人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

“文学少女”と穢名の天使(著:野村美月)

JUGEMテーマ:ライトノベル

「それは、『オペラ座の怪人』を最後まで読まなければ、わからないのよっ!」
「(前略)自分から、水戸さんとの思い出を穢さないでっ!」



それは憎しみでも、怒りでも、呪詛でもない、親友を想う純粋な叫びだった。



ななせは可愛い。本当に可愛い。世界でいっっっちばん可愛い。





文学少女四巻です。
心葉くんのクラスメイト、ツンデレ琴吹さん中心の物語です。
ぶっちゃけ、琴吹さんは苦手でした。ツンデレなのはわかる(ワザとらしい『~なんだからねっ』の連発とか)んですがキツすきダローと思ってたんですが、もーほんと見方が変わりました。
ほんとは優しくて友達思いで情が深い、いい子です。素直になれないだけで。天邪鬼なだけで。

題材は『オペラ座の怪人』です。
金田一少年の事件簿』で再三モチーフされてますので、私もさわりくらいは知っています。あと映画を観たことが……シャンデリアのシーンは圧巻ですね。
音楽学校に歌手志望として通う、琴吹さんの親友の『夕歌』が失踪します。電話やメールはあるけれど、自宅は荒れ果てて、発表会が近いのに学校も何日も無断欠席している。
受験のために文芸部はお休み中の遠子先輩に代わって(?)、心葉君は琴吹さんと調査を開始します。

この夕歌がクリスチーヌです。
彼女は、『天使』と呼ばれる謎の人物に歌のレッスンを受け、飛躍的に伸びます。その人物が『ファントム』です。
そして彼女の恋人が『ラウル』です。
ファントムとラウルの正体が驚きでした……。この小説、脇役だと思っていた人物が実は超重要キャラだったってのが多く、なんていうか無駄が無くて好感持てるなあ。

この夕歌が、とにもかくにも可哀想。
家のことで酷いところで働いて、酷い目に遭っても夢のために頑張っていたのに、その夢が叶いそうなところで、あんな……。
琴吹さんへの友愛のキモチが、本当に本当に泣きそうでした。つーか泣きました。

天才、とかつて呼ばれた人たちのそれぞれの苦悩。その中には心葉君も入っています。
何故かな。もともとあったのは、好きだから、とかっていう純粋な気持ちだったのに。
才能に振り回され、大きな影を落としています。それはいつまでもいつまでも追いかけてきて、逃げられません。ついには最悪の形で喰われてしまいます。
夕歌みたいに、『歌うのが幸せ』のではダメなのか……。


個人的に好きなシーン。
発表会の題目、『トゥーランドット』のシーン。ここは本当に圧倒されました。

もうひとつ。情報収集のためにオジサンを誘惑する(!?)遠子先輩の台詞。
「(古今東西の恋愛小説のタイトルを挙げて――前略)読破した文学少女よ。経験はなくても知識はばっちりよ」
バッチリなんすか(笑)
好きです遠子先輩。

文学少女』の手をゆっくり引くような導きで、『天使』は哀しみの鎖に羽根を雁字搦めにするような、悲しいことにはなりませんでした。
『天使』は心葉君に、かつて天才作家と呼ばれた彼に問いかけました。

――『井上ミウは、二作目を書くと思うか?』

そんなわけで次回は、とうとう『美羽』の登場です。