人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/エスター

ご無沙汰しております。
ホラーが好きなだけの変てこなトリ🎩🦉こと、

( ・ω・)<鳥谷です。

実に1ヶ月ぶりの更新です。
いろいろありました。元気です。

また週1更新に戻りますので、
お時間ある時にでもお付き合いくださいますと幸いです。

( ゚д゚)<よろしくお願いしゃす!!!(力強く)



CATVで観たホラー映画です。
2009年制作、アメリカのホラーサスペンスです。

 

 

エスター (吹替版)

エスター (吹替版)

  • ベラ・ファーミガ
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【あらすじ】
我が子を流産したケイトとジョンは、孤児院から一人の少女を引き取る。
首と手首にリボンを巻き、少し風変わりで絵が得意な可憐な少女、エスター。
息子のダニエルは反発するが、難聴の娘・マックスは懐き、一家は幸せな日々を送る。
やがて、エスターの周囲で奇妙な事故が頻発する。

 

【ひとこと感想】
陶器人形めいた可憐な殺人鬼が抱く、生々しい欲望。

 

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①邦題がシンプルかつ最高
エスターの殺活(コロカツ)
③『女』同士の壮絶バトル

 

【①邦題がシンプルかつ最高】
この作品の原題は『Orphan』。
意味は『孤児』です。

原題もダブルミーニングで非常に良いのですが(説明は後ほど)、こちらに関しては、

( ・ω・)<いい仕事してるぜ……!!

邦題なのに珍しく。(失礼)

この作品は、『エスター』という強烈なモンスターがあってこそ成り立つからです。

 

【②エスターの殺活】
エスターの初対面での印象は、

周囲の騒がしい子どもたちとはなじめないけれど、
美しく賢く礼儀も備わっている、そんな『大人』が好む少女です。

ところがどっこい、いざ家族になったら相当面倒。

こだわりが強くて注意も忠告も聞かない。
弁が立つので反論もお手のもの。
ヒステリックで、金切り声で暴れる。

それだけなら「時間をかけて見守る」こともできましょうが、
彼女は自分を攻撃する、あるいは意に沿わない相手にはとことん容赦ないです。

そんなエスターパイセンの殺活&奇行一覧。

①ダニエルが遊びで傷つけたハトにトドメを刺す。
(優しさとも言えなくもない?)
② ケイトとジョンの夫婦の営みを見て「知ってるわ。ファックでしょ」と言う。
(そもそも台所で盛るな)
③ 同級生から服装をからかわれ、首のリボンを取られそうになったら金切り声で暴れる。
(服装自体はそこまでおかしくない)

ここまではギリ理解の範疇でしたが。

④その同級生を(たぶん八つ当たりで)すべり台から突き落とす。
(直前、ジョンがおっぱい人妻に誘われて鼻を伸ばしたので腹が立ったと思われ)
⑤自身の過去につながりそうな孤児院のシスターをぶちころ。
(幼いマックスが巻き込まれるのだけつらい)
⑥目撃したダニエルを脅す。
(「ションベンたれ」と冷笑嘲笑する顔が最恐😨)
⑦特殊なインクで、周囲の人間を惨殺する絵を描きまくる。
(ブラックライトで照らすと浮かび上がる演出が最高😌)

この辺りからケイトが『気づき』はじめます。
ちなみにジョンはずっと騙されてました。ホラーにおける成人男性の無能さ何なん?

負けじとエスターパイセンもフルスロットル。

⑧ケイトが、亡き娘ジェシカを想って植えた白バラを切って、「ママにプレゼント❤️ お花を摘んできたの❤️」と笑顔で渡す。

( ・⌓・)<嫌がらせに余念がなーーーーい。

なんかもう嫌がらせというか、『相手の逆鱗に触れて思いどおりにする』のお手本のような鮮やかさです。
さらに自ら腕をへし折って、ケイトにやられたと偽装するアフターケア(?)付き。細けぇ。

まだまだ行きます。

⑨車ごとマックスを殺そうとする。
(もちろんケイトのミスに見せかける)
⑩証拠を探そうとしたダニエルをツリーハウスごと燃やす。
(実はいちばん可哀想なのダニエルでは)
11 助かったダニエルを枕で窒息死させようとする。
ICUのセキュリティガバガバすぎん?)

手腕が鮮やかすぎて、そして笑顔から真顔に変わる一瞬の切り替えが凄まじすぎて、2、3回巻き戻しました。

おまえのような幼女がいるか。
そう思ったところで、エスターが以前いたという『施設』から連絡が入ります。

 

職員:「こちらは孤児院じゃない。精神病院です」

 

 

【③『女』同士の壮絶バトル】

エスターは少女ではなかった。
ホルモンの病気により9歳の体で成長が止まった、33歳の成人女性だった。

この事実を踏まえると、これまでの違和感が一気に解消されます。
家族の中でジョンにだけ媚を売るのも、やたらケイトを目の敵にするのも、彼女が『女』だったから。

ジョンの誘惑に失敗し、ブチギレた彼女は元の姿に戻ります。
乳歯の入れ歯を外し、メイクを落とす。
この変わり身が見事でした。
髪を束ねて黒のシャツを着ただけで、普通に『33歳の女』に見えるのです。

ケイトとの『女』同士のバトルを経て、
彼女は冷たい水の底に沈みます。

 

【まとめ:愛を求める憐れむ可しモンスター】
エスターの目的は何だったのか。

偽りだらけだった彼女の、たぶん唯一と言える心からの叫びがありました。

黒いドレスを身にまとい、黒いアイメイクと真っ赤なリップで粧った彼女。
憔悴するジョンをなぐさめ、「あなたが好き。あなたは素敵」とささやいたけれど、
9歳の少女が『女の目』をする気色悪さに耐えられなかった彼に、拒絶されました。

 

エスター:「子供扱いしないで!」

 

彼女の望みは、
『大人の女性として男性に愛されること』だったのです。

気持ちが悪い話ですが、成長しない体を持つ彼女を抱ける男は世に存在するでしょう。
けれどそれではダメなのです。

エスターが隠していた壁の絵。
大人の男性と女性が絡み合う劇画調の絵は、満たされない情欲まるだしで、言ってしまえば『ジョンとの夢エロ絵』なのですが――
それは、そのまま彼女の叫びでした。

私を愛して。
私は大人よ。セックスだってできる、男を受け入れられる女なの。
だから抱いて。私を女と認めて。

エスターというモンスターは確かに『気持ち悪い』です。

ヒステリックに叫ぶ様も、ハンサムな男にだけ媚びる様も、自分の息子や娘ほどの子供を脅す様も、幼稚で異常です。

けれどその根底には、
痛々しいまでの悲嘆と、痛切な願いがあった。

『孤児』のふりをしつつ、本当に『孤独で、大人になることが叶わない児』だった。
可憐で、憐れむ可しモンスターでした。

(にしても、ケイトもまあまあ変なんですよね)

(3人目を喪った穴を埋めるためとはいえ、何故養子をとるのか)

(その分、ダニエルとマックスに愛情を注げばよかったのでは)

(文化の違い?)

 

【おまけ:吹替がオススメ】
エスターは矢島晶子さん。
初代クレヨンしんちゃんです。最初気づかなかった。

声優さんってすごい。(オタクらしい〆)

 

次回は5月29日月曜日、
2016年制作、日本のクライムロマンス、
ヒメアノ〜ル』の話をします。

 

鳥谷綾斗