人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

名探偵の掟(著・東野圭吾)

JUGEMテーマ:ミステリ


なぜならこれは天下一が主役の話だからだ。


(前略)何よりも、探偵小説として成立しないではないか。


「やれやれ、文明の発達と共に、我々本格推理の住人も、生きにくくなるわけだなあ」






意外なことですが、東野先生の出世作です。
松田翔太さん主演でドラマ化もされました。
先生曰く、『やけくそだった』とのこと。

うん、なんかそんな感じ!


以下、目次。カッコ内のは物語のテーマ? ジャンル? みたいな。
プロローグ/ 密室宣言(トリックの王様)/意外な犯人(フーダニット)/屋敷を孤立させる理由(閉ざされた空間)/最後の一言(ダイイングメッセージ)/アリバイ宣言(時刻表トリック)/ 『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論(二時間ドラマ)/切断の理由(バラバラ殺人)/トリックの正体(???)←ネタバレになるので隠されてます。/殺すなら今(童謡殺人)/アンフェアの見本(ミステリのルール)/禁句(首なし死体)/ 凶器の話(殺人手段)/エピローグ/最後の選択(名探偵のその後)

『頭脳明晰で行動力抜群で博学多才な名探偵・天下一大五郎と、彼を『素人探偵ごときが』と邪険にしながらも協力し引き立てる典型的ツン→デレ刑事・大河原警部コンビが活躍する推理小説』の小説です。
いわゆるメタミステリです。
この時点で結構好き嫌いが分かれると思います。なので、初東野にも初ミステルにも向かない小説です。

簡単に感想、
プロローグ→脇役も辛いよ。
密室宣言→アナタ、そんなに密室好きですか? ――なんて死んだ目(推測)で問われても!
意外な犯人→犯人当てisモロ競馬の予想。最近の傾向としては本命グリグリは『いちばん最初に襲われたけど命は落としていない被害者』です。
屋敷を孤立させる理由→だってクローズドサークルの方が邪魔が入らないんだもの。主に警察の。
最後の一言→まあぶっちゃけ今わの際に考えることなんてこんなもんダヨネー、って話。
アリバイ宣言→犯人:『あきらめないでぇ! 謎を解いてぇ! 俺ここにいるぅ!』。
『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論→二時間ドラマ、みんな海の見える崖が好きっ!
切断の理由→こんな理由があってたまるかー!
トリックの正体→叙述トリックですな。
殺すなら今→タイトルが良すぎる! 好き!
アンフェアの見本→叙述トリック第二弾。しかしこの話、アンフェアな箇所がもうひとつありました……どこかは、エピローグでわかります。
禁句→ソレが無くなったらすべての物語は崩壊します。成立しません!
凶器の話→たぶんこの世でいちばん意外な凶器。
エピローグ→天下一が一人で叫んでいた。物悲しい描写の一文です。
最後の選択→シリーズものが長く続くと出る、宿命みたいなモノ。
某推理漫画もそんな感じです。昔はよかったと懐古主義を出すつもりはありませんが、今はなんかもうお人形遊びに見えます。人が死ぬことに慣れてしまった、探偵と登場人物と読者


『数合わせのための登場人物の名前なんてAとかBでいいじゃん!』には完全同意。
けれど『蟻場耕作』と『西野刑吾』には地味にウケました。

スベり気味なギャグたっぷり皮肉たっぷり(特にエピローグ)作者自身のものかもしれない迷いもたっぷり。
いまいちスッキリしないので、星はからくちです。