人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/キャラクター

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2021年制作、日本のサイコスリラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
漫画家・山城は、高い画力を持ちながらも『キャラクター』を作れず、芽が出ないでいた。
ある日、一家殺人事件の現場に出くわす。犯人の姿を目にした山城は、その経験を基にサスペンス漫画・『34(サンジュウシ)』を描き、大ヒットさせる。
やがて『34』を模倣した事件が発生し、さらに山城の前に『両角』と名乗る犯人が現れた。

 

【ひとこと感想】
ジャパニーズカルチャー・MANGAの魅力全開、作画シーンがかっこいい血みどろ国産殺人鬼映画。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①序は心をえぐられる
②破の見所は殺人シーンと作画シーン
③急で「この国は殺人鬼推奨してんの?」と疑う

 

【① 序は心をえぐられる】
さて、このブログを書いているのはホラー映画を語る愉快なトリアタマですが、一応作家業を営んでおります。

ゆえに冒頭、山城が編集者にボロクソ(決して罵倒ではない)言われている場面は、

( ;⌓;)<つっっっっら……

心が死にました。2回停止した。
山城が努力家なので余計につらい。キャラクター力を養うために電車に乗る時間も乗客をスケッチするなど真面目に頑張る人です。
師匠の先生にも「アシスタントを続けてくれ。俺が一生養ってやるよ!」と言われるレベル。

そして、「いいヤツすぎて肝心の『闇の人間』が描けない」と言われます。

あえて尋ねたい。
なんでそんないいヤツなのに殺人とか出てくるサスペンス漫画を作るのだ山城よ。
(素朴な疑問※①)

(しかしあれだけ絵が巧ければコミカライズでなんぼでも仕事あるのでは)

 

【②破の見所は殺人シーンと作画シーン】
そんな崖っぷち山城が出会ったのは、『幸せな4人家族』にこだわる殺人鬼。
山道で迷ったふりをして、車に乗せてくれた家族を皆殺しにするような鬼です。

殺人現場も凄惨でしたが、殺戮場面もなかなか目を覆うものでした。

特に、小栗旬さん演じる『ゾク上がりで人情派で山城に協力的な刑事さん』の清田が殺される場面。
長尺で見せ場たっぷり。かなり抵抗しますが、執拗な攻撃に斃れ、手を切り裂かれるのには背筋がゾワゾワしました。痛い痛い。

自分の漫画を屈託なく「面白い」と言ってくれた読者を亡くした山城は、
折りかけた筆を持ち直し、『漫画』の続きを描きました。

ここの魂の作画シーン、本当にかっこよかったです。
最初はアナログだったけど、漫画がヒットしてタワマンでオールデジタルだったのが、またアナログに戻るところが特に。

泣きながら漫画を描く山城の姿、
胸に熱いものがグッと来ました。

 

【③ 急で「この国は殺人鬼推奨してんの?」と疑う】
……グッと来たんですけど、この時に描いた『34』の最終回、まさかの犯人・両角を捕らえる罠でした。

『34』のストーリーに山城本人を登場させて、山城とその家族を殺しにくるよう仕向けたわけです。

思いました。
「そんなうまくいくか?」と。

案の定、両角は「山城先生の実家は幸せな四人家族じゃない! ギクシャクしてる! 奥さんとお腹の中にいる双子の方を狙うわ!」と奥さんの方に行きました。

(ง ˙-˙ )ง<……えぇ……(ドン引き)

ちょっと両角に信用置きすぎでは。
相手 殺人鬼なんですけど。

そもそも両角、思いっきり山城に会いに来ていました。
1回目はともかく2回目は顔が割れているのに。

え、山城に護衛とかつかないの?
本屋で足止めして警察呼ぶとかしないの???

そもそも両角の家、隠れ家でもなんでもない普通のアパートです。
窓全開で明らかにヤバいインテリア(壁中に貼られた死体の写真だの地図だのモロにそれっぽい原色のラクガキだの)を外に発信していて、ご近所も大家さんも何も言わないのだろうか。
(敷金礼金捨ててんなって思った)

極めつけは、山城の奥さんが完全ノー護衛だった点です。

さらに何故か山城が単身で帰宅する点です。
(一緒にいる中村獅童氏演じる刑事と行けばいいのでは。ていうか近くの交番に連絡すればいいのでは)

もいっちょ、セキュリティ万全のタワマンなのに何故かコンシェルジュがいない点です。

(# ゚Д゚)<何のための高い家賃と管理費なんや!

うっかりツッコミがあさっての方向に。

いやもうあまりにも殺人鬼に都合がいい状況すぎて。
この国って猟奇殺人推奨してるんだっけとか疑いました。

(あるいは「警察は無能」という制作側の失礼なメッセージかもしれない)

小栗旬氏はともかく中村獅童氏はもうちょっと活躍してもよかったのでは)

(ついでに)

(休日の真っ昼間の住宅街で一家殺害は、日本ではかなり無理あると思います)

(あと山城の奥さんが何もしてないの残念すぎる)

(そこが海外産殺人鬼映画と最大に異なる点なのですが)

 

【まとめ:新たなる国産殺人鬼】
周辺に少々の不満はあれど面白かったです。

まさかオタク系殺人鬼とは。斬新すぎんか。
『34』のキャラグッズを買って飾ったり、目当ての作品が休載していても雑誌を買うの、The・オタクの鑑。

他にも犯行に関するアイディアを授けたり、
「殺人ってすげえ大変なんだけど!?」とキレるのが新しい。

そんな彼の最後の言葉で、物語は幕を閉じます。

裁判官が、出生届も出されず戸籍を金で買い、両角という偽名を使った彼に対して、「あなたは誰として裁かれていると思いますか?」という質問をしました。

 

両角(?):「逆にお尋ねします。僕は誰なんだ」

 

自分が何者か分からないから、山城が作った『キャラクター』に執着した――すがったのか。
漫画の中の殺人鬼が、自分の中身になると信じて。

しかしその目論み(願いと言うべきか)もあえなく散った。

肝心要だった漫画のラストシーンどおりにはならず、
両角を刺して覆い被さったのは山城の方だった。

結局、彼は『キャラクター』をつかみ損ねたのです。

(そして両角を刺している時の山城の笑みを見て、『※①』の素朴な疑問が解けました)

(山城は『根っからの善人キャラ』ではなかったんですね)

 

 

次回は11月21日月曜日、
2013年制作、アメリカの食人ホラーアドベンチャー
グリーン・インフェルノ』の話をします。

 

( ・ω・)<ゴアグロカニバ系は苦手だけどがんばれ。

 

鳥谷綾斗