ゲオで借りたホラー映画です。
1997年制作、カナダのワンシチュエーションサスペンスです。
【あらすじ】
目覚めると、立方体の中にいたワース、レブン、クエンティン、レン、ハロウェイ、カザンの6人。
キューブの中を移動して脱出を試みるが、張り巡らせられた死のトラップが彼らを襲う。
【ひとこと感想】
同調不可避、わずか90分に煮詰められた緊張(と数学の重要性)。
※全力ネタバレです。
【3つのポイント】
①冒頭3分の凄絶なインパクト
②壊れゆく人間性
③脱出した先には、何がある?
【①冒頭3分の凄絶なインパクト】
冒頭3分にやられました。
スキンヘッドの男性が目覚める。
そこは6面の壁にハッチがついた出入り口がある、赤や緑や青の謎の部屋。
彼の戸惑いは、そのまま観客の戸惑いとなります。
そこから彼は別の部屋に移動する。
すると、網状のワイヤーでサイコロステーキのように細切れにされる――
( ・⌓・)<これスゲーーーーーぞ!
と、天井を仰ぎました。良いアドレナリンが分泌されました。
わずかな時間で、世界観とキューブの中の設定を説明しています。
非常にコンパクトに、非情なインパクトを以て。(思わず韻を踏む)
そんな完璧に近い冒頭を経た本編は、ずっとハラハラしどおしでした。
手を変え品を変えのデストラップ。
続く緊張感。たまる疲労感。
冗談抜きで登場人物と完全にシンクロして、終わる頃にはヘロヘロでした。
お気に入りは、音を立てたらアウト=リアルクワイエットプレイスのキューブの場面。
いつサヴァン症候群のカザンが声を出してしまうかヒヤヒヤする中、サイレント雲梯はドキドキしました。
自分は雲梯むりめなので諦めます。でもサイコロステーキと硫酸は嫌だー!
(あと脱獄王のレンが早々に退場して悲しい)
(かっこいいジイさん大好きなので)
【②壊れゆく人間性】
ギミックだけで既に面白いのに、ここに加わるのが登場人物たちの人間性の崩壊。
もっとも派手に壊れたのは、警察官の男性・クエンティン。
最初、女子学生のレブンを力づけたり率先して動いたりと頼れる人だったのですが。
徐々に凶暴で利己的な人物になり、彼を諌める医者の女性・ハロウェイを見殺しにしてレブンにセクハラし、カザンやキューブの設計に関わったワースをタコ殴りにします。
クエンティン:「俺がおまえを生かしてやったんだ!」
傲慢を絵に描いたような物言いです。
でも自分は、これがクエンティンの本性だとはあまり思いたくないです。
だって状況に絶望して、カザンに撫で撫でされた時は、
クエンティン:「あっち行け……( ; ; )」
と言うのです。
そんな彼には『人間』を感じる。本当に。誰でも弱い。
こんなめっちゃくちゃな場所に閉じ込められて。
ゴールも分からず、不眠不休で水もなしに動いていたら、
人間性なんて脆くもなる。
それは仕方ない。
けれど暴力を振るう彼を許すことはできないわけで。
【③脱出した先には、何がある?】
舞台であるキューブ、その正体は謎のままでした。
全体的な外壁は、130m×130m。
一辺に26個の部屋がある。
つまり部屋数は、1万7676個である。
部屋そのものが移動する。
使わなければ無用の長物になるので、人を入れて使う。
そんな終わりのない忘れられた『公共事業』――
( ・⌓・)<どんな公共事業???
当時カナダの情勢どうなってんの? という疑問はさておき、数学苦手勢には詰む設定だらけでした。
最初の、
『部屋番号は素数でトラップがあるかどうか確認できる』までは理解できました。
次の、『番号は暗号化されたデカルト座標で、位置を表す』はギリギリ行けました。
最終的な、『元の座標は足し算で順列は引き算、567の因数分解で因数の数は2つでそれをヒントに辿ると出口が分かる』で頭パーンになりました🤯
数学の勉強は大事だった……
(こんな中学校の卒業式みたいなホラー映画の感想ある?)
そして出口にたどり着いた一行。
『外』の様子は、何も見えませんでした。
ただ真っ白な光の中を、たったひとつの背中が行きます。
その直前の、ワーストとレブンの会話が結末を彩ります。
ワース:「生きるに値するものが何もない
人間の果てしない愚かさだ」
レブン:「それでも生きるわ」
ワースの罪は最後、彼を助けたことで雪がれたのかもしれません。
白くてまぶしい『外』に何があるのか。
それは観客ひとりひとりの自由だと思います。
美しい景色でも。醜い光景でも。自由だ。
【まとめ:『エレベイテッド』も観た】
DVDには『CUBE』の元になったこちらも収録されていましたラッキー✌️
一基のエレベーターに乗り合わせた男女、エレンとベン。
そこに警備員のハンクがやってくる。
彼はひどく焦り、血まみれだった。
ハンク:「私の血じゃない。怪物だ」
彼はエレベーターの外には 怪物 がいたと訴える。
ハンクの言葉を信じるべきか?
エレベーターから降りるべきか?
そんな葛藤で焦燥感が募る作品です。
『怪物』の姿が出てこないのに恐怖をひしひし感じる。これぞ映画。これぞホラー。
最後、同じように血まみれになったエレンの元に、大勢の人間が逃げてきます。
彼ら彼女らは「乗せてくれ!」と頼み込む。
エレンはポカンとした顔で、呆然とします。心の声が聞こえてくるようでした。
“どうしよう、これ……”
完全に登場人物(エレン)と観客(わたし)がシンクロしました。
『CUBE』といいそういうのが巧い監督なんだなぁ〜〜と頷き頷き。
登場人物と同調できる最高の映画体験。
ぜひ味わってほしいです🙃
次回は1月23日月曜日、
2021年制作、アイスランド、スウェーデン、ポーランド合作のネイチャースリラー、
『LAMB/ラム』の話をします。
鳥谷綾斗