人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

卒業・雪月花殺人ゲーム(著・東野圭吾)

『(中略)――卒業したら過去が消えるとでも考えているのかい?』

『大丈夫なんだよ』『慣れてしまえばなんでもない』

『卒業おめでとう』





後の加賀恭一郎刑事、最初の事件です。
彼を含む七人の大学生グループが大学の卒業を前に、今まで積み上げてきたものを壊し、崩し、あるいは卒業するまでの秋~冬の物語です。
また人によっては、命までも。

この本を読み始めた同日、私の通っていた大学が廃校になることが決まり、何の運命だこりゃと思いました。

副題の雪月花は茶道における、籤引きみたいなゲームの名前です。雪と月と花の札を引いた人がお茶を飲む・お菓子を食べる・お茶を点てる――ここに出てくるルールは結構複雑で、ちょっと苦労しました。しかし用語は素敵だなー『初花』とか。

グループの、アイドル的存在だった女学生が下宿アパートの自室で死んでいたことから事件は始まります。
そのアパートは男子禁制で、口うるさい管理人のおかげで『ほぼ』密室とされます。
その真相を究明していくうちに、加賀恭一郎の想い人でありヒロインの相原佐都子の親友までもがこの雪月花の最中に死んでしまいます。

ガラガラと、崩れていくような真相でした。
皆、自分の守りたいものを守ったために悲劇が起こりました。
また、すべての真相を加賀さんは知りません。知らないことも間違っていることもあります……まあそゆことってありますよね主人公で探偵役だからすべてお見通しでなくてもいい……。リアルだな。

私が学生時代だった頃はそんな昔ではないのに、何故だか目線が南沢雅子(グループの恩師で、お茶会の主催者)になりました。
あのもうすぐ無くなる大学で過ごした当時の私がこれを読んでいたら、なんと思っていたのだろうか……と想像は難しいです。
しかして、この中でいちばん許せないと思ったのは、第二の被害者と剣道の大会で卑怯な手を使って勝利を強奪した人物です。あいつこそ制裁を下すべきだ――とアツくなるのは、まだまだ学生っぽい正義感が残っているのか……いやでも本当に許せないです。汚すぎる。

作中の加賀さんの剣道の試合は、とてもワクワクしました。
そして第一の事件のトリックがうっすら理系で、東野先生はやっぱりソッチのひとだなーと思いました。
あとグループが常連になっている溜まり場、『首を振るピエロ』というお店のマスターが何故か好きです。(笑)

ラストのピエロ人形が巧いなあ。