人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/オールド

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2021年制作、アメリカのスリラーホラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
美しい南国のリゾート地に来た一家、父ガイ、母プリスカ、息子トレント、娘マドックス。
離婚前の最後の旅行だったが、ホテルの支配人に、岩壁に囲まれたプライベートビーチに他の家族と招待される。
やがて女性の水死体が発見され、彼らは気づく。
6歳と11歳だった子どもたちが成長していたことに。

 

【ひとこと感想】
「そうはならんやろ」の連続、世にも恐ろしい浜辺での穏やかな悪夢。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①鑑賞前の感想:「オチどうすんの?」
②鑑賞中の突込:「そうはならんやろ」
③オチ前の心持:「これはこれで……」

 

 

【①鑑賞前の感想:「オチどうすんの?」】
映画館で予告を観た際。
そのあまりにも面白そうなコンセプト――『その場にいるだけで高速で年を取るビーチ』に鷲掴みにされました。

誰もが無関係ではない加齢がテーマ。
さらに舞台がビーチってのが良いです。
バカンス、笑い声、はしゃぐ足音、シャッター音、潮の匂い、サンセット、あの夏の思い出。
けれど目前には、生命が生まれて生命を飲み込む『海』。

( ・ω・)<バランス感覚の塊やん……?

その分、オチは気になりました。
結果的に『ホラー映画ではよくあるやつ』だったのですが、そこに至るまでが美しかったです。

 

【②鑑賞中の突込:「そうはならんやろ」】
美しかったけど「そうは(略)」の連続でした。

さて、このプラベビーチ。
何故いるだけで年を召すかと言うと、
『周囲の岩壁がなんか特殊な鉱石でできていて、それが細胞に影響を与えている』とのこと。なるほど分からん。

髪や爪は死んだ細胞なので変化はない。
食べ物や服も生きていないので無事。
ビーチから出ようとしても、鉱石の影響に体が耐えられずに気絶する。
30分で1年、1日で50年の年をとる。

つまり、何もしなければ老衰で死ぬのです。

そんなサメの方がまだマシなプラベビーチに来たのは4家族。
主人公一家、医者と祖母と幼い娘の一家、看護師と心理学者の夫婦、そして人気ラッパー。

プリスカがガン、医者は統合失調症、心理学者はてんかん持ちと、それぞれに持病を抱えています。

厄介なのは、病気も進行するということ。
ただし生傷は即座に塞がり、古傷になります。

というわけで、プリスカの腫瘍がどんどこ成長してメロン大に。
仕方ないので外科手術で摘出しました。そうはならんやろ。

さらに成長した息子と、医者の娘が15歳の体になり、恋に落ちて妊娠して出産します。そうはならんやろ。

アメリカでは6歳児も子作りの具体的な方法を知っているものなのだろうか)

(それとも脳、つまり思考や知識も成長しているのだろうか)

(いやどうやってだよ……それ細胞云々より時間的なものが捻じ曲がってない……?🤔)

その他、連続するトラブルの果てに、
とうとうビーチには一家しか残らなくなりました。
(ちなみに死体もすぐ白骨化して風化します)

 

【③オチ前の心持:「これはこれで……」】
わずか一日で、恋愛、妊娠、出産、身近な人との別れ、さらに殺人と、通常なら何年もかけて遭遇する『出来事』を経験したカッパ一家。

家族4人で寄り添い合い、ぼんやりと、夜の海を眺めます。
その姿はひどく穏やかでした。

老人となった夫婦。
実はプリスカは不倫をしていて、それが離婚の原因でした。

冒頭は、子どもたちの隣の部屋で夫婦喧嘩をしていた彼ら。
その目には怒りも憎しみもありません。
「前に喧嘩した?」「何が原因でも怒ってないよ」と許し合います。
必死になってこのビーチから出ようとした理由すら、もう分からなくなってしまった。

 

ガイ:「So beautiful (いい所だ)」

 

最期の夫婦の会話、とても優しくて幸せで、けれどひどく心が痛い。

ここがこの映画のもっとも怖いところかもしれません。

高速に年をとり、時間を奪われて老衰で死んでいく。
けれど感情は凪いだ海そのもので、羨ましくなるほど穏やかでした。

これはこれでいいのかもしれない。

そう思ってしまうことが、一番怖かったです。

そうして夫婦は逝きました。海の向こう、天の国へ。

朝になり、トレントとマドックスは50代に。
砂のお城を作る二人、何もしなければ13時間後には苦しまずに両親の元に逝ける。

けれど二人は、選択して決断しました。

 

【まとめ:でもやっぱり残酷な話だ】
姉弟はビーチを脱出し、元凶である支配人を告発します。
ヒントをくれた支配人の甥の少年との再会はグッと来ました。

真相は、いわゆる『実験・観察もの』。
加齢するビーチで、何十年もかかる新薬の治験を行なっていた。

(ここでてんかん持ちの心理学者の死の謎が解けたのよかったです)

 

しかし、真相よりも注目したいのは、姉弟の選択。
何もしなければ逝けた。
ビーチを脱出しても、その後の人生がどうなるか分からない。
両親もいないし、苦労は目に見えている。

それでも姉弟は、外に出ること、生きることを選んだ。

ここにトレントの恋人・カーラのセリフが活きます。

 

カーラ:「試さず老いるの!?」

 

穏やかな死という甘い夢にうっかり身を浸しそうになるのを、
ビシッと目を覚まさせてくれるような言葉です。

 

けれども。
やはり残酷な物語です。
恋も結婚も出産も身近な人との別れも親を見送るのも、数十年かけてやることだと思うので。

たった2日はキツい。(シンプルな表現)

 

【おまけ:特大の「そうはならんやろ」】
ホラーなので、混乱の果てに殺人鬼になっちゃう人が二人も現れるわけですが。
(正確には一人は違いますが)

その反撃方法がすごかった。
錆びたナイフで切りつけ、体内に錆が入った状態で再生したら毒になり死んだ。

もう一人は、骨がボキボキに折れた状態で再生して蜘蛛(『貞子3D』の蜘蛛貞子みたいな)状態になった。

 

そうはならんやろ通り越して、「そんなことある!?」になりました。

 

エンタメ的面白さとセンチメンタルな気持ちをくれる、

夏にぴったりな映画です!

 

次回は8月8日月曜日、
1988年制作、アメリカの元気いっぱい人形ホラー、
チャイルド・プレイ』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗