人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

来る(映画)

JUGEMテーマ:Horror

 

関西で公開終了して1ヶ月以上経ちましたし、公式サイトのシアター情報が謎なので、ネタバレ全開で感想記事を書きます。

 

『貞子vs伽椰子(映画)』の記事にもあるように、公開をめちゃんこ楽しみにしておりました。
いよいよ角川ホラーが本領発揮するのか。Jホラーの復権の兆しやで! と多感な時期に『リング』をぶち込まれた世代としてはソワソワしっぱなしでした。

 

そしていよいよ1月末に観に行った(公開終了直前だったのにほとんど席埋まってた)のですが、ド率直な感想。

 

ぼぎわんの方が喰われてるじゃないすか。

 

( ゚д゚)

 

†┏┛ぼぎわん┗┓†

 


あらすじ。
妻と結婚して、『幸せな家庭』を築く田原秀樹。
娘が生まれる前、彼の前に奇妙な訪問者が現れた。正体の分からない『それ』と関わった秀樹の後輩は、不可解で恐ろしい死を遂げる。
そして娘が2歳になった今、『あれ』としか呼ばれないーー呼んではいけない化け物が、再び現れる。

 


【原作よりも可哀想な田原秀樹さん】


この物語のひとつ目の特徴は、エセリア充イクメンパパ=田原秀樹さんです。
原作では、一見すると、近所のおばちゃんに「あらぁ、娘さんをちゃんと抱っこして。いいパパねぇ。ママは感謝しなきゃ」と言われそうな彼が実は……という巧い見せ方でキャラを立ててました。
周囲にアピールするためにイクメンを気取る――これは『インスタ蠅』と呼ばれる人種(見たことないのでそんなの現実に存在してるかどうかは分かりませんが)と同種ですかねーーそういう現代的な、新しい『横暴な父』の姿を描いてました。

 

ところがどっこい。

田原秀樹さん、制作側ってか中島監督は彼に故郷の村でも焼かれたのかってくらいにボッコボコにされてました。

 

(´・ω・)<oh……

 

映画では最初っから仮面が剥がれていて、しかも周囲の人間、特に学生時代の友人から煙たがれていました。
見ててめちゃくちゃ痛々しい。秀樹にムカつく前に同情しちまいます。

しかも原作では妻・香奈が「秀樹はやり方が間違っていただけで、家族や私たちの娘を守りたいという気持ちは本物だった」と気づくくだりがあったんですが、そちらも無し。まさかの野崎のセリフになってました。
あの『香奈の気づき』は一種の救いだと思えて、好きな場面でしたのに無念です。

 

ですが、代わりに祓い屋・逢坂セツ子さんとのやりとりが追加されてました。これで秀樹に素直な同情を向けられるのはよかったです。

 


【何故このセリフをカットしたし】

 

「あんなもんは呼ばなければ来ない」

 

という、原作の中でいちばん好きなセリフが(たぶん)カットされてました。
おそらく無かったと思うんですけどどうなんでしょう。誰か教えてリピった人。
ぼぎわんを退治してほしいと依頼された祓い屋が断固拒否した時に放ったセリフです。
これ大好きです。ぼぎわんがいかに強大で凶悪な存在なのか、素晴らしく表す巧いセリフだと思います。

 


【でもこの追加セリフはナイスです】

 

真琴ちゃん「来るかも」
 JK巫女さん「来るよ」
 琴子ねーちゃん「来なさい」

 

三者の実力がよく分かってイイネ!
JK巫女さんだけじゃなくて、祓い屋の面々が新幹線やタクシーで集結したり、カプセルホテルで祓い屋衣装に着替えるシーンは燃えました。
途中でどんどん死んでいくのもド派手で贅沢。

 


【総括=柴田理恵に完全に喰われたぼぎわん】


この映画でいちばん語るべき存在は、キャラが立ちまくった真琴・琴子姉妹ではなく、映画によくいる過去に囚われたアウトロー・野崎でもなく、逢坂セツ子役の柴田理恵さんだというのは間違いないでしょう。

 

かっこよかった。

 

ラーメン屋で『あれ』に攻撃されて片腕を失って退場かと思えば、隻腕の祓い屋として戦い、さまよっていた秀樹を優しく導き、周囲が次々と斃れ、祭壇もマンションも崩壊するなか、独りでも戦い続ける様は物語内随一のヒーローです。

 

原作では即退場の人でした。『スパイダーマン』のセリフを引用して、秀樹を助けようとした非常にいい人です。
確かに死ぬには惜しい人でしたので、この改変はグッジョブオブグッジョブです。

 

対してぼぎわんの、『なんかすごいのはなんとなく分かるんだけどあまり印象に残らない』っぷりよ。


声真似以外の直接的な怪異といえば、真っ赤な手の痕を残したくらいやがな。
秀樹の前にかじったのが『怪談新耳袋』の製作陣だったんです? ……って、書いて思ったんですけど、手の痕をぺたぺたしたのも、使い魔として青虫を多用したのも、ぼぎわんの正体が『幼い子ども』だからですかね。

 


【総括】


メリハリにおける『ハリ』ばかりの作りでラスト45分はめっちゃ滾る柴田理恵が死ぬほどかっこいい映画。

 

(あと、部屋の荒れ具合やキスシーンのねっちょり具合、ごちゃごちゃした画面づくりから、やっぱり中島監督は猥雑萌えなんだなーと再確認しました)

 

(あとあと、野崎に関しては壮大な公式との解釈違いが起こってだいぶ落ち込みました)

 

(続編希望。タイトルが『人形』や『家』になったらどうしよう。『恐怖小説』はいいかもしれない。映画なのに『恐怖小説』というタイトルは洒落てる)

 

 

【余談・これからのホラー映画の話をしよう】

 

お次は『記憶屋』が実写化しますね。
主演は山田涼介さん。実にいいですね。

 

さらに『屍人荘の殺人』も実写化です。
主演は俺たちの神木きゅんこと神木隆之介さんです。これは勝ちに来てますね。

 

なんかここまで来たら、是非とも作者の先生と鮎川哲也賞の選考委員の先生方と編集部の皆さんにカメオ出演していただきたい。モブゾンビで。

なんかそれくらいの遊び心が欲しい、とついつい望んでしまう――貪欲にエンタメを求める、化け物よりも強欲たる『消費者』でした。