人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/新感染半島 ファイナル・ステージ

2021年1月、映画館で鑑賞してきました。
なぜ感想が11ヶ月もかかったのか。光陰って矢の如しだよね、としか言えません。

思い出はチョコクリームチュリトスを食べたことです。オイシカッタァ😋

2020年製作、韓国のゾンビ映画です。
(ちなみに原題は『半島』です。シンプルでかっこいいけど確かに何の話か分かりにくい、でももう少し邦題どうにかならんかったか)

 

 

全力ネタバレです。

 

【あらすじ】
韓国全域を襲ったパンデミックから4年後。
姉と甥を喪ったジョンソクは、香港のスラム街で差別される生活から抜け出すため、ゾンビに支配された祖国に戻ることになった。
目的は、ソウルに乗り捨てられたトラックから2,000万ドルの金を持ち帰ること。
感染者と生存者に邪魔をされ、義兄とも離れ離れになる。
ジョンソクを助けたのは、かつて彼が見捨てたミンジョン家族だった。

 

【ひとこと感想】
よくぞこちらのオチを選んでくれた。大号泣カーアクションゾンビ映画

 

【3つのポイント】
ゾンビ映画を観に行って、カーアクションを観てきた。
②痒いところに手が届くサービス精神。
③「マタ守レナカッタ……」なんていらない。

 

【①ゾンビ映画を観に行って、カーアクションを観てきた】


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予告以上に、そして予想以上にカーアクションでした。
クライマックスはちょい昔のハリウッド映画を彷彿させるハデハデっぷり、力こそパワーで群がるゾンビを薙ぎ払います。

ジョンソクを助けた少女・ジュニが運転うますぎ驚愕然。
(どう見ても十五、六歳の無免許運転で、色々と規則が厳しい日本ではこの表現できるのかしらとふと思ったり)

そしてこの映画、びっくりするほど有能な人しか出てこない。
ジョンソクも冴羽獠 ばりに狙撃がうまく、その点もスカッとできます。

 

【②痒いところに手が届くサービス精神】
前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』に引き続き、鑑賞者の感情管理が巧みと思いました。

クズの集団が出てきます。その名も631部隊。
本来はゾンビと戦って市民を守る側だったのでしょうが、環境は人を変えるもので、世紀末ヒャッハー系に成り下がった連中です。
捕虜(?)にゾンビと鬼ごっこをさせて誰が生き残るか賭ける、そんなどこにお嫁に出しても恥ずかしくないほどクズっぷり。

ですがご安心を。

頼むからこいつらゾンビに食われろ勢は、全員その通りになりました。

なので前作も含めてこの映画に感じたものは、
制作側の『細やかな配慮』でした。

 

【③「マタ守レナカッタ……」なんていらない】
ジョンソクは4年前のパンデミックの際、誰も救えませんでした。
優秀な軍人でありながら自分の家族――姉家族を優先し、「車に乗せて」と助けを求めた一般人を無視し、結局は死なせてしまった。

そんな彼に、この物語は『やり直し』のチャンスを与えます。

ジョンソクの義兄・チョルミンは、妻と息子(姉と甥っ子)と共に死ぬことを望んだのに、彼はそれを阻みました。
そんな負い目のある義兄の望みを叶える『機会』。

何より一度見捨てた女性――ミンジョンと再会し、彼女の家族を守る『機会』。
ミンジョンは「約束を守って。必ず私の家族を半島から脱出させて」と言います。

そしてラスト、アメリカから救助のヘリがやってきます。
阻むのは大量の走るゾンビたち。

娘たちを生かすため、ミンジョンは自らを囮にします。
ゾンビたちを呼び寄せようと、クラクションを鳴らして。
暁の空を切り裂くこの音、悲壮な覚悟の証みたいでなんとも物悲しい。

不安が生まれました。
これは前回と同じオチではないのか。
前回と同じく、親の愛を描いて終わるのか。
嫌だ。それはとっても尊いけど、シンプルに嫌だそんな結末は観たくないと私の心が叫んだ時、

ジョンソクが、ミンジョンの元に走ります。

もう二度と見捨てないために。

結果、生きる意思を取り戻したミンジョンは、もう一度娘たちを抱きしめることができたのです。

( ・ω・)<……

( ;ω;)<ありがとう……

よくぞこのオチにしてくれた!!!

そうだ、いらなかったんだ、「また守れなかった」と流す涙なんて。
人はやり直せると、素直に希望を描いてくれてよかった。
これこそ、この閉塞的な、薄暗く、真綿が常に首に巻きつくような時代が求めている『映画』だったんだ!

ありがとう監督。
『ソウルステーション・パンデミック』の方向に舵を切らず、素直にハッピーエンドにしてくれて。

 

ジュニ:「違うよ、家族が一緒なのにどうして地獄なの」

 

そう言った彼女に、

 

ジュニ:「私がいた世界も、悪くなかったです」

 

という台詞を言わせてくれて、本当にありがとう。

そんな感じで映画館で泣きました。

 

【まとめ:好きな場面つらつら】
前述のとおり、ジョンソクがめっちゃ優秀なのでめっちゃかっこよかったです。

特にチョルミンを助ける場面。無理や、あんなん惚れる。

また、チョルミンの死に様が意外でした。
彼は義弟を助けて、その命を散らしました。
普通ならこういう場面は、少しだけ息があり、手を握って最期の会話を交わすものなのですが。
チョルミンは即死でした。

なんとも言えないリアルさがあり、やりきれなさが凄まじかったです。

 

【余談:最大のお気に入り場面】
大量のゾンビが閉じ込められたガラスを銃で撃って、ゾンビがドバーッと出てくる場面。

最初にあの『ゾンビ収納部屋(ガラス製)』が出てきた時、きっとこう展開するんだろうと期待しましたが……きちんと応えてくれました。
最後までサービス精神たっぷりな映画でした。

ちなみに相変わらずゾンビたちの身体能力はやばかったです。
観ていると謎に笑えてきますねアレ。無理オブ無理すぎて。

 

次回は12月20日月曜日、
1919年制作、ドイツのサイレントホラー映画、
カリガリ博士』の話をします。

 

鳥谷綾斗