人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

嘘をもうひとつだけ(著:東野圭吾)

JUGEMテーマ:ミステリ


「(前略)あなたを追いつめるには、何とかもう一つあなたに嘘をつかせる必要があったのです」


「嘘を隠すには、もっと大きな嘘が必要になる」
「人生においてもね」






加賀シリーズの短編集です。
短いお話で見ると、加賀さんのキャラってもしかしてつかみにくい……? 淡白な感じがしました。優しいには優しいんだけど印象には残らない、みたいな。
でも最後のはアツかったです。

ラインナップは、嘘をもうひとつだけ/ 冷たい灼熱/ 第二の希望/ 狂った計算/ 友の助言――になります。

嘘をもうひとつだけ
元バレエダンサーが自宅マンションから落下し、死亡した。一見すると自殺のように思えるが、不審な点が数々存在していた。
眠りの森』の事件がキッカケでバレエに少々関心を抱いた加賀刑事。彼女と仲はどうなっているのか地味に気になります。
人を殺してまで守りたかったモノが、他人にとっては同じだけの価値は無く、何より自分の真に大切なことを忘れてしまっていた……ために、起こった事件でした。


冷たい灼熱
ある夏の暑い日。夫が家に帰ると、妻が死に、一歳の長男が行方不明になっていた。
事件の本質は、その季節になると散々報じられる愚の骨頂としか言えないある社会問題です。
『愚かなこと』『不細工なこと』『隠さなければならない』と言い、自らをも『お笑いください』と言った犯人の心境や如何に。子供を亡くしたことに、悲しむよりも、隠蔽しなきゃとせせこましい工作をしたり呆れながら殺したりと夏の暑さに脳みそやられたんじゃねーの。
最大の謎の真相ですが、『うっはー。フェイントで専門知識キター』でした。


第二の希望
娘に器械体操のエリート教育を受けさせ、二人三脚で我武者羅に生きる母と娘の家で発見された絞殺死体。女の手では不可能に思える殺害方法だった。
ひたすら怖い。娘さんが母親の恋人を(ある意味機械的な方法で、とはいえ)ぶっ殺したあと、何食わぬ顔でスポーツクラブに行き、練習し、終わったあと自宅に帰り、警察の聴取を受け、朝のホテルでもりもり朝食を摂り、学校に行き、念願の大会に出場するするとは。
殺人シーンを想像すると、悲劇通り越していっそ喜劇的です。笑えないジョークです。


狂った計算
夫を目の前の事故で亡くした未亡人は、行方不明の建築士の不倫相手だった。建築士はどこに行ったのか。
聖女の救済』の旦那にも通じる最低夫キター  『女なんか教育次第でどうにもなる』なんて、お前あんま女知らねえだろと思いマシタ。
加賀刑事の推理が珍しく外れました。『第二の希望』と同じく、この人がそうしている場面を想像すると……切なくもあり、哀れみもあり。
加賀刑事がいなかったら、本当にどうするつもりだったんでしょうね。


友の助言
加賀刑事の友人である会社社長が交通事故を起こした。加賀刑事は『居眠り運転をするような男じゃない』と信じ、調査する。
刑事ではなく、友人としての加賀刑事を見れました。
トリックや真相はなんとなーく予想つきましたが、細かい伏線がありました。
しかし未必の故意って怖いですね。まだ積極的に殺してくれた方がマシかもしれません。どっちでもいいって、所詮それほどしかないものなのか。


結論としては、加賀刑事は長編派かもなーってことで。私的に、ですが。