人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/キャンディマン(1992年版)

アマプラレンタルで観た映画シリーズです。
1992年制作、アメリカのホラーファンタジーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
民間口承を研究する院生のヘレンは、『キャンディマン』という都市伝説を調査している。
鏡に向かって5回キャンディマンとつぶやけば、背後に現れて鉤爪で殺されるという噂だ。
手がかりを得るため、ヘレンは低所得者住宅・カブリーニグリーンに向かう。

 

【ひとこと感想】
かくして伝説は継承された、グロテスクな画面と物悲しいBGMのギャップがすさまじいファンタジックホラー。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①物悲しいBGMなのに
②堂々と姿を現すキャンディマン
③追い詰められるヘレン

 

 

【①物悲しいBGMなのに】
昔のホラー映画っぽい、金属的な高音のBGMで物語は始まります。

 

“罪無き者の血を流したのは私だと言う
血は流される。そのためにあるのだ。

 

粛々とした幕開けから一転、インパクト大の画面がこれでもかと展開され、サービスたっぷりです。
(言い方)

何せのっけから蜂。飛び交う夥しい数の蜂。

キャンディマンの誕生譚も印象深い。
ひどい黒人差別がはびこる時代、画家として名を馳せて白人の地主の娘と恋に落ちたのに、その父親に暴行されて右手を切り落とされた挙句、蜂の巣を塗りたくられて怒り狂った蜂に襲われて命を落とした。

どういう過程を踏んだらで蜂の巣を塗ろうなんて発想が浮かぶんだ……(ドン引き)

舞台である荒れ果てた集合住宅――カブリーニグリーンに描かれた、キャンディマンの肖像画
壁に空いた穴を口に見立て、地獄でも覗いているかのような瞳は一度見たら忘れられないレベル。

ラクガキと汚物まみれのトイレ。
トイレの蓋を開けたら便器にびっしり蜂。
キャンディマンの肋骨に蜂。
トドメは蜂を口移しする蜂キッス。

とにもかくにも蜂、蜂、蜂!!!

最高🐝
(ホラーアイテムとしての虫が大好き派)

こんなエグい画面ばかりなのに、 BGMは静かで物悲しい。
そのイメージのズレが不愉快で心地よかったです。
(感覚でモノを言う)

 

【②堂々と姿を現すキャンディマン】
さてそんなキャンディマン、ホラー映画の中でも、かなり自己主張がつよつよのモンスターです。

物語半ばで彼は堂々とヘレンの前に姿を現します。
それ以前にもサブリミナル効果を狙ったのか、瞬間出現をくりかえします。

それもそのはず。

キャンディマンの目的は、自分の存在を維持し続けること。

そうやって我々に刷り込みたい、伝説として残り続けたいと彼は静かに、強く強くくりかえします。

けれどヘレンは調査の過程で、「キャンディマンは架空の存在だ」と主張します。
その正体は単なるゴロツキで、キャンディマンを信じる人間たちの方にスポットを当てた論文を書こうとするヘレンの元にやってきて、

 

キャンディマン:”I came for you”
(お前のために来た)

 

「私を信じろ」と詰め寄るのです。

 

【③追い詰められるヘレン】
後半は怒涛のヘレン追い詰められ劇。

まずは調査で知り合った黒人のシングルマザー、アン・マリーの赤ちゃんがさらわれます。
(ここでまさかの犬が惨殺されます……ホラー映画で犬を殺すなと軽くキレ散らかしました)

犬殺し、誘拐罪に加えて、さらに友人を殺した濡れ衣も着せられる。
とうとうヘレンは精神病院に運ばれ、拘束されます。

どうにか脱出しようとキャンディマンを呼び出すヘレン。それはあかんやろヘレン。(案の定ドクターは死亡)

そうまでして帰宅したヘレンを待っていたのは――

若い愛人とおうちの模様替えを楽しむ、夫の姿でした。

( ・⌓・)<エグすぎん?

すべてを失ったヘレンは、キャンディマンが待つカブリーニグリーンに向かいました。

仲間になろうぜと蜂キッスをかますキャンディマン。
けれどヘレンの目的はたったひとつ。

さらわれた赤ちゃんを取り返すこと。

ヘレンはゴミの山を這いずり回りますが、キャンディマンを倒すために持った鉤爪のせいで、カブリーニグリーンの人々に勘違いされ、火を放たれます。
燃え盛る業火の中でも、ヘレンはあきらめなかった。
命を落としながらも、赤ちゃんをお母さんの腕に戻したのです。

 

【まとめ:カブリーニグリーンの伝説は続く】
赤ちゃんを取り返すこと。
それはすべてを失ったヘレンが、最後まで貫き通した『美徳』でした。

彼女は世界の悪意に負けず、人間としての美徳を維持し続けた。

そんなヘレンのために、カブリーニグリーンの人々は列を成して彼女を悼んだ。
献花の代わりに鉤爪を供えて。

これはカブリーニグリーンの人々の願いのようでした。

ヘレンよ、どうか。
我々が味わった苦痛を象徴する、決して忘れられぬ存在となっておくれ。

人々が忘れないために、忘れさせないために、
キャンディマンは必要な存在だった。

ヘレンは、新しいキャンディマンとなったのです。

……。

(これめちゃくちゃ興味深い題材だなと思うんですよね)

(差別の歴史を忘れさせないために造られたキャンディマン)

(人々がモンスターを造り、モンスターは人を殺すという入れ子構造)

(考え出したら止まらん)

 

【余談:ホラーに赤ちゃんと動物が登場すると】
集中できないことがよく分かりました。

ええい、殺人鬼が犬を殺すな!
殺人鬼が赤ちゃんを襲うな!

あと、ぐずる赤ちゃんにキャンディマンが指をしゃぶらせるシーンがあるのですが。

その指消毒した?
ハチミツとか間違ってもあげるなよ……?

そこじゃないのは分かってますが気になる。のでした。

 

次回は10月31日月曜日、
1978年制作、アメリカのスラッシャーホラー、
『ハロウィン』の話をします。

( ・ω・)<逆にハロウィン以外ある?

 

 

鳥谷綾斗