人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

四〇九号室の患者(著:綾辻行人)

評価:
綾辻 行人
南雲堂
¥ 1,529
(1995-05)

JUGEMテーマ:ミステリ


炎は、そして、一つの命と一つの心を白い灰に葬った。

わたしはいったい何者なのか?
わたしは園子だ。――むろんそうだろう。そのはずだ。そうとしか考えられない。
しかし、(中略)
その疑念が具体的にどんな形を取りうるのかは、わたしには分からなかった。あまりに掴みどころのない、それでいてとても不吉な陰を含み持った、それは“予感”であり“謎”だった。






短編集・『フリークス』にも収録されているこの中編。
けれど装丁・レイアウトが好みすぎて泣きそうなのであえてコチラをご紹介。

事故で全身に重傷を負い、更には記憶まで失くした『わたし』が自分の正体を突き止めるまでの記録。
主に日記形式の一人称です。その箇所のレイアウトがモロに日記で、本当に個人の回想録を読んでいる気分になりました。

自らの正体と、そして炎により負ってしまった火傷――二つの重荷が『わたし』の心を幾度となく切り裂きます。
特に、いつまでも顔の包帯が取れずに自分の姿かたちへの疑念と恐怖にじんわりと侵蝕されていくページは……めちゃくちゃ怖かったです。一頁見開きの四文字が……。
窓抜きカバーをとったら出てくる絵も怖い!

綾辻先生お得意のどんでん返しもすごい。
未来など無いと絶望し、せめて過去を取り戻して安寧を得ようと必死にもがいていた『わたし』だったのに。
やっと掴んだ答えは、その先に硝子の破片を孕んでいた。触れた瞬間、ばっさりと切れて。

可哀想です。

かわいそう。


(何て可哀想な、お人形さん)





あ、あとこの物語の中核(=真実)となるソレですが、想像するとなんかスゴイです。
滑稽で、異様で、痛ましい。
そして理解できなくもない。