人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/エクソシスト

アマプラで観た映画シリーズです。
1973年制作、アメリカのオカルト映画の金字塔です。

 

 

 

 


www.youtube.com

 

 

【あらすじ】
一人娘・リーガンとふたりで暮らす女優・クリス。
ある日突然、リーガンの様子がおかしくなる。暴れて卑猥な言葉を吐き、拘束が必要な状態にまで陥る。
あらゆる医療をもっても原因すら分からない。クリスは、神父による『悪魔祓い(エクソシズム)』を頼る。

 

【ひとこと感想】
神に祈りたくなるのに神は不在だった、絶望からの救済ドラマ。

 

※全力ネタバレです。

 

 

【3つのポイント】
①リーガン役の怪演と名演
②多くの『神に祈りたくなる』場面
③しかし神は不在だった

 

【①リーガン役の怪演と名演】
悪魔に取り憑かれた少女・リーガンの中の人の演技がとにかくすごい。

冒頭は、無邪気で明るいけれど母親は忙しくて父親は無関心、遊び相手が乳母しかおらず、『キャプテン・ハウディ』という日本でいうコックリさんで遊ぶ孤独な少女の顔と、
世にも醜悪で嫌らしい表情の悪魔憑きの顔を、見事に演じ分けていられました。

エクソシスト』といえば、いくつもの名恐怖場面が浮かびます。
180度回転する首、スパイダーウォークと呼ばれるブリッジ状態で階段を下りる動作、ポルターガイストや空中浮遊。

それらのどれよりも恐ろしかったのは、リーガンが医療的な検査を受ける場面です。
小さな女の子が頸動脈に細い管を刺されて血を抜かれるのは、観ていて自分の首を押さえるほど痛々しい。

間違いなく、リーガンこそがこの作品の立役者でした。
(当時14歳と知って驚きました)

 

【②多くの『神に祈りたくなる』場面】
悪魔祓いをする神父はふたり。

年老いた、悪魔祓いの経験が豊富なメリン神父。
信仰を失いかけ、最初は精神科医として接しようとするカラス神父。

カラス神父は、病気の母親が精神病棟に収容され、孤独死させてしまいました。
病院内は、同じように正気を失ったあるいは失いかけた人たちが、(言い方は悪いですが)ゾンビのように徘徊し、カラス神父の元へ集まってきます。
まるで助けを求めるように、何かを訴えるように。

凶暴化するリーガンに振り回されるクリスの場面も重なって、

これは、
神を信じない人間でも、
神に祈りたくなる場面だ。

と、つい思いました。

前触れなしに変わってしまった娘を間近で目にする恐怖。
けれど誰にも頼れない。
自分を育ててくれた母親が弱り、動けなくなるのを見せつけられる恐怖。
けれど自分には何もできない。

地獄とはこういうものだ、と容赦なく突きつけてきました。しんどい。

 

【③しかし神は不在だった】
結果的に悪魔祓い――神の力を借りて解決しようとしますが、残酷にも提示されたのは、

「神の不在」

でした。

何故だ。悪魔がいるなら神もいるはずなのに。
長年神に仕えてきたメリン神父は、志半ばで命を落としました。
神がいるなら敬虔なしもべ(※作中使用語)である彼を何故死なせるのか。

残されたカラス神父は、決定的に神に絶望し、目の前の悪魔に怒りをぶつけます。

 

カラス神父:「俺の中に入ってみろ!」

 

そこからの1分以下の短すぎる展開は、
これまでの長い試行錯誤が幻のように、理想的な結末――「リーガンを助ける」を叶えました。

 

【まとめ:信仰の推定正体】

「カラス神父は自分の中の神に従った」

と考えると少々陳腐かもしれません。

けれど、結局『信仰』とはそういうことなのかもしれない。

そもそも神様に何かしてもらおうと考える方が間違ってるのかもしれない。

よく『神様は人間に乗り越えられない試練は与えない』と聞きますが、あれは、

( ・ω・)<そう思わないとやってられない。

ということなのかもしれません。

 

……かもしれない論が多すぎ問題。ゲシュ崩起こすわ。
オカルト映画の金字塔は、神の存在への疑問を呈示するものでしたってことです。


ひとつだけ確かなのは、メリン神父もカラス神父も、最期まで戦って、弱さにも悪魔にも負けず目的を果たして、少女を救ったという事実です。
それだけは絶対に間違いない。立派な生き様のヒーローでした。

 

【余談】
さて今回の鑑賞で思わず緑色のスライムを吐きそうになったのが、

アマプラ版にはスパイダーウォークがなかった。

でした。最後まで見て目玉飛び出た。
あの死ぬほど有名な場面は、ディレクターズ・カット版で観れるそうです。
まじすか。そんなマニアックなのに代表的場面扱いされるのすごいな。

ちなみに何故カットされたかと言うと、「なんかうまく合わない気がしたから(※要約)」だそうです。ぐぬぅ。

そして、リーガンの部屋が終始寒そうだったのが印象的でしたね。
部屋の中なのに吐く息が白いのが異質でした。

 

 

次回は3月28日月曜日、
2014年制作、フィリピンのドールホラー映画、
『生き人形マリア』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗