人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/ブラック・フォン

ゲオで借りたホラー映画です。
2022年制作、アメリカのサイコスリラーです。

 

 

 

 


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【あらすじ】
1978年、デンバー北部。
いじめられっ子の兄フィニーと予知夢を見る妹グウェンは、父や同級生からの暴力にじっとやり過ごす日々を送っていた。
町で、『グラバー』と呼ばれる怪人が子どもを黒い風船の車に乗せて連れ去る事件が多発する。
フィニーも誘拐され、地下室に閉じ込められる。
繋がらない黒電話を使い、フィニーは脱出を図る。

 

 

【ひとこと感想】
息を殺していた子どもが『大きなもの』を乗り越える、通過儀礼(イニシエーション)映画。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①兄妹は、暴力が通り過ぎるのをひたすら待つ
②兄妹は、内部と外部から脱出をはかる
③「物理で……?」

 

【① 兄妹は、暴力が通り過ぎるのをひたすら待つ】
主人公の兄妹は、ふたつの暴力にさらされています。

ひとつは家。
飲んだくれの父親は、グウェンが母親と同じ『予知夢を見る』能力を持つことを厭って殴ります。
ひとつは学校。
調子こばった悪ガキどもは、フィニーを追いかけ回し、笑いながら殴ります。

しかし1970年代という時代性なのか、それともそういうものなのか、それらの暴力は完全に彼らの『日常』でした。

父親が児童虐待で通報されることもない。
『普通』の子のように野球チームに入り、友達の家に泊まりに行く兄妹。
グウェンは非常に気の強い子で、父親に「殴ったら酒捨てるぞ!」と脅したり、兄をいじめる男子たちに食ってかかったりします。

強かな子たちだ……と思いきや。

どんなに全力で抵抗しても所詮は女の子。年上の男子たち、ひいては父親に敵うわけがない。

「これは無理だ」と悟り、少し離れた場所で座り込んで待ちます。

相手が飽きたり疲れたりするのを。
『暴力の時間』が過ぎ去るのを。
ただ、待つ。

リアルな暴力描写です。
生活の中に完全に溶け込んだ暴力と、真綿の絶望がありました。

そんな中でえらいかっこよかったのが、フィニーの同級生のロビン少年。
メキシコ系の彼はケンカの強い『いいやつ』です。
悪魔のいけにえサイコー」というセリフで私の好感度はマックスです。(ちょろいオタク)

しかしロビンは黒い風船の車で連れ去られ、
同じくフィニーも、グラバーに地下室に閉じ込められます。

 

【②兄妹は、内部と外部から脱出をはかる】
トイレがあるだけの灰色の地下室。
相手は目的不明(マジで分からない)殺人鬼。
アイテムはつながらないはずの黒電話のみ。

電話から、グラバーに誘拐されてきた少年たちの声がします。

 

ブルース・ヤマダ:「名前は忘れた。それを最初に失う」

 

(ここのセリフ、つらかったです)

先人たち(?)のアドバイスをもとに、フィニーは脱出を試みます。
グウェンも自分の能力を活用しようと父親に提案。
誘拐された少年たちの夢――(これは予知夢じゃなくて千里眼とかのサイコメトリーとかの能力では)――からヒントを得ます。

穴を掘る、電気ケーブルや丸めたラグを使って窓を開けようとする、壁を壊すなど色々試しましたが、

全っ部、うまくいきませんでした。

( ・⌓・)<ストレス溜まるぅ……

それどころか 何故か上半身裸でベルト持って待ち構えるグラバー が意味不明すぎてイラァっとします🙃

(地下室から上がってくるのを待ち構えていたのですが。でもなんでハダカ???)

 

【③「物理で……?」】
入り口の鍵を開けることに成功し、一旦は脱出できたけど捕まってしまったフィニー。

絶望して苛立つ彼に、
とうとうロビンから電話がかかります。

 

ロビン:「フィン。俺みたいには死ぬな」
    「君はファイターだ。俺のためにやってくれ」

 

そう力強い言葉を投げかけます。
ここグッと来ました。ヒーローからもらう叱咤激励の言葉。殺人鬼に立ち向かう勇気だってわきます。

( ;ω;).。oO(こういうのに弱ぇんだ)

そしてロビンは、 黒電話に土を詰める ように言います。

( ・ω・).。oO(……ん?)

 

ロビン:「電話を構え、素早く下げる。ステップでかわし、振れ!」

 

( ・⌓・)<物理で……?

この展開、戸惑いました。
えっ、ここまで散々脱出という平和的解決を目指していたのに、最終的にはガチンコ勝負なの?
いやまあ確かに『黒電話を使って脱出を図る』に違いないけども。

なんやかんやで最後は物理なのがサイコーにブラムハウスだなぁ、と思いました。

 

【まとめ:父殺しは通過儀礼だ】
と、まあ最終的手段はコブシでしたが、覚醒したフィニーが本当に強くて満足です。

しかも失敗した方法もきちんと再利用しているのが心憎い。
掘った穴を落とし穴に転用したり、電気コードと窓の金属枠で引っ掛けたり。
壁の穴は冷凍庫でふさがっていたのですが、中の冷凍肉で猟犬の気を引いたり。

一番のお気に入りは、少年たちの『声』がグラバーに届いたことですね。
最初とラストでセリフの意味が変わる仕掛け、大好きです。

グラバーを黒電話でタコ殴りにして、少年たちの悲願を叶えたフィニー。
まるきり別人のようでした。

これはいわゆる、『父殺しの物語』です。
大いなる存在を乗り越える物語。
グウェンは実の父親、フィニーは殺人鬼。

『父殺し』を経て、暴力が去るのをじっと待つだけだった子どもが、一人前になる過程。
そんな『通過儀礼』を描いた映画だと思いました。

 

【備考:マックスとは何だったのか】
マックスというキャラがいました。

グラバーの弟で。
兄が犯人の誘拐事件をそうとは知らずに調べていて。
フィニーが閉じ込められた地下室の真上に住んでいたのですが。

グラパーに普通に殺されました。

あいつ何やったん?
(素朴かつ率直な疑問)

 

(あと、「電話の構え〜」の黒電話撲殺レクチャーが少々ツボに入りました)

(エクササイズの時でも思い出したい)(※ガチ余談)

 

次回は12月26日月曜日、12月28日水曜日、
1984年制作、アメリカのキュートなホラーファンタジー
グレムリン』の話をします。

 

( ・ω・)<今年最後だよ!

 

鳥谷綾斗