人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

ガリレオの苦悩(著・東野圭吾)

JUGEMテーマ:ミステリ


「――(前略)先生が何を願っていようと、一日でも早く刑務所から出られるように努力します(後略)――」
「人の心も科学です。とてつもなく奥深い」

(『操縦る』より)

「――(前略)人間としての評価はともかく、科学者としてのおまえは、非常に評価されているし、尊敬もされている(後略)――」
「ちょっと待ってくれ」

(『攪乱す』より)


科学を殺人の道具に使う人間は許さない―絶対に。







あ、れ……福山さん……? (ノ △=)ゴシゴシ

と、読みながら常時ドラマ版ガリレオで湯川先生役を演じた福山雅治さんの顔と声としぐさと雰囲気がフラッシュバックして大変でした。
前作の『探偵ガリレオ』も『予知夢』を読んだときは福山ガリレオのイメージはとんと湧かなかったのに……なんとなく、東野先生は福山ガリレオイメージで書いたんかな、と思いました。

ラインナップは、
『落下る/操縦る/密室る/指標す/攪乱す』です。


『落下る』
あるマンションで起きた飛び降り。自殺か他殺か。
原作で内海薫@女刑事初登場の章。どうしようぶっちゃけドラマ版より優秀に見えて且つ好感が持てました。女性ならではの観察力がすごいなーと思いました。
容疑者Xの献身』の事件があってから、警察に協力することは控えていた模様。
渋る湯川先生を、内海刑事が頼み込んできます。そこから再び始まる、ガリレオ先生の警察協力。
SPドラマ版ではこの宅配ピザの青年が疑われて、それが若い頃の草薙刑事でしたね。
ガリレオ最初の事件と銘打たれて、若い湯川先生は三浦春馬さんが演じてらっしゃいました。

『操縦る』
湯川先生の恩師の放蕩息子が、自宅の離れで殺される。
SPドラマ版では湯川&草薙の最初の事件として扱われていました。放蕩息子がより屑でヒドかったなー。
犯人は……『容疑者Xの献身』の石神を彷彿されました。行動とか論理とか。科学者ってのはみんなああも純粋で献身的なものなのかと思いました。娘さんも優しすぎる。(;△;)

『密室る』
湯川先生の大学時代の知人が経営するペンションでの密室(?)殺人事件。
写真は平面的なものだ、と思い込んだら火傷します。
知人さんが奥さんのためにワインを用意するラストがじんわりきました。
トリックとはあまり関係ありませんが、お風呂の泡が発生する現象にひきつけられました。

『指標す』
水晶の振り子を使ったダウジングで物事を決める少女と、老女の強盗殺人事件。
科学的トリック無し。ロジックを解く感じ。
草薙さんの冷静さを狂わせる、『健気に生きている二人暮らしの母娘』はあの二人のことかと思うとああ繋がっているんだなと思い、少し嬉しくなりました。

『攪乱す』
警察に犯行声明が届いた。内容は、『魔の手』を使って人を殺していく、止めたかったら湯川に協力を求めろという挑戦状だった。
ドラマの二時間SPに使えそうな内容でした。ばっちりガリレオシリーズの売りでもある科学的トリックが使われてました。
動機は完全逆恨み。妄想による逆ギレでした。幸せになれないタイプだな、と思いました。
草薙刑事のお土産の一升瓶に、ぴくりと眉を動かして心を反応させる湯川先生。
人としてはともかく、科学者としては評判高いヨーと言われ、むきになっちゃう湯川先生。
ちょっと可愛いとか思いました。(笑)


草薙刑事はこの話の最後に言います。
これから犯罪はどんどん複雑化し、ハイテクを使ったケースも増えてくる。そういうときに湯川先生の力は必要だ。これに懲りずに力を貸して欲しい――と。

探偵ガリレオの警察協力は、まだまだ続く。