新年あけましておめでとうございます!
本年もやたら元気なホラー映画の話しかしない当ブログを、
( ・ω・)<よろしくお願いいたします!!
新年一発目は、お祭り感が強いこの作品。
ネトフリで観たホラー映画です。
2022年制作、アメリカのメタスラッシャーミステリです。
【あらすじ】
ウッズボローに住む女子高生、タラはある夜自宅で襲われる。
間違い電話を装ってホラー映画に関するクイズを出し、ナイフで切りつけるゴーストフェイスの殺人鬼。
それは25年前に起こった連続殺人と同じ手口だった。
タラの姉・サムは、恋人と共にウッズボローに戻る。
実はサムは、原初のゴーストフェイス・ビリーの娘だった。
過去の感想
↓
【ひとこと感想】
「おまえ(制作側)と俺(観客)は両想いー!」とハグしたくなる、続編かくあるべしなB級メタスラッシャーミステリ!
※全力ネタバレです。
【3つのポイント】
①『続編』に求める要素の詰め合わせ
② レガシーキャラの死
③もはや殺人鬼なファイナルガール
【①『続編』に求める要素の詰め合わせ】
『スクリーム』の特徴といえば、そのメタメタしさ。
登場人物が自分たちの身に起こっていることを『ホラー映画なら』という視点で話し、ルールを見出して対処しようとする。それでも殺人鬼・ゴーストフェイスに殺される――という展開です。
最初の事件から25年経った今でも、舞台であるウッズボローで起こる殺人事件はコレです。
何なら数年ごとにゴーストフェイスによる殺人が発生しています。毎回毎回犯人が死ぬのに毎回毎回別の人物がゴスフェスります。
よくもまあ町として存在し続けているなウッズボロー。
こんな物騒通り越して修羅の町、普通なら過疎って地図上から消失せん? 米花町か不動高校???
(野暮なツッコミ)
そんなメタ満載シリーズが満を辞して作った『続編』。
一言で言えば、『ファンが続編に求めるもの』の詰め合わせでした。
①ワンのオマージュで開幕。
(間違い電話とホラー映画クイズですね。林原めぐみさん吹替のケイシーを思い出しました)
②新キャラはワンの次世代。
(新ヒロインはワンの犯人の娘、さらに過去に登場した人物の甥っ子や姪っ子など。少し前に流行った『昔の少女漫画の子ども世代が主役の新作』を彷彿させます)
③レガシーキャラの登場。
(ワンに登場したシドニー、ゲイル、デューイ、犯人のビリーまで幻影として同キャストで出演します)
④ラストバトルの場所はワンと同じ。
(心憎いったらありゃしない)
⑤おなじみの「Hello, Samantha」で始まる電話。
(やっぱこれですわ)
⑥襲撃数秒で蹴っ飛ばされるゴーストフェイス。
(相変わらずそこまで無敵感がなく、『中の人は人間ですよ!』感を大事にしてくれる。感謝。「よぉ久しぶり! 相変わらずぶん殴られてるね!」と嬉しくなった)
( >ω<)<何これ最高〜〜💕✌️🫶🫰💕
こんなんオタクの夢のおせちやん!
「大好きな映画の続編か〜こんな感じだったらいいな!」と空想したやつそのものやん!
そう。
つまりこれは、オタクによるオタクのためのオタクが作った『続編』なのです。
この制作スタイルがそのまんま映画の内容です。
作中では『スタブ』という名の、90年代に大ヒットしたメタスラッシャーミステリホラーの大ファンが、
クソな出来の続編に怒り狂って、
「いいから俺に作らせろ!!!」と殺人しまくる――というメタここに極まれりな新作続編なのです。
【②レガシーキャラの死】
作中でもこの『続編 # とは』が長尺で議論(というより、元祖ホラーオタク兼解説役のランディの姪っ子・ミンディによるつよめの主張)されます。
これがもう本当に分かりみしかなさすぎて、「ミンディは俺?」混乱するとレベルです。
①『スタブ(スクリーム)』は高尚なホラーを目指すな! メタスタッシャーミステリのままでいろ!
(どうやらスタブの最新作はテーマ性や芸術性を盛り込んじゃったみたいですヤッチマッタナー)
②クソな続編は罪である。ホラー映画を好きになったキッカケである『子どもの頃、家族でオリジナルの映画を見た』という尊い思い出を壊すことは許されない。
(この『映画好きになるキッカケ』って万国共通なんですね)
③シリーズもので、まったく新しいプロットはダメ。
(今さらジェイソンがカップルを殺さない話は成立しない的な)
けれどオリジナルを越えなくてはいけない。
連続するストーリーであり、必ずオリジナルに回帰する。
④レガシーキャラの出演。
やはり④は大きいです。
しかも吹替の声優さんも同じ。
一気によみがえる『あの頃の思い出』。ちょっとした同窓会のような気分になります。
そんな懐かしいキャラの一人、頼りないけど頼れる保安官・デューイは新しいゴーストフェイスに殺されました。
犯人:「殺せて光栄だよ」
シンプルに悲しかったです。
ワンで絶対に死ぬだろうと思っていた解説係ランディがツーで死ぬ世界観ですが、デューイは生き残っていました。
しかも現役を退いた身なのに、新しい主人公たちのために尽力した。
そんなキャラが死ぬのは寂しい。
けれど、こうも思うのです。
デューイの退場は、『スクリーム』という作品が続くための礎のひとつになったのではないか。
これは名誉ある、そして意味ある死なのかもしれない……
そうして彼の死と引き換えのように、
本シリーズ通してのレガシーヒロイン、シドニーがウッズボローに戻ってきました。
【③もはや殺人鬼なファイナルガール】
シドニーと、ある意味すべてのキッカケだったゲイル。
ふたりの組み合わせはやっぱり最強です。
もう本当にこの世界に馴染み深すぎる。
被害者になりすました犯人(ところでこの作品はフーダニットのミステリですが基本的に推理要素あまりありません。前触れなく豹変します。今回も「私は犯人じゃないよ!」「知ってる バキューン」だったり「(生きてて)よかったよ グサー」でした)が助けを求めるフリをしたところ、
シドニー:「どう思う?」
ゲイル:「罠ね」
一瞬で見抜きました。慧眼が過ぎる。
何ならシドニーはもはや殺しに慣れ過ぎています。銃の扱い方がもはやギャング。
思えばウッズボローの住人は、不穏な気配を感じたら即座に包丁を構えていましたね。やっぱり修羅の町やん。
ですが。
そんな殺人鬼殺人者のシドニーを超えるのが、
次世代ヒロインであり始まりのゴーストフェイスの娘、サムです。
サム:「殺人鬼の娘を決してナメるな」
この台詞から始まり、犯人を滅多刺しにする彼女は、反撃や迎撃というレベルではなかった。
刺して抜く! 刺して抜く! 丹念に全身くまなく刺して頭もきちんとぶち抜く!
もはやどっちが殺人鬼か分かりません。
もはやファイナルガールと殺人鬼の区別がつきません。
なんてこった、と戦慄しました。
そんな娘の姿を、幻影である父親は、満足げに笑って見ていることでしょう。
ちなみに妹のタラも容赦なく共犯者を射殺しました。みんな思い切りが良すぎる。
【まとめ:オタクにキスと冷や水を】
頭から尻尾まで、シリーズのファン=オタクを喜ばせる工夫に満ちた本作。
サービス満点ですが、きちんとオタクの悪い点も描いていました。
今回の殺人を行なった理由を声高に、自己陶酔に満ちた顔で語る犯人たち。
『たかが映画』の続編が気に入らないという理由で人の命さえ奪う姿は、同じオタクとして同族嫌悪を催しました。
そうなんですよね。
オタクって自分ら(単独でも複数形。いわゆる主語がデカくなる現象)が絶対的に正しいと思ってるところあるんですよね。
オタクに愛を与えながらも、
面倒くささや厄介なところをきちんと描いた点に、冷や水をぶっかけられた気分です。
いちホラー好きとして気をつけたいです。
自己批判って大事。狂っていても冷静さは忘れないでおきたい。
でも、基本的には制作側と観客は両想いかと。
作中にこんなセリフがあります。
ゴーストフェイス:「映画のサイコを観たことは?」
こんなセリフ、観客を信頼してないと書けませんわ。
(4人目の被害者がシャワーを浴びる場面がありました。『サイコ』と言ったらの有名なシーンのオマージュです)
それでは最後は、作中とエンドロール前に出てきた言葉で〆ます。
“For Wes”――ウェス・クレイヴン監督に捧ぐ。
次回は1月16日月曜日、
1997年制作、カナダのワンシチュエーションサスペンス、
『CUBE』の話をします。
鳥谷綾斗