人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

名探偵の呪縛(著・東野圭吾)

JUGEMテーマ:ミステリ


気がつくと私は涙を流していた。その瞬間私は理解した。ここでこうして泣くために、私はこの世界にやってきたのだ――。

「忘れないで」



 


名探偵の掟』の続編です。
なんと文庫書き下ろし。ドラマ化に合わせたのかな? もしそうなら東野先生の引き出しの多さに脱帽です。

こちらはあまりオフザケ無しの物語。
小説家の男が図書館に迷い込み、出られなくなってしまった。一人の男の後を付けると、西洋の古きよき時代を思わせる謎の街に出てしまう。
そこは、『本格推理』という概念が消失した記憶の無い街。
いつの間にか探偵・天下一になってしまっていた男が、次々と起こる殺人事件とこの街に隠された呪い/謎に挑んでいく――。

『掟』が、本格推理をけちょんけちょんにして終わってしまったのでどう出るかなと思いきや――メタミステリと主人公が推理小説家ということもあって、自然と『主人公=作者本人』の図式が出来上がってしまいました。……私の頭の中で。
物語の中では、主人公は密室殺人でデビューしたのに、時の流れと共に本格推理を全否定し、自らの著作物を『こんなもの、こんなもの』と踏み躙ってます。
けれど最後には、肌に合わないけれど心の中にいつまでも置いておきたい。また、この場所=世界を描いた小説を書きたいと――社会派小説の構想を練りながら、主人公は『いつか』を思います。

もちろん完全イコールでは無いけれど、先生本人の中でいろいろありすぎるほどあったんじゃないかなーと想像してしまいます。失礼すみません、。

あと、勿忘草がロマンチックでした。
登場人物たちの自らの存在意義を確信するところも好きです。


『人が殺される話ばかりが収められているのですが、いずれも不可解な謎が冒頭にあり、それに引っ張られて最後まで頁を繰る手が止められないというものでした。とにかく面白いのです。』


そんな『本格推理』小説が、私は大好きです。