人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

映画/透明人間(2020年版)

アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2020年制作、アメリカ・オーストラリアのサイコサスペンスです。

 

 

透明人間 (字幕版)

透明人間 (字幕版)

  • エリザベス・モス
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【あらすじ】
光学研究の先駆者・エイドリアンを夫に持つセシリア。
ある夜、彼女は束縛がひどすぎる夫から逃げ出す。そして夫は自殺したと知らされる。
莫大な遺産を相続することになったが、セシリアは『見えない視線』に苛まれるようになる。
周囲からの信頼を失い続けるセシリアを、『透明人間』は容赦なく追い詰める。

 

【ひとこと感想】
安心の反撃展開、しかし使用アイテムの割にはやることがショボい透明人間。


※ほんのりネタバレです。

 

【3つのポイント】
①秀逸な見せ方。
②ただしやることがしょぼい。
③お待ちかねの反撃ターン。

 

【①秀逸な見せ方】
ブラムハウスさんちのヒロインなので、 当然(強調) 反撃展開があります。
泣き寝入りのバッドエンドなんて許しません。
ただ、この作品は反撃のターンまで少し時間がかかります。

ですが、それまでの緊張感のある描写が見事。鑑賞者を飽きさせません。

平和な朝のキッチンで。勝手に台から落ちる包丁と、強火になるコンロ。
静かな夜の寝室で。ゆっくりと剥がされるブランケットと、座面がへこむシングルソファ。

いる。
確かにいる。
見えない 誰か が そこにいる。

真っ暗な中で観たのですがゾワゾワしました。
加えて、『透明人間』の存在を訴えても誰も信じてくれないセシリアの状況に、絶望感もジワジワと。
さすがリー・ワネル。『ソウ』の産みの親。信頼できる!

 

【②ただしやることがしょぼい】
Q.どうやって透明人間になるのですか。

A.光学迷彩を駆使したハイテクスーツを着たから。

分かりやすくて最高です。
そしてこのスーツのすごいところは、筋力・戦闘力の強化もできる点です。
普通体型の科学者が警備員をワンパンでノックアウトできるようになります。アイアンマンもびっくりです。

そんな軍事利用でもしたら歴史を変えるだろう世紀の発明、

よりにもよって開発者のエイドリアンは、

妻のストーカー行為に利用しました。


( ・⌓・)<しょっぼ……

この発想が一番ホラーでした。
この透明人間、やることなすこと大体しょぼいのです。

スマホで奥さんの寝姿を撮るなよ。
奥さんが就活の面接で使うポートフォリオをこっそりカバンから抜き取るなよ。
会話中に女の子の顔を殴るなよ。

セシリアの妹(エミリー)を殺してその罪を着せるのは驚きましたが、
一連の事件を起こした目的が、『奥さんが自分から逃げ出した罰』て。

こんなセコセコした犯罪を犯す科学者は、ドヤ顔で囁きます。

 

「サプライズ」

 

( ・⌓・)<せっこ……

史上最大にせこい怪物だなと思いました。
そんなんで殺された妹さんが可哀想すぎる。

 

【③お待ちかねの反撃ターン】
せこい&卑劣っぷりにヘイトをためまくったところで待望の反撃です。
怒り心頭に発したセシリアは、自らを囮にしてクソ夫を呼び寄せます。
そこからはプチどんでん返しもあり、最後の直接対決は盛り上がりました。
ここではネタバレしませんので、是非とも。

復讐を成功させたセシリアは、どこまでも広がる夜空の下で微笑み、ささやきます。

 

「サプライズ」

 

……実はプチどんでん返しのせいで、自分も一瞬、エイドリアンの無実を信じかけました。
最後の最後までエイドリアンは否定し続けました。
ですが、セシリアは頑なに自分の意見を貫き通しました。

さて、果たして真相はどうなのか。
自分は本当に『真実』が見えているのか、と少々不安になりました。

(でも本当は、真相はどうでもいいのかもしれない)

(最後の最後に生き残り、主張した方が『真実』となるもので)

 

【まとめ:タイトルは『THE INVISIBLE HUMAN』の方がよいのでは?】

……というのが鑑賞後の感想です。

誰でも透明人間になれる。
それはつまり、誰でも人に傷つけられる側と人を傷つける側の両方になる可能性がある、ということ。
自分はそういう考え方を支持しておりまして、
いつでも被害者側、いつでも加害者側というのはありえないよな、と思います。

【おまけのプチ不満点】
・この夫婦の馴れ初めが見たい。
(ここまで執着するのは何故?)
・エイドリアンの兄はどうして服従していたのか?
(セシリア視点が真実だと前提を置いて)

これらを想像するのもまた面白し、ですね。

余談ですが、日本での公開日が去年の自分の誕生日で嬉しくなりました🥳

 

次回は7月26日月曜日、
1933年制作、アメリカのSF映画
『透明人間』の話をします。
(なんか観たくなったので!)

 

鳥谷綾斗