人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

マスカレード・ホテル(著・東野圭吾)

 JUGEMテーマ:ミステリ

「私たちはお客様の幸福を祈っています。でも自分たちが無力であることもわかっています。だからこそ、御出発のお客様には、こう声をおかけするのです。お気をつけて行ってらっしゃいませ、と」

自分は今、誰よりもホテルマンらしく振る舞わねばならない、と思った。刑事だとばれるのは論外だ。それどころか、出来の悪いホテルマンと思われてもならない。ホテルの信用を落とすことになるからだ。


「(前略)ホテルに来る人々は、お客様という仮面を被ってる、そのことを絶対に忘れてはならない、と」
「(前略)ある意味お客様は、仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのですから」





東野先生の作家生活25周年記念特別刊行第三弾です。
(第一弾は『麒麟の翼』、第二弾は『真夏の方程式』です)

プロの刑事とプロのホテルマン、お互いのプロ意識が光り、火花を散らし、最後はホテルのレストランによくあるキャンドルにぽっと火が点くような。そんな感じの物語です。

あらすじ。
一流ホテルのベテランホテルマンである山岸尚美は、上司からある男の教育を任される。男は新田という刑事だった。謎の暗号が残される不可解な連続殺人の次の犯行現場がこのホテルであり、事件を未然に防ぐために潜入捜査をするという。ホテルマンに変装して……。

最初は、二人とも自身の仕事に誇りを持っているために、骨の髄までプロフェッショナルなためにぶつかりまくります。
けれど事件を未然に防ぐ、という共通の目的のために協力し合い、やがてお互いを認めて行きます。
身も蓋も無い言い方をすればツン→デレです。←本当に身も蓋も無いな!
ラストは少しいい雰囲気になったり……

ホテルには様々な『お客様』がやってきます。
誰もが何らかの『秘密』があり、『謎』な行動をとります。
それらを積み重ねて、主題の連続殺人の真相を究明していく……本当にひとつひとつのエピソードがうまい。『新参者』を思い出しました。

ホテルの備品を盗んだ前科がある客、目の不自由な老女を演じた客、写真を見せて『この男を近づかせないで』と命じる客、何故か新田を目の敵にする客、明らかに怪しげな客……。

特に目の不自由な老女のエピソードは、意外性も手伝って素敵でした。
まあ見事に裏切られるんですけどね。普通にショックでしたね。『仮面山荘殺人事件』ぶりに『素敵なエピソードだったのにぃいい!!』ってなりましたね。


この事件の最大の謎は、誰が誰を殺すのか、です。
犯行現場だけわかるのに、それ以外はすべて不明。
私はターゲットは何となく予想してましたが、犯人が意外過ぎて。ショック過ぎて。動機がアレ(=どう考えても逆恨みだろアレ。別のホテルに泊まって、明け方戻ってくればいいじゃないか。もしくは防寒具を揃えるとか。ずっと莫迦みたいに待ち続けるなんて、お腹の子供への影響を考えなかったとしか思えない。子供をちっとも大切にしてなかった、子供より逃げた男のことしか頭に無かったってだけの話じゃーないかよ)過ぎて。

そんなわけで真相にはやや不満が残りました。
何だかんだで助かるだろうなあ、とも思ってましたし。←いや助かって良かったんですけど。

そしてキャラクター的にも、新田刑事より能勢刑事のほうが好きです。スピンオフとか無いですかね(笑)

だけど全編通しての、一流ホテルのホテルマンとしてのプロ意識の高さは素直に感心しました。
でも『幽霊が見える><』とか言っちゃうお客さんにも真面目に対応しなければいけないとは。いやそれだけならともかく、あんなことまで……ホテルマンって大変ですね。