映画館で観てきました。
緊急事態宣言のために4月からずっと休館だった映画館。
「なぜ公開初日に観に行かなかったんだ」と袖を噛み枕を濡らす日々でした。
そして待望の休館明け――そしてまさかの6月3日まで上映されると知り――
( ;ω;)<ありがとうTOHOシネマズ梅田さん!!!
嬉し泣きしながら来た🥲
— 鳥谷綾斗💯*連載中「殺人権利、お売りします。」 (@medeai) 2021年6月2日
今日の日付になった瞬間にチケット買った🥲
上映してくれててありがとうの気持ちを込めてマンゴーフローズンソーダなるものを買って、いってきまーーーーす!!! pic.twitter.com/nWQakDpEe9
日付が変わった瞬間に最高の席を予約し、感謝のフローズンマンゴーソーダをお供に堪能してきました。
やっぱり映画館最高ですね!
⸜( ´ ꒳ ` )⸝✩︎⡱
閑話休題。
2020年製作、アメリカのホラーコメディヒューマンドラマです。
(原題は『Freaky』=入れ替わり映画の名作が元ネタのようです)
※はしゃいで全力ネタバレです。
【あらすじ】
内気な女子高生・ミリー。
父を亡くし、家では酒浸りで過干渉な母と仕事に逃げる姉に挟まれ、学校では教師にも同級生にもいじめられ、我慢を強いられてきた。
学園祭の夜、彼女は「ブリスフィールド・ブッチャー」と呼ばれる大男の殺人鬼に遭遇する。
謎の短剣で刺された瞬間、ミリーとブッチャーの魂が入れ替わった。
【ひとこと感想】
「女には向かない職業第一位は殺人鬼?」なグロコメディ。
【3つのポイント】
①約束された面白さ。
②滞る惨殺とクズしか死なない気遣い。
③見た目で判断したらダメだった。
【①約束された面白さ】
最初に予告編を見た時、
「その手があったか……!」
と思いました。
「なんでそれを思いつかなかったんだ……!」
と本気で悔しがりました。
入れ替わりもの自体は古典的な設定(この設定の最古の記憶は、観月ありささんといしだ壱成さんのドラマ・『放課後』です)ですが、それをホラー映画の殺人鬼とJKでやるとは。
この勝利しかないコンセプトに期待値は100。
しかも制作がブラムハウスです。
近年の「アメリカ製の面白いホラーと言ったら大抵ブラムハウス」とまで言われる安心と信頼のスタジオです。
そりゃあ期待値が10000000000にもなるさ!!!
【②滞る惨殺とクズしか死なない気遣い】
いざ観てみると、なんて気遣いにあふれた展開だと思いました。
何せ殺されるのがクズしかいない。
ブッチャーinミリーになってからは、承認欲求モンスターのいじめっ子女子と、高圧的なパワハラ教師などしか殺されてません。
(ちなみにこの教師にセクハラ要素が皆無だった点に固い倫理観を感じました。邦画なら絶対あったぞセクハラ教師要素。
ちなみのちなみに変わったセクハラ要素といえば、ゲイの友達が別のゲイに無理やりキスされる場面がありました。
これはセクハラを容認していると性別関係なく尊厳を踏みにじられるぞ、という警告かもしれない)。
ブッチャーの自己紹介シーンである冒頭でも、パーティー中の高校生が四人ほど殺されましたが、まあ「唐突に乳繰り合うカップル」と「ワンチャン狙ってる男」だからいいんじゃないですかね。
(※ホラー映画特有のぶっ壊れ倫理です。現実に持ち込まないでください)
それに巻き込まれたワンチャン狙われる女子は可哀想ですが、感情移入する前に死んだから大丈夫です。(※ホラー映画特有のぶっ壊れ倫理以下略)
途中、ジョシュとブッチャー(体はミリー)が二人きりになって、「もしかしてジョシュ死んじゃうの……?」と不安になりましたが大丈夫でした! ジョシュのオカンも無事でした!
なんて気遣い。
あくまでコメディだから、という強い意志を感じました。
さて、「よし、女子高生の体になったしどんどん殺すぞー!」と超はしゃぐブッチャー。
ですが、思うようにはいきません。
元々の怪力の巨体なら余裕で殺せたのに、今は華奢な女の子の体。
最初のいじめっ子女子以外は返り討ちに遭ってしまいます。
ここで観る側もフラストレーションを感じ、ブッチャーに感情移入してしまうクールな造り。
なのでクライマックスの学園祭のダンパ、ミリーをいじめていたのにちょっとオシャレしただけでモーションをかけてくる下半身系男子が現れた時、
殺されるべきクズきたー!
やったー! しかも3人だー!
( ゚∀゚)o彡゚
と、心の中でガッツポーズ取りました。
(※ホラー映画特有のぶっ壊れ倫理観です。現実ではコンプライアンスを守ってます)
しかし、案外あっさりしていたのが少々残念。
個人的にはクズの股間をチェーンソーで狙うのはとても良かったのですが、もう少しガッツリ描写でお願いしたかったです。
ついでに「なぜ入れ替わったのか?」の理由が「謎の短剣(たぶんスペイン産)のせいです」というのも親切でした。
(この作品の場合、謎は余計なノイズになる)
【③見た目で判断したらダメだった】
野暮ったい服装でよわよわ女子だったミリーが、ブッチャーに入られ、クールなアイメイクと真っ赤なリップ、赤い革ジャンと無表情で武装したり。
ジェイソンのようなお面を被っていなくても、獲物を狙う肉食の虫のような様相だったブッチャーが、ミリーに入られ、乙女ポーズと「ぴえん🥺」な表情で右往左往したり。
変身の面白さもあって、役者さんすごかったです!
特にミリーinブッチャーの走り方が最高でした。
漫画なら「ぱたぱた」と丸文字で擬音が書かれそうな、可愛いトロくささでした。
そして何やかんやあって、ミリーは片想いのブッカーと心を通じ合わせます。(ポエムで。少女漫画の世界か)
ミリー(体はブッチャー)の隣に座り、彼は甘やかな声で彼女にささやきます。
「今、キスしたら変かな?」
ここで場内に失笑が起こりました。
私はと言いますと、
( ˙-˙ ).。oO(だいぶ変です、と思いかけたけど別に変じゃないな……可愛いもんなこのミリー。いやでも体は殺人鬼なわけで……でも中身はミリーで……あれ「変」って何だっけ……?)
さらにクライマックス。
元に戻るために、ミリーはブッチャーを追いかけます。
この『大男に追いかけられる少女』という構図、「アメリカホラーのクライマックスで絶対見るやつ」なのですが、大変オツです。この作品に限っては、正義側=観客が応援する側があべこべなのです。
人はかくも外見に惑わされるもの、と再認識しました。
【まとめ:ジャイアントキリングで喰らいつけ】
弱気なミリーの友達が黒人の女の子・ナイラとゲイの男の子・ジョシュというチョイスがまた印象深いですね。
これまでのブラムハウス作品を観る限り、この子たちは「立場的に弱い」とされる人たちです。
(ナイラとジョシュがブッチャーに遭遇した時、「ゲイと黒人じゃ生き残れない!」とメタ発言もありました)
そんな「弱い立場」の人たちが戦う物語でもあります。
最後の最後、ブッチャーは言います。
「おまえになって、おまえの弱さを感じた」
母親の言いなりで姉の劣化版の娘だと侮蔑し、ミリーにこのまま殺されちまえと唆します。
ですがミリーは、そんな言葉に負けず、ブッチャーの股間を蹴って(リーサルウェポンとルビを打ちたい)、容赦なく串刺します。
死んだブッチャーに吐き捨てたセリフ、
「私はいいタマよ」
最高でした。
ミリーは別に弱くなかったし、いじめてくる連中は別に強くなかった。
(ミリーinブッチャーがいじめっ子男子を力で脅し、失禁つきで許しを乞われる場面もありました。自分より強いものには弱いってやつです)
恐ろしい殺人鬼すら、結託と知恵と勇気で倒せる。
夫恋しさに酒浸りになる母親も、家族が煩わしくて仕事に逃げる姉も、我慢を選択し続けたミリーも。
弱いところがあるだけで、踏み潰されるだけの存在では決して無かった。
という、私の大好きなテーマが盛り込まれていました!
友情と恋愛と家族愛で殺人鬼――この世で一番恐ろしいもの・『死』をもぶっ倒す。
清々しくも、ちょっとブラックなラストでした。
【次回予告】
1970年代の日本製作、
吸血鬼ものの怪奇映画、『血を吸うシリーズ』です。
ロマンがあふれて止まりませんでした!
鳥谷綾斗