人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

悪意(著:東野圭吾)

JUGEMテーマ:ミステリ

私は断言する。そんな人間は親友ではない。 

『(前略)彼は今まで、世の中にこれほどの悪意が存在するとは、想像もしていなかったのだ』






開始六十頁で犯人がわかります。早っ。
しかしこの話の本髄は、ホワイダニット=どうして殺したか、です。
『殺人動機とは何なんだろうか』というのがこの作品のテーマだそうで。

おっと、あらすじ。
加賀恭一郎シリーズ第三弾です。
人気作家・日高邦彦が自宅で殺された。発見者は、妻の理恵と友人の野々口修。
近所の猫問題や作品に対するクレームに悩み、外国で暮らそうと出国する前夜、何が起こったのか。

一人称形式――というより、手記の形を借りて、野々口と加賀刑事の視点で進みます。
しかしラストの二章は、証言者たちと事件を解明する加賀刑事の話し言葉で書かれていて、一気にスピードアップします。
ちょっとココが残念だったなあ。
表現と統一のための手法とはいえ、最後の章は地の文で読みたかったな。と、こんな顔で→ 思いました。

そして私は、うっかりコレを何年か前に間寛平さん主演のドラマで観ていたので、悔しいことにうっすら記憶が残っていました。ああー!
しかも解決篇一気に。ああー!

でも十分面白かった!

犯人の手記から事件の章は語られていたのですから、すべて嘘だと考えてもいいはずなのに、何故か解明にするにつれ、ある違和感がありました。
これは何の違和感だろう……どうしてアノヒトが良く言われるたびにブレを感じるんだろう……と思ったらそういうことか!
小説家×小説家の事件ならではの仕掛けでした。

そして、過去のいじめが関係していると知り、加賀刑事は教師時代の自分を思い出します。陰惨ないじめの末の最悪な事件でした。逃げたくなるのもわかるなあ。でも、加賀刑事はそんな自分を生涯許さないんでしょね……。
そのときのエピソードで、数学教師がカンニングしていると断定した理由が納得いくものでした。あー東野先生やっぱり理系だなーと思いました。

動機のための殺人。
殺人のための動機。
殺人のための殺人。
動機のための動機。

この四つのどれかに分類すると、今回の事件は四番目の『動機のための動機』でした。

ラストの、いちばんゾワっとした鳥肌モノの加賀刑事の台詞。
作中のある人物のひそみに倣って書いてみた。


(前略)
「では手術が成功することを、心より祈っております。あなたには、何としてでも生きていてもらいたいのです」
 加賀刑事は散らばったものを片し始めた。そして続けた。
 ふと見ると、彼は右手の中指を爪の先でいじっていた。急に気になりだしたとでも言うように。
「法廷が待っていますから」


……お粗末さまでした。