人生はB級ホラーだ。

良い作家さんになりたい鳥谷綾斗のホラー映画中心で元気な感想ブログ。(引っ越しました)

太陽(アポロン)の誘惑-「花の探偵」綾杉咲哉-(著・七穂美也子)

これが、自分以上に誰かを好きになる、ということなのか。

(『アフロディテの復讐』より)

「あんなの言いがかりもいいところじゃないか! おれと兄さんの兄弟愛が、いつ、どんな風紀の乱れになったんだよ! (中略) 道徳の教科書に載ってもいいくらいだってのに、取るに足らない些細なことに目くじら立ててさー!」

(『鬼火』より)






チョイスの台詞は、読んだ当時に『きゃあ~』となり、
現在再読したら『うわあああああ』となった代表の台詞。(これでも全部ではない)
……だったのですが、アフロディテ~のこのモノローグは今でも響きます。主に胸とか心とかに。

さて花の探偵第四巻です。
夏休み篇です。この一家、旅行好きですね。

アフロディテの復讐』
ローズガーデンが自慢のホテルに宿泊中、美しい人妻と仲良くなった二人。
彼女は以前ハチに刺され、ハチ恐怖症だった。
何度となく命に危険に晒される彼女。それはどうやら彼女の夫の仕業らしく、二人はそれを確かめようとした矢先に……。

ティーフは薔薇。
キーポイントは蜂。
バラとハチの意外な関係に、少々驚きました。
この話では咲哉さんが完全に暗黒キャラで、いわゆるブラックモードです。
人妻を救うために、得体の知れないキノコをわざわざ用意します。
そして酷な展開になり、卑劣な犯人が逃げおおせようとしたところを彼なりのやり方で断罪します。咲哉さんはまったく手を下さず、下準備をしただけで事が終わりました。

咲哉さんのとった行動は正しいのか間違っているのか……と考えてはみましたが、どちらに決めてもそれは『人間の出した答え』でしか無いんだろなと思います。
ハチという生き物が固体でなく集団を指すように。
咲哉さんが犯人と同じ台詞を口にしていたのが、なんだか皮肉でした。


『鬼火』
夏休み。峻が所属する中等部の生徒会に、学校近くの雑木林に肝試しに行く生徒が多い件と、峻が咲哉に会いに校則違反をする件について高等部から苦情を受けた。
そして二人は生徒会のメンバーとその肝試しの場所――鬼火が出るという噂の雑木林に、正体を確かめに行く。

ティーフは……ねたばれになるので伏せます。
そんなのあるんだーと感心しました。世界は知らないことで満ちている。
峻君の咲哉さんへの過剰愛情が改めてつっこまれてました。
お話自体は、天網は恢恢としてて疎なんだけど漏らしませんといった感じです。
悪事がいつかバレるのは、世の常で人の中に常に心がある限り必定です。


峻君の咲哉さんへの疑問は膨らんでいく一方です。
それでも、知りたいと思ったことは遠慮なく知ろうとする性格であるはずの峻君は、その愛情ゆえに口を噤みます。
三巻の『ベストフレンド』で学んで、ちょっと成長した弟君です。