人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/透明人間(1933年版)

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
1933年制作、アメリカのSFホラーです。

 

 

 

 

 【あらすじ】
雪が積もる村に、一人の余所者が宿を求めてやってきた。
包帯でぐるぐる巻きにし、サングラスをかけ、客室で謎の実験をする彼は、ジャック・グリフィン博士。
博士は、血と肉と骨が消える薬=モノケインを投与し続け、凶暴性を持つ透明人間になったのだ。

 

【ひとこと感想】
初代透明人間は目立ちたがり屋でお茶目だった。

 

※全力ネタバレです。

 

【3つのポイント】
①87年前の特撮技術の結晶。
②はじまりの透明人間には、深い愛情があった。
③凶暴性× お茶目○

 

【①87年前の特撮技術の結晶】
現代版『透明人間』が公開されたのが、2020年。
その始まりはなんと1933年。昭和8年であり、我らが地下鉄御堂筋線が開通した年(大阪人の着眼点)になります。

87年間もホラー映画のモンスターとして生き残ってるのすごくない???

そんな偉大なる『透明人間』の始祖は、当時の特撮技術の粋を凝らして表現されていました。
 


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『勝手に物が動く』や『服だけが動く』はワイヤーなどで引っ張っる・吊るで可能でしょうが、『包帯をしゅるしゅる解いて透明な姿を見せる』シーンは本当に素晴らしい。
wikiによると、黒いベルベットのスーツを役者さんに着てもらって、つや消しの用法を使ったそうです。
なるほど分からん。でも手品のようでワクワクします。

ちなみにこの時代の透明人間になった方法。

インド産の花からとれる薬、モノケインを1ヶ月投与した。
この花は触れると色が消え、漂白剤として利用されていたが、精神を錯乱させる効果があった。
(そのことはドイツの本にしか書いておらず、グリフィン博士は知らなかった)

当時のアメリカにとってはまだまだ未知の国だったんだろうな、と推察します。

【②はじまりの透明人間には、深い愛情があった】
グリフィン博士にはひとつの願いがありました。
それは科学者として認められ、師匠の娘であるフローラと結婚すること。

透明人間になったことで大はしゃぎして大暴れすグリフィン博士ですが、愛するフローラにはとても純粋で優しい。
2020年の透明人間(セコいストーカー行為で愛する人に迷惑しかかけていない)とは違うな、こちらは愛が見え隠れしているな……と思ったのですが、彼女の説得にすら彼は耳を貸しませんでした。
確かに愛はあるのに、です。これが薬の効果かと思うと、なんとも言えぬ悲しさが込み上げます。

 

【③凶暴性× お茶目○】
博士の凶暴さはどんどん増していきます。
駅舎に入り込み、駅員を殴り飛ばして線路の向きを操作し、機関車を脱線させます。

 

「月さえも私を恐れるだろう」

 

世界征服を夢見る透明人間ですが、その一方で、警察の包囲網を掻い潜り、

 

「♪Here We Go Gathering Nuts In May, Nuts In May, Nuts In May,♪ 」

「ヤッホー!」

 

と、ゴキゲンにスキップします。
べらぼうにお茶目ですね透明人間。

よくよく考えればこの場面、博士はズボンしか履いておらず上半身は裸。
ていうかケンプ博士を殺害した時も、雪が降る中すっぽんぽんでオープンカーでじっと待機してたんだなと思うと、

( ・⌓・)<コントかな???

って気持ちになります。
透明人間が何十年も愛される理由は、ここにあるのかもしれません。

 

【まとめ:ラストは美しい】
透明になったとしても人間は人間、と言わんばかりのラストでした。
また、『飲み込んだ食物を消化するまで服は脱げない』『排気ガスや霧の中ではうっすら見える』『吐いた息が白くなる』などの設定、細かくてリアリティがあって好きです。

カフカの藁に寝転んで、「気持ちいい」と眠り込む博士の姿は人間のまま。

そして急襲され、病院で死ぬ寸前、博士はフローラと再会します。
事切れると薬の効果も切れる。

死んだ後、観客はやっと『透明人間』の素顔を見れるのです。

この演出がなんとも心憎い。
印象深い最期でした。

※以下は雑談です。

 

【雑談①】
『透明人間』もののスタンダードなオチといえば、

「事故に遭って、でも透明だから誰にも発見されずにそのまま死亡する」

ですが。
アウターゾーン(90年代のジャンプ漫画)』とか『アナザードア(90年代のるんるん=なかよしの姉妹誌の漫画)』とか、記憶違いかもしれないけど絶叫学級(りぼん漫画)でもあった気がします。

てっきり、この映画もそういうオチだと思ったのですが、
最初にこの画期的なオチを生み出したのは、どこの作品なんでしょうね。

 

【雑談②】
果てしなくどうでもいいんですが、グリフィン博士がスキップしながら唄う歌が「なんか聞いたことあるけどタイトルは知らない」もので、必死で検索しました。
何度も聞いて、「たぶんヒアウィゴーって言ってる……集める……コレクト? いやギャザー? んん?」と英語で歌詞を打ち込んだところ、『Here We Go Gathering Nuts In May』がヒットしました。まんまやんけ。

( ・ω・)<突き止めた自分をちょっと褒めてやりたい。

そんな感じです。

次回は8月9日月曜日、
2015年制作、日本と台湾のホラースリラー、
『屍憶 SHIOKU』の話をします。

 

 

鳥谷綾斗