人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/感染

TSUTAYAで借りたホラー映画シリーズです。
2004年制作、日本のワンシチュエーションホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
経営悪化の一途を辿り、崩壊寸前の古い病院。
そこで働く医師も看護師も限界を迎えようとしていた。
ある暗い夜、医師の秋葉は医療ミスで患者を死なせてしまう。
どうにか隠蔽しようとする中、感染症の疑いがある患者が救急搬送されてきた。

 

【ひとこと感想】
佐野史郎の存在感、スピーディーな臨場感「これが日本のホラーだ!」と突きつける緑色の悪夢。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①開始数分でヤバいと分かる病院
②次々と重なる最悪
③つよつよ佐野史郎

 

【前置き】

word-world.hatenablog.com

 

この記事でも書いたとおり、
本作品は、『Jホラーで一番面白くて一番怖い』と思っています。
(異論は認めるし議論もしたい)

さてどこが面白いのか。暑苦しく語っていきます。

 

【①開始数分でヤバいと分かる病院】
舞台は古びた病院。患者は多く、それなりに明るい。
しかしヤバい。死ぬほどヤバい。
枚挙しますと、

1.トイレ介助が必要な老人のナースコールに応答できない。
(老人は転んで骨折。ナチュラルにあり得ない方向に曲がる足が怖い)

2.注射器の持ち方が明らかにおかしい新人看護師。

3.その新人をいじめるパワハラナース
(気持ちは分からんでもない)

4.患者たくさんの待合室の公衆電話で、慰謝料の滞納の言い訳する医者。

5.給料未払い。

6.連絡のつかない院長。

7.『至急』と訴える救急車をずっと無視。

8.「看護師が9人も辞めました」

9.縫い目ガタガタの裂傷の縫合をする新人外科医。
(止められても「僕にだってできる!」と引かない)

10 .「ついに備品が底を尽き始めています」→「もう少し頑張りましょう!」
(どうやってだ)

11 .鏡の中へ話しかけ続ける老婆。

12 .頭を打って意識混濁する若者を待合室で放置発覚。
(地味に一番怖い)

13 .残ったスタッフに重く蓄積される過労と寝不足。

トドメに意味もなく狐のお面をかぶる少年――

暇ってもんがない。
実にテンポ良く紹介され、その不穏さ! 不気味さ! 絶え間なく打ち寄せる悪い予感に、

(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)<これですわ〜〜〜〜

五臓六腑に染み渡りました。
わざとらしいイベントなど起こさずに、あくまで「これがここの日常です」という描写。プロの技ですわ〜〜〜。

 

【②次々と重なる最悪】
廃病院待ったなしの中、最悪な展開が、主人公・秋葉に襲いかかります。

①医療ミスで大火傷を負った患者の命を奪った。
②救急車で感染症の患者が運び込まれた。

医療ミスの隠蔽と院内感染との戦い。
感染症に罹患した人間の成れの果ての描写が、凄まじかったです。

具体的な画を見せずに、
……ぐじゅり、ぐじゅり…… という音と、
「体液が緑色」「内臓が溶け始めている」という冷静な説明、
「こちらに笑いかけてきた!」という反応の描写で、想像力を掻き立てるのが良かった。

ウィルスは広まり、次々と医師看護師たちは凶行に走ります。
「ごめんなさい」と謝りながら。
緑色の体液を流しながら。

そうやってどんどん人間が『人間性』を失っていく様、
それこそが、最も恐ろしいものだ――と思います。

そしてただ一人、終始冷静だったのが、佐野史郎さん演じる『赤井先生』でした。

 

【③つよつよ佐野史郎
『赤井先生』は、唐突に、秋葉先生と魚住先生の前に現れました。
それまで名前すら出なかったのに、医療ミスを仄めかして脅し、ウィルスの調査を持ちかけます。

そこに佇むだけで時間が止まったような、空気がぬるつくような、そんな違和感を与えます。
これはもう演者の佐野史郎氏のチカラでしょう。すげーな冬彦さん。(※懐かしすぎるネタ)

赤井先生は容赦なく、静かに追い詰めます。
秋葉先生が患者を愛せないことを指摘し、
このウィルスは意識に感染して、皆は自身の罪によって裁かれたと諭します。

秋葉先生は怒鳴りつけます。
「これはあんたが作ったウィルスで、俺たちを実験台にしたんじゃないのか」と。

そこに現れたのは、精神科医・中園先生。

 

中園:「そこには誰もいません」

 

『赤井先生』の姿は、鏡の中の秋葉先生で、
『赤井』は、医療ミスで亡くなった患者の名前でした。

 

【まとめ:再鑑賞してみて】
昔観た時はぼんやりと「幻覚オチかー」と思いましたが、今観ると少々辻褄が合わない、説明がない点も多かったです。

①縫合にこだわる新人外科医と先輩外科医の件。
→蚊帳の外感が強い。
そもそも罪悪感に感染するのなら、「縫うくらいできるし! なんでやらせてくれないんだ!」と逆ギレする新人外科医は感染しないのでは。
あと先輩外科医は泣いてる看護師に手を出すなよ。

②狐面の少年の件。
→たぶん『少年の頃の監督』。(映画であるあるのメタ)

③ひとりでに揺らぐブランコ。
→最後ふたつとも揺れたのは、感染者が増えたことの比喩かと。ウィルスの目的は増殖だって『リング』が言ってた。

④ウィルスを持ち込んだのは誰か?
救急搬送も『赤井先生』も幻覚なら、始まりは何なんだ。


このようにスッキリしない部分もありますが――

それが何だと言うのか。(強調)

 

ホラー作品の最重要課題は、『怖いこと』です。
スピード感、臨場感、最悪に次ぐ最悪、焦燥感、この状況になる前は真っ当だったであろう人々が環境のせいで荒み人間性を失っていく過程、

その作り上げた『怖い』をぶつけてくるのです、この映画は!!

ホラーにおける一番大切なことです。
怖ければ多少の辻褄破綻はゆるされるし、逆に辻褄完璧でも怖くなきゃ意味がないのです!!!

そう前提に置けば、
やっぱりこの作品が、Jホラーで“一番恐い“。

 

 

【おまけ:お気に入り場面】

 

桐野看護師:「はい、おなかが空いて。先生も食べますか?」

 

後輩看護師をずっといびっていた桐野さん。
その時に食べていたモノが、ずっと頭を離れません。

 

そして何気に『怖いお婆さん』が大活躍。
優しそうな語り口で、見えざるものを手招きして。
必死で救命しようとしている横で、キャッキャとはしゃいで。
かと思いきや、はすっぱにタバコをふかすして。
影の立役者でしたね。

お見舞いに来た首のないお婆さんもナイスです👍

 

 

【おまけ:この作品で得る学び】
この記事を書いている現在、コロナ第7波が猛威を奮っています。
自分の職場も陽性者が出て、私ともう一人以外は全員罹患しました。

それもあって鑑賞の間、

( ・⌓・)<やっぱり寝不足怖いな……

と思いました。
寝不足と過労さえなければ、秋葉先生も「塩化カリウム投与!」なんて言い間違わなかったし、看護師もきちっと確認したと思います。

冷静な判断力を、失わなかったと思います。

皆様もお気をつけください。

 

 

次回は7月25日 8月1日月曜日、
2021年制作、アメリカのスリラーホラー、
『オールド』の話をします。

 

鳥谷綾斗