人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/リトル・ジョー

アマプラで観たホラー映画です。
2019年制作、オーストリア・イギリス・ドイツの合作SFスリラーです。

 

 

リトル・ジョー (字幕版)

リトル・ジョー (字幕版)

  • エミリー・ビーチャム
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【あらすじ】
バイオ研究者のアリスは、息子のジョーを育てるシングルマザー。
彼女は『幸せになれる香り』を放つ新種の赤い花、リトル・ジョーを開発する。
しかし不稔性であるはずのリトル・ジョーが花粉を放ち、その花粉を吸った同僚や息子のジョーは、人が変わったようになる。

 

【ひとこと感想】
音も無く侵食していく、けれどそれは幸福かもしれないバイオホラー。

 

※全力ネタバレです。
※直接的なシーンはありませんが、犬が殺処分されるという展開があります。

 

 

【3つのポイント】
①色彩のセンスがピカイチ
②音も恐怖もなく忍び寄る
③不透明な結論

 

【①色彩のセンスがピカイチ】
このホラー映画の最大の魅力は、

背景や小物の色彩センスがめっちゃ可愛い☺️

という点です。

登場人物の衣装や、壁の色やインテリアがそりゃもう可愛い。

研究所の食堂はオシャレなサンドイッチやスイーツ中心。
ペールグリーンのカップに淹れたウィンナコーヒーにドレンチャリーが載っていたり、おもちゃみたいな色合いのカップケーキやレモンの輪切りがささったケーキがあったり。

とにかく『』がキュートな映画でした。

たとえば、主人公のアリスが着る白衣。
色合いが蛍光グリーンっぽくて可愛い。中に着るトップスもそれぞれでオシャレ。
ロッカールームですらミントグリーン。

息子のジョーの制服も深緑を基調としていて、トラッドで可愛い。
緑って200色あるんだなぁとニッコリしていたら、気づきました。

もしやリトル・ジョーの赤い花の色を映させるため……?
🫢

『グリーン・インフェルノ』 と同じような作用があったのかもしれません。
そう思ってしまうほど、この映画の主役はリトル・ジョーでした。

 

【②音も恐怖もなく忍び寄る】
色彩のほかに印象的だったのはBGM。
妙に日本的と言いますか、横笛や太鼓っぽい。

日本の伝統芸能の舞台で、太鼓の音で緊張感を演出する手法があるじゃないですか。
あんな感じです。(?)

何故か後半のBGMは犬の鳴き声っぽかったです。なんで?

そんなBGMに載って、じっくりゆっくり広がっていくのが花粉。

ひとりでに花開くその様――否、普通のことなんですけれど。

細い花びらが、ニョロニョロ と赤い線虫のように蠢いて、

ブツブツ と咲くのは気持ちが悪かったです。

人間をハッピーにさせる――親が子を世話する際に出る脳内分泌物を促す――香りを放つ植物。

人間が植物に愛情を持つように。
それによって幸せになるように。
そんな目的で造られましたが、代わりにリトル・ジョーは生殖を禁じられました。
(育てる人間が花粉症にならないように)

アリスたち研究者は言います。

 

「自分たちがコントロールする」
「リトル・ジョーは何も考えない」

 

……このセリフ、なんとも傲慢だと思いました。

けれどこの傲慢さは、
アリス(母親)がジョー(息子)に無意識下で抱いていたモノと、おそらく同じだった。

アリスはジョーのことを、いつまでも自分が世話しなきゃいけない幼な子だと思っていた。
だから、離別した父親と暮らしたいとジョーが言っても突っぱねた。
いつまでも彼は小さな子どもじゃないのに。

だから、息子――ジョーもリトル・ジョーも、母親(アリス)に対して反抗した。

リトル・ジョーは、植物の本能である生殖を遂げるため、人間を操れる花粉を作り出したのです。

 

【③不透明な結論】
……という真相なのかどうかは、実は明確にされていません。
(ホラーだから許されるやつ)

アリスは、花粉を吸って、忠犬ベロや息子や同僚たちの性格が変わったと訴えますが。

それらすべて、『生き物だったら当然の変化』の範囲なのです。
(ベロは犬の認知症になっただけ、ジョーは成長しただけなど)

逆に妄言を語る研究者だと言われ、孤立するアリス。
アリスは、リトル・ジョーを処分しようとします。
それを同僚クリスが――恋愛フラグが立っていたのに――ぶん殴って止めます。

クリスはアリスのマスクを外し、
リトル・ジョーの花粉を嗅がせます。

自分たちと『同じ』になるように。

後日。
アリスは晴々とした顔で、研究所へ。
リトル・ジョーは植物の博覧会でおひろめされ、評価を得ます。

世界中の人間に、ハッピーになれる香りを届けるために。

アリスはクリスを許します。
ハッピーだから殴られたけど許します。
アリスはジョーを許します。
ハッピーだから自分から離れ、父親の元へ行くことを許します。

『Good Mother(いい母親)』になり、独りだけになった家で、
赤くて見事で細い花びらが触手のように蠢くリトル・ジョーに囁きます。

 

アリス:“Good night, Little Joe”

 

その直後、 カサカサ と花びらの音と、

 

“Good night, Mom……”

 

愛らしい子どもの声がしました。

 

【まとめ:『それもいいかもしれない』な結末】
自分の本来の感情を封じられて、
自分の本来の人格を変えられる。

その変化を、本人は気づかない。

 

セルマ:「死と同じよ。本人は死に気づかない」

 

それはとても怖いことなのだろうけど、
でもこれはこれでいいんじゃないか、と思います。

リトル・ジョーの花粉のおかげで、アリスは『いい母親』になった。
周囲と本人が幸せなら、それでいいかもしれません。

『リトル・ジョーがもたらすモノ』と『それによって失ったモノ』に気づいてしまったら。
同僚のベラのように死を選ぶしかないわけで。

( ・ω・)<だがしかし。

ひとつだけ引っかかるのは、アリスの上司のセリフ。

 

上司:「人の感情は測れないし、そもそもどうでもいい」

 

……自分の感情や人格を、
上から目線で「どうでもいい」呼ばわりされるのはなんとなく気に入らんな……🤔

と、思いました。
(感情論で〆る)

 

 

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タイトル/
推しと私の怪異調査 サトリの眼🐒👀

発売日/2024年8月20日(火)🌻
出版元/集英社オレンジ文庫🍊

 

ドルオタ女子高生が推しとお化けの調査する話です!
推し活×オカルト、新感覚オモ怖コメディです😘

 

 

 

次回は8月5日月曜日、
2019年制作、アメリカのホラーアドベンチャーサメ映画、
ジョーズ2』の話をします。

 

( ・ω・)<夏のサメ映画続編祭りだ!🦈

 

 

鳥谷綾斗