人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

死呪の島(著・雪富千晶紀)

評価:
雪富 千晶紀
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,728
(2014-10-30)



呪いは呪いと共鳴する。

ーーこういう島なのだから、仕方ない。



魚


第21回日本ホラー小説大賞受賞作品です。
例によって、帯に惹かれました(笑)

あらすじ。
伊豆諸島の須栄島。漁業が盛んなこのひっそりとした島の高校生、杜弥。
彼は同級生の椰々子に心惹かれていた。
島の住人から村八分にされている彼女は、海から流れ着いた水死体の口から「<災い>が来る」と予言される。
その日から謎の幽霊船が漂着し、恐ろしい出来事が起こり始める。


物語の流れを簡潔に説明するならば。

→和風かと思えば洋風で、最後はバイオハザードを経て異種格闘技戦になった。

ですね。驚きました。
島特有の閉鎖社会にありがちな、おどろおどろしい伝承云々ものかなと思いました。
ヒロインは巫女(もちろん黒髪美少女)だし、和風伝奇ホラーなんだろう……とか予想していたら。
ブードゥや仏教も出てくるので、確かにこのグローバル感はモダン風だなぁと
ちょっとしたフーダニット要素もあります。
それは、『呪いをかけたのは誰なのか』
主人公の思わせぶりな出自がミスリードになっていました。だ、騙された。

また、ひとつひとつのエピソードが半ば独立しており、一本の長篇というよりかは短篇連作のような。
その印象のせいか、呪いが始まってからいろんな人物が島を訪れるのですが、
君たち心を通わせるの早すぎやしませんか。
っていうのが正直な所感です。
特にヒロインと同じ境遇の新妻さん。
あと、半ば頃に出てくる豪華クルーズで優雅に世界一周するセレブたち。
なかなか強烈なエピソードだったんですが、それもひとつの物語の要素にしちゃうのが何とも贅沢です。
(まあこの人たちはヒロインの正体判明への道しるべの役割を果たしてましたが。あの嫌味教授(?)は何だったのか)

ヒロインを脅かす者の正体は、めっちゃくちゃ意外でした。当てるのはまず無理なような。
また、島に起こる不可思議な出来事の正体も、意外ですが納得できるものでした。
共通しているのは、『理不尽』、『不条理』。
怨嗟は国も海も種族も宗教も越える。何とも厄介です。
ですが最後には、主人公たちはその災厄を受け止めてその上で自分たちの生きる場所を守るために立ち向かった……というのが、大変好ましかったです。
ちなみにいちばん驚いたのは、海を眺めるヒロインをずっと見守っていたであろう『鯨たち』の正体です。
自分は本当は孤独ではなかったと椰々子が知れて、素直によかったと思いました。


という感じでなかなか楽しめました。次回作が楽しみです。
ですが最後に一言。

映像化したらすっごいB級ホラーになりそう。

ニコ生で観たいです。すごく人気になると思います。愛の弾幕で荒波になり画面が見えないくらいに。
ちなみにこちら私なりの褒め言葉です。B級大好き!