本によると、『作品がアイスコーヒーだとして、テーマとは角砂糖ではなくガムシロップであるべきだ』とのこと。
分かりやすく主張してはいけない、ということですね。

さて本作の監督、ジョーダン・ピール氏は、『ゲット・アウト』『アス』『キャンディマン(2021年)』を作ったすごい人です。

個人の感想ですが、この監督は『普通に訴えても誰も耳を傾けてくれないから映画を撮った』的なクリエイターだと思います。
(個人の感想ですぞ!)

なので今回は一体何の話をしているのだろうと耳を傾けるように鑑賞したところ――

めっちゃ見つかりづらかった。

完璧なまでに作品という名のアイスコーヒーに『テーマ』が溶け込んでいました。

鑑賞時の感想。

( ・ω・)<あ、やべ、これ難しいぞ。
(そもそも自分はSFホラーや宇宙人系が苦手)

( ・ω・)<でもなんか面白いぞ? あと怖いな!

( ・⌓・)<……

( ゚д゚)<前半と後半ジャンル変わっとるがな!!

鑑賞中はなんかつかめそうでつかめず、
鑑賞後は謎の満足感が残り、必死で考察を検索しました。

 

【②チンパンジーが怖い】

でもしっかり怖かった。
(ここがすごい)

場面だけでなく、展開の流れというか雰囲気的に。

のっけから空から降ってきたコインにぶつかって父親が死ぬ。
牧場が経営不振になり、とある西部劇系テーマパークに馬を売ろうとする。
そこへ、数十年前にホームコメディものドラマ(フルハウスっぽい)の撮影現場で、チンパンジーが暴れて人間を殺しまくったというエピソードが挿入される。

そしてOJとエメラルドは、父親の死に関連している謎の飛行物体を撮影して一発バズらせようとする。

飛行物体は『Gジャン』と名付けました。

この流れに、ずっと何かが起こりそうな感じが付きまといます。
具体的には分からないけれど、おそらく登場人物はそっちの方向に進んではいけないと思える、嫌な感じ。
『アス』の時も思いましたけど、『不穏』を描くのが死ぬほど巧い。

そんなサイレント恐怖の中でチンパンジーの殺戮エピソードがパンチありすぎた。

べらぼうに怖かったです、人間に馬乗りになって拳を振るうチンパンジー

さっきまで『種族を超えた友人』と信じて疑わなかった、心が通じてるのだと思い込んでいた生物が、血まみれで大人たちを殴り殺す。
苛立たしげにパーティー帽子を投げ捨てる様子にビクッとなります。

何事もなかった時は無邪気で可愛いと評価されただろうまっくろな目が、ひたすら不気味でした。
絶対に話も心も通じない。さながら宇宙人のように。

不穏どころじゃなくてストレートに怖い。
実際に同様の事件があったそうです。

 

ja.m.wikipedia.org

 

( ω)<怖いっちゅーねん。

 

【③ノープな真相】
『ノープ』とは、俗語で「ありえない」という意味だそうです。
その言葉にふさわしい真相でした。

OJたちが追いかけていたUFO――空飛ぶ円盤――『UAP(未確認空中現象)』は、

飛行物体ではなく、
飛行生物でした。

( ・⌓・)<oh……NOPE……

兄妹ががカメラに収めてネットに流そうとしていた――つまり、『見世物』にしようとしていたものが生物と判明したところで、チンパンジーとリンクします。

人間が、人間以外の生き物を見世物にすること。

その、感動やほのぼので包まれがちだけれど、実はとんでもなく傲慢な行為に警鐘を鳴らすのが『テーマ』でした。

その行為の果てには、チンパンジーに殴り殺されたり空を覆う巨大クラゲのような物体に捕食されたりする、大いなるしっぺ返しがあるかもしれない。

ということが分かったら、うっすら感じていた嫌な感じ(※重複表現)の正体が分かりました。

神聖な禁足地に突撃する迷惑系配信者(最近のホラー映画ではおなじみ)、
あるいは、猫動画で金儲けを企む輩。
そういう人たちを無意識に思い浮かべたんだろうな、と腑に落ちました。

 

【まとめ:逆襲劇でもあった?】
鑑賞後、

これは、『見られる側』と『見られない(顧みられない)側』の逆襲劇だったのかもしれない。

という所感を抱きました。

『見られる』は、空々しいホームコメディを撮るために多大なストレスをかけられ続けたチンパンジー・ゴーディ。
そして、Gジャンと名付けられ、テーマパークのイベントに誘き出されそうになった飛行生物です。
(その首謀者のリッキーがすごく面白い勘違い野郎だった)

『見られない(顧みられない)』は、OJとエメラルド。
“世界最初のスタントマンだけれど、黒人なので記録が残らなかった存在の子孫”である彼ら。

それぞれの逆襲を描いていたのかな、と。

そして多くの考察の中で一番の謎である直立する靴ですが。

自分的には、

①あれはものすごい奇跡が起こって直立していた。
②それを見つめたおかげでリッキーは助かった。
③でもそのせいで、リッキーは、自分は人間以外のものとも交流(というか支配下における)できる特別な存在だと信じた。
④その結果、Gジャンに吸い込まれた死亡した。
=最悪の(結末につながった)奇跡。

と、推測しました。

ちなみにお気に入りシーンは、『AKIRA』パロのアレです☺️
モルカーのテディかよ☺️

 

 

次回は6月12日月曜日、
2021年制作、タイ・韓国合作の超自然的モキュメンタリー、
『女神の継承』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗