アマプラで観たホラー映画シリーズです。
1932年制作、アメリカのゾンビ映画の元祖です。
【あらすじ】
新婚のニールとアデリーンは、地主であるボーモン氏に招かれ、結婚式を挙げるためハイチを訪れる。
そこは『ゾンビ』と呼ばれる『動く死体』が砂糖工場で働かされていた。
アデリーンに横恋慕したボーモン氏は、司祭のルジャンドルに彼女をゾンビにするよう唆される。
【ひとこと感想】
世界最初のゾンビ映画は、恐怖を隠し持つ童話だった。
※全力ネタバレです。
【3つのポイント】
①世界最古にして最初のゾンビ映画
②元祖ゾンビは怖くない?
③意外とハッピーエンド
【①世界最古にして最初のゾンビ映画】
この作品がアマプラ配信なのを知った瞬間の感想。
↓
( ・ω・)<いい時代だ……
鑑賞の最中にふと気づいて実感した所感。
↓
( ・⌓・)<90年前ってすごいな!?
90年前の映画が今観れること、
90年前にもゾンビがいたこと、
当たり前のようで本当は当たり前じゃないかもしれない、
すごく大いなるパワーみ、奇跡的な何かを感じます。
(感動している割にはフワフワな表現)
それはそれとしてちょいちょい字幕がおかしかったです。
『っ』が『つ』だったり。
それにしても
当時の映像や合成技術は良いですね。大好きです。
『ルジャンドルの視線』を表現するために、つよつよ目力の瞳がのいーんと画面に浮かんだり。
アデリーンを失ったニールの絶望を、ダンスをするアベックの影絵で表現したり。
場面転換が劇場の幕っぽかったり。
崖の上に聳え立つ恐怖城は、たぶんロケではなく絵画+セットっぽかったり。
あとはハゲタカが明らかに天井から吊るされていたり。
(今だと確実に叱責案件)
単純にメイクやドレス、メイドエプロンも可愛かったです。
ロマンがある。昔の映画にはロマンがある。(楽しい)
【②元祖ゾンビは怖くない?】
ロマンはあれど、元祖ゾンビは地味でした。
主人であるルジャンドル氏に付き従い、砂糖工場で黙々と働き続ける生ける屍。
固定された表情、ぎこちない動き、声どころか吐息さえ漏らさない。
労働中の工場内はぎぃいいという機械音だけで、話し声はなく、
一人落ちても誰も反応しない。
地味ですが、馬車の御者はゾンビを恐れます。
同じく村人たちも、墓を掘り起こされないように、歌を唄いながら道の真ん中に亡骸を埋めます。
不気味だけれど怖くはない。
けれど恐れられている。
それが元祖ゾンビです。
【③意外とハッピーエンド】
そのゾンビたちを操るのが、眉毛がすごいルジャンドル氏。
彼はとにかく眉毛がすごい。特徴が過ぎる。
なんか突然ロウソクをナイフで削ってアデリーンやニールのフィギュアを作る、眉毛がすごいブードゥー教の司祭です。
(何回言うねん)
ルジャンドル氏は、アデリーンに執着するボーモン氏にゾンビパウダーを渡します。
ボーモン氏は、式場の入場中に花嫁を口説くという空気読めや案件 ネバギバ精神を発揮。
ですが突っぱねられ、彼女にゾンビパウダーをふりかけた花を渡します。
そうして花嫁は、美しいゾンビとなった。
結果的に、ニールが宣教師のブルーナー博士と共に彼女を取り返しました。
(ちなみにゾンビパウダーのカラクリは、
①ゾンビパウダーにはテトロドトキシンが入っている。
②摂取量が正しければ、仮死状態にできる。
③脳が酸欠になり、自発的意志を持たない人間になる。
④それを操る。(催眠術的な技術?))
ルジャンドルが死に、正気を取り戻したアデリーン。
再会した夫婦は抱き合い、幕を閉じました。
鑑賞直後は、『童話』という印象でした。
困難に愛が打ち勝ち、ふたりは幸せなキスをして終了。
童話はつまり寓話だから、風刺的なものもあるのかもなーとのんきに考えていた――のですが。
【まとめ:ホワイト・ゾンビの真の恐怖】
だんだんとじわじわと、
いや、怖いな……?
という感想が湧き上がってきました。
怖いのはゾンビの在り方です。
死んでもなお働かせる。食事も休息もなく。
自分の意志というものを奪った状態で。
ルジャンドル:「命をもらったのだ。皆私に従う」
眉毛はそう言いますが、「誰も頼んでないよ」という気持ちです。
「誰も命をくれなんて言ってない。死んだんだから死なせておいてくれ」という反発が生まれました。
ゾンビとなったアデリーンの悲惨さもそうです。
ただそこにいて、ピアノを弾いて徘徊するだけのモノとなり、眉毛に「美しい絵画」呼ばわりされるアデリーン。
愛を返さない彼女にボーモン氏は泣き崩れます。愚かな男です。
ラスト、ゾンビは淡々と海にダイブします。
無言で死に向かう彼らに、原題である『ホワイト・ゾンビ』の意味がなんとなくつかめました。
思考も感情も『真っ白』になった状態でも生きるモノ。
『共同体の保護と権利』を奪われ(白紙にされ)、社会的に死んだモノ。
それがゾンビでした。
これは怖い。
村人や御者がゾンビを恐れて忌避するのは、「そんなモノになる自分」をリアルに想像したためだったか、と今さら気づきました。
(※あくまで個人的な考察です)
現代とはまた違った怖さがある。そんな90年前のゾンビでした。
【おまけ:90年後のゾンビ映画】
さて恐怖城から90年経つ今年、最新のゾンビ映画の特報が来ましたね。
しかも身体能力バリ高ゾンビという飛び道具を作り出した韓国製です。
ホワイトゾンビからだいぶ変わりましたけど、『ゾンビを働かせる』という点は共通してますね。
(ある意味原点回帰かもしれない)
先にツッコんでおきます。
邦題もうちょっとどうにかでけひんかったん???
次回は12月5日月曜日、
2022年制作、日本のミステリーヒューマンドラマ、
『沈黙のパレード』の話をします。
( ・ω・)<来週はホラーじゃないよ!
鳥谷綾斗