人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

創作四方山話/きのう何食べたドラマ8話で分かった二次元と三次元(=生身)の違い。

関東では今夜最終回とのこと。

嫌だ!!!

うだうだ書いても仕方ないので、一度だけ、全力で叫ばさせていただきます。

第8話から佳境に入ったこのドラマ。
ひとつのターニングポイントとなった(これも見てる時点では気づかず、あとで思い返せばアレが……となる構成がすごい)、ヨシくんとテツさんの登場です。
原作では4巻に収録されています。ものすごく好きなエピソードです。

 

 

 


【変わる演出】


「そうなんです。僕が今まで歯をくいしばって稼いできた金です。故郷の両親にはびた一文だって渡したくない」


原作でのテツさんのこの台詞は、
表情がとても穏やかで、なのに言葉は「びた一文」という強いものを選んでいて、だからこそ凄みがあって、
読み手である私が年を経るにつれ、その言葉に隠された裏側をいろいろ想像するようになりました。
このさらっとした演出はよしながふみ先生がよく使っていらして、なんというか、独特だなぁとずっと好んでました。

このイメージがずっとあって、だからドラマ版での演出は驚きました。


「そうなんです、
 それで、
 僕……
 僕があの……
 歯を食いしばってためた金を、
 ……ごめんなさい、
 田舎の両親に、びた一文渡したくないんです」


59歳の、いくつもの飲食店を経営する男性が、目に涙をためて、口にするだけで覚える痛みを堪えるように、吐き出すように、この台詞を言うのです。

たぶんたくさんの人が泣いたと思います。
安心してください、私も泣きました。

(ていうか今も泣いてる。まあいいじゃないすか。私の水分だ)

この「ごめんなさい」は何に対してなんだろう。
人前なのにみっともなく(少なくともご本人にとっては、きっと)涙を浮かべることに対してか。
それとも、「誰かの子」であるがゆえにどうしても生じてしまう罪悪感のためか。
それとも、「親には礼を尽くすべき」を絶対的に正しいとする『世間』というものに対してか。

そこからのヨシくんの、これも原作からアレンジされた台詞が胸に直撃しました。

 


原作引用
「筧氏は職場でカムアウトしていない人だからいきなり僕らが事務所へ行ったら迷惑だろうと思ってさ」

 

ドラマ引用
「いきなり私たちのような者が行ったら、迷惑じゃないかと思いましてね」

 

 


何ですかねこの台詞。
すごくつらい。
その時ツイッター開いてたんですけど、思わずつぶやきました。
「そんなふうに言わないでほしい」と。

ヨシくんもテツさんも立派なひとです。
社会的に成功して、オーガニックの調味料で料理したり服にこだわったり、きちんと日々を過ごして、態度がわるいシロさんにも気を遣って、何より愛する人と相思相愛。
とても立派なひとじゃないですか。

なのに何で、自分たちのことを「私たちのような者」なんて言うのだろうか……。

その理由を少し想像して、なんかこう、悲しいやら悔しいやら腹立たしいやら。
原作7巻の40頁のモブ野郎の台詞を読んだ時と同じ気持ちになりました。

ヨシくんがテツさんの手をぎゅっと握るところ。
シロさんの「あなたたちのために力を尽くします」と力強く言い放つところ。
映像の力のすごさを感じました。

 


【ちょっと分析】
原作の、よしながふみ的演出(もうそう呼ぶことにしよう)、確かに良いです。
でも、生身の人間が演じるには、少し違和感があるのではないだろうか。

あの血を吐くような台詞を、視聴者に届けるために、あえてエモーショナルな演出にしたのか……。

という考えに至って五体投地
いいドラマです。シナリオブック出してください。

(ところでこの一連の流れ、人によって受け止め方が全然違うと思います)

(私は親になったことはありませんので子の立場で物を考えています。テツさんのこの結論に至るまでの苦しみ。決めたけれどそれでも痛みはなくならない苦しみ。
子にとって、親を切り捨てるというのは、それほどまでに痛い)

(逆はきちんとは分からないです。親になったことがないので)

(一緒に見た母は、テツさんの結論に難色を示していました)

(同じく一緒に見た姪っ子(年齢一桁)は、「何でお父さんとお母さんにお金渡さないの? あげたらいいのに」と言っていました)

(立場が変われば意見も変わる。そんな実感)


【号泣する準備はできていたけど】
9話の指輪エピソードで大いに笑って萌えてもだえて、「世界はこんなにもハレルヤ、明日はゼッタイ晴れるや」とゴキゲンにラップしたわけですが、そこからは毎回泣きました。

10話のケンジの深掘り回で泣き、11話のクリスマスパーティーでも泣く。
たぶん12話でも泣く。知ってる。俺は詳しいんだ。

そんな感じで最終回を迎えようとするなか、

なんか気づいたらDVD-BOXを予約していました。

 

 

 


シナリオブックもよろしくおねがいしまーす。
12話はハーゲンダッツを準備して臨もう。