人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/パージ

アマプラで観たホラー映画です。
2013年制作、アメリカのエクストリームスリラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
1年に一度、夜の7時からの12時間、殺人を含むすべての犯罪行為が合法となる『パージ法』。
この法律を導入してから、アメリカは失業率と犯罪率が低下し、経済状況が安定した。
パージの日。富裕層のサンディン家は万全の防犯システムで臨むが、ホームレスの男性に助けを求められる。
彼は『パージ(浄化)』と称して殺戮を行なう集団に狙われていた。

 

【ひとこと感想】
設定の勝利。最後に残るのは、朝日が曝け出す『居た堪れなさ』。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①何度でも思う「設定が強すぎるぜ」
②たまりゆく「こいつら早く死なないかな」
③くりかえされる「自分を見ろ」

 

【①何度でも思う「設定が強すぎるぜ」】
突然ですが企画書の話をします。

文字であれ映像であれ、商業作品を作るにあたって唯一にして絶対の武器が企画書です。

それに、ある意味タイトルよりも先に書くべき要項があります。

“ログライン”です。

これは、ものすごーーーーく簡単に説明すると、『「これはどんな話か」を一行程度でまとめたもの』です。
一説によると、「えらい人とエレベーターで偶然乗り合わせた時にプレゼンできるくらい簡潔で分かりやすく、されど斬新なもの」が推奨されます。

その面ではこの作品、ログライン=設定が鬼つよなのです。

何せ、『12時間限定で犯罪やりたい放題のアメリカ』です。

( ・ω・)<そら何か起こりますわ〜〜〜〜👍

もうこの1行で妄想が広がりますね。楽しいです。

導入はその『夜』が始まる数時間前。
パージの準備をする人々の姿から始まります。

 

“Safe night.”
(「安全な夜を」)

 

別れ際に口にするこのセリフ。
この世界の人たちにとっては、もはや「ハバナイスデー😉」と同じくらい根付いているだろう不穏な挨拶から、最悪の一夜が始まります。

 

【②たまりゆく「こいつら早く死なないかな」】
サンディン家の父親・ジェームスは、パージで需要が高まった防犯設備でボロ儲け(言い方)しています。

母親のメアリーは普通の主婦、
娘のゾーイは年上の男と付き合うのを反対されている(アメリカのカップルってなんで窓から出入りしてまで彼女の家でイチャつきたいのか)、
息子のチャーリーは怖い人形搭載のラジコンを操る少年です。

パージに備えて家を封鎖したのですが。

ゾーイの彼氏ヘンリーが実力行使で父親を説得するために家に不法侵入し、
チャーリーが助けを求めるホームレスの黒人男性を家に招き入れました。

(´・ω・)<oh……ガバガバ……

ちなみにヘンリーはあっさり返り討ちに遭いました。あいつ何やったん。

そこからさらに男性を狙っていた覆面集団が、「一家皆殺しにされたくなければそいつを引き渡せ」とベルを鳴らします。

この覆面集団。
まじで本気で非常にイラァッとします。
(覆面の造形も衣装がスーツと白いドレスなのも腹立つ)

 

覆面ども:「我々はまともで若くて教育水準が高い『持てる者』だ。
      その男を殺戮によって浄化(パージ)する」

 

もうこの時点で死んでほしい。

男も女も煽りよる。監視カメラの前で見せつけるようにチュッチュしたりブランコに乗ったりスキップしたり、これ見よがしにナタを持ったりおんぶで移動したり。

( ˘ω˘ ).。oO(こいつら……早く死なないかな……)

率直な本音です。ここまで殺意を高まらせる敵は久々です。

(でもなかなか死なないんですよこいつら)

(変なところでストレスがたまるぅ)

 

【③くりかえされる「自分を見ろ」】
夫婦は最初、男性を引き渡そうとします。
それはそうです。彼らにとっては娘と息子が最優先です。

 

ジェームス:「君は今夜死ぬ。男らしく死ね」

 

そう抜かして、男性の怪我をした腹をレターオープナーで抉ります。(痛い!)

そんな両親の姿に、子どもたちは嘆きます。
メアリーが先に気づきました。こんなことは間違ってると。
ジェームスに「自分を見て」と懇願します。娘も同じように。

男性も、「子どもたちを救え」と自分を犠牲にするよう言います。
そうしてやっとジェームスは、誰と戦うべきか思い出したのです。

そこからは楽しいバトルシーン。個人的には遊戯室での一戦が推しです。
劣勢に追い込まれますが、グレースという女性率いるご近所さん集団が覆面集団をぶち殺して助かります。

冒頭でメアリーに嫌味を言っていたグレース。
お、いい人か? と思いきや。

 

メアリー:「私たちから(防犯設備で)儲けておいて態度がデカいのよ!」

 

日頃の恨み&嫉妬をパージで晴らそうとするセコい集団でした。

ジェームスは凶弾に倒れ、再び窮地に追いやられますが、
男性が助けに入り、事態は逆転します。

けれどメアリーは反撃など望まず、
ただ生き残った全員で、朝の7時を待とうと提案しました。

 

【まとめ:深夜テンションは居た堪れない】
このラスト、賛否両論ありましょうが(「自分たちを殺そうとした連中なんかぶち殺せよ!」的なスカッとさを求める派の意見)、
自分はかなり好きです。

みじめだろうなぁ、襲撃者たちは。

武器を取り上げられ、何をするわけではなく、ただ座って時間が経てば。
異常な夜にそそのかされて熱くなった頭も冷えてくる。

それでもグレースは隙を見て殺そうとしますが、メアリーにぶん殴られて頭を叩きつけられます。
(この映画最大のスカッと場面)

 

メアリー:「言ったでしょ! 今夜の殺しは終わり!
      なんで分からないの!!」

 

亡くなった父親の手を握る子どもたちが傍にいるのに、
グレースは何も分かっていない。何ひとつ省みない。
彼女は『“自分を見る“ことができない人間』だったのです。

朝7時を迎え、襲撃者たちはすごすご帰っていきます。
みじめで醜い自分たちの姿を、明るい朝日に曝け出されながら。

こういう冷や水をぶっかける結末は大好きです。
いつだって暴走しがちな集団の正義感を戒める意味も込めて。

個人的には、

結局法律の許しがなければ殺せないのか。
その程度の殺意なら殺人鬼を気取るな。

と思います。ジェイソンとか誰に頼まれたわけでもないのに殺しまくるぞ。

(その意見もどうなんだ)

(ちなみにこの映画で一番思ったのは、「夜は人とか殺してないでさっさと寝よう」でした)

 

 

次回は4月24日 5月22日月曜日、
2009年制作、アメリカのホラーサスペンス、
エスター』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗