人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

ドラマ/大人の土ドラ・『リカ』で時代の変遷を感じた。

12月ですね。
秋ドラマで予想以上に盛り上がった、『リカ』が最終回を迎えたので、ちょこっと所感など。
原作は既読です。
ネタバレがちょこっとあるのでご注意を。

ちなみに浅野ゆう子さん・阿部寛さん主演の2003年版もうっすら覚えてます。
浅野ゆう子さんの、「リカはね……」というさやさやした囁き声が異様に印象に残ってます。

 

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【語りたいこと一覧】
高岡早紀さんの可憐なリカちゃん。
②演出が一昔前のホラーっぽくて懐かしい。
③本間がクズじゃないのは。
④雑感/リカちゃんはきっと。

 


【①②可憐な純愛モンスター】

高岡早紀さんのリカちゃん、いやはや可愛かったですね。
大矢先生や本間さんの一挙一動にキャッキャはしゃいでるの、普通に恋する乙女感がありました。
お部屋も天蓋つきのベッドやドレッサー、花柄のリネン、ハーバリウム(お花のはレア)。
画面の暗さも手伝って、2000年代最初くらいの邦画ホラーの演出・画面づくりを思い出しました。ああ懐かしい。
リカちゃんの「28歳までに結婚して幸せな家庭を作るのが女の幸せ」という信念のレトロさと相まって、すごく合ってる~すごく解釈合う~とテンション上がりました。

 

【③本間がクズじゃなくなったのは】

原作だと、本間は妻子ある身でありながら、ケータイで愛人を探すようなクッズです。
あそこまでエグい目に遭うほどのクズではないのですが、それでもまあ、クズです。

この、『モンスターに殺された側にも多少の落ち度がある』という手法は、ホラー界ではお約束ですね。
ジェイソンに殺されるのは不純異性交遊をする愚かな若者。
ぼくの大好きな三池崇史監督の『オーディション』も、主人公が自分の愛人のオーディションをしたのがキッカケ。

なのにドラマの本間は、めっちゃ善人でした。
奥さんが浮気したのに許してる。
千秋さんに個人情報を売られても許す。
(個人的にこのふたりには特に報いが無い=ずっと蚊帳の外だったのは残念)

( ・ω・)<いい人すぎだろ…。

この改変に、最初は少ししょぼんとしましたが、これも時代の流れかな、と思います。

現代は、『被害者にも落ち度がある』という考えは非常にナンセンスです。
『いじめられっ子にも悪いところはある』、『痴漢されたのは短いスカートを履いているから』と言い換えれば分かりやすいでしょうか。
けれど、本間がクズでないとひとつ問題が起こります。

善人なのに、善人でも、こんなひどい目に遭う。
悪いことなどしていない、他者に優しく接して真面目に生きているのに。

たった一人のモンスターに、ただ出くわしてしまっただけで。

これこそ新時代の恐怖。
『私は大丈夫』――そんな安全神話は元から幻想、否、願望ってなもんです。

(すごく好きなテーマですわー)

(不条理とか理不尽とか。それ自体を書きたいわけじゃないんですが)

(ちなみにこの場合の有効手段は『逃げる』一択です。戦おうとしてはいけない。話し合おうとしてはいけない。何故なら相手はモンスター)


【④雑感/リカちゃんはきっと『男』の理想の『女』】

ドラマで改めて思いました。

「リカちゃんは人殺しさえしなければ、だいぶ『理想的な女性』なんだよな」

と。
いや、だって、

①一途。
②料理はともかく、裁縫の腕はプロ並み。
③「死ねばいいのに」と願望のように言っておきながら、だいたい自分の手で殺す。
(『言葉より行動』で非常に好感が持てる)
④自分の目的を達成するためには邪魔者は排除することも厭わない。
(なんて意志の強さ)

だけでなく、

⑤ひとひとり生きたまま解体できる。
(どんな看護師だよ大門未知子もびっくりだよ)

⑥警察をめっちゃ欺く。
(証拠隠滅能力がどうのこうの問題でなく、運がめちゃくちゃいいのでは)

⑦『何もできない男』でも、愛し続ける。

いちばんのポイントは⑦です。
原作だと本間は、四肢切断&目鼻口も切り取られました。
『芋虫』の旦那よりも何も無い状態です。

コミュニケーションはたぶん取れません。
(できるできないじゃなくて、たぶん狂ってるから。ていうか狂っててほしい)

これは何に近いかというと、
『赤ちゃん』です。
本間は赤ちゃんになったのです。永遠に成長しない赤ちゃん。
なのにリカは、『リターン』によると十年以上も世話をし続けた。
ここまで来ると奥さんじゃなくて、もうお母さんです。『母親というくるったいきもの』です。

子どもから大人になれば、『何もできない』『ただ生きているだけ』のは赦されないのに、リカは赦す。
どんな姿になっても赦して愛して献身する、『女』。
理想的な『女』です。ある種の『男』にとっては。
『本当の母親』は自分より早くいなくなるけれど、この『女』は最期までいる。

理想的すぎでしょう。

まあその代償はダルマになることですけど。
(自分は絶対に嫌ですが)


【まとめ】

そんなわけで全8話、楽しかったです。
本間さんの娘のあやちゃん、まじ天使でした。
この番組の唯一の光。

あと、最終回の『今週のリカの邪魔者』でホッとしました。
よかったー最後の最後で、リカちゃんの邪魔者にならなかった。やったね!
(^-^)v


次回は8月の体験レポートです。
刀剣を触ってきた話など。