ケーブルで観たホラー映画シリーズです。
1977年制作、イタリアのゴシックホラー映画です。
【あらすじ】
バレリーナを志すアメリカ人の少女、スージー。
ドイツのフライブルグにある名門校に入学した。
雷雨の中、女生徒のパットが謎の言葉を残して学園を出ていくのを見かける。
翌朝、パットの悲惨な死体が発見される。
【ひとこと感想】
絵の具めいた血糊、作り物めいた色彩美、惨殺アトラクション。
※全力ネタバレです。
【3つのポイント】
①冒頭のド派手な惨殺。
②ファンタジック惨殺。
③絵の具を飲んで絵の具を吐く人々。
【①冒頭のド派手な惨殺】
「決して、ひとりでは見ないでください――」
というキャッチコピーが有名な本作。普通に一人で観ました(謎の反骨精神)。
妙に可愛いフォントのオープニングから嵐の夜に彩られた鮮やかな赤い外壁の学園、濡れネズミになる美女ヒロイン。
ホラー映画としてバッチリなお膳立て。
そして期待を裏切らず、凄惨な美女の殺害シーンがやってきます。
ヒロイン・スージーとすれ違いに学園を出て行ったパット。
彼女は友人のアパートへ避難します。
不安そうに青ざめるパットは、ふと窓の外に気配を感じます。
外は雷雨。ここはアパートの最上階。
何もいるはずはない。
けれど視線を感じる。黒い気配を感じる。
窓の外を覗き込むと、……
ここからが凄まじかった。窓が割れる、否、毛むくじゃらの手が窓を突き破る音が殺戮開始の合図です。
ガラス窓に押しつけられて歪む美女の顔面。
胸部を開いた肋骨から垣間見える心臓。
ステンドグラスの穴から垂れ下がる長いブロンドヘアー。
それを突き破り、ぶら下がる血まみれの首吊り死体。
なのに、『血』はひどく作り物めいていて。
ものすごく趣味の悪いオブジェのような、気色悪い美しさがありました。
【②ファンタジック惨殺】
舞台である学園の内装は本当におしゃれです。
さらに赤青緑の照明が、原宿の映えカフェっぽい『非日常さ』を演出しています。
その中で繰り広げられる残酷描写――
細長い米粒が蠢いているような、大量にわいた蛆虫。ぶちぶちと踏み潰される音。
盲導犬に食い殺される盲目のピアニスト。
スージーのルームメイト、サラは真相に肉薄したためか謎の人物に追いかけられ殺される。
これらも、『リアリティ』よりも『非日常さ』に重きを置かれていました。
言い方は悪いのですが、『残酷なお人形遊び』みを感じました。
これは絶対に、 「血糊がどう見ても絵の具」 なせいです。(断言)
【③絵の具を飲んで絵の具を吐く人々】
目を背けたくなる瞬間はあれど、「絵の具っぽい血糊」の効果で安心して殺戮アトラクションを楽しめます。
たとえばピアニストの首が噛みちぎられる場面。
口がパクパクする犬のぬいぐるみで首を挟んでいるんだろうなー、このワンちゃんは普通にごはんを食べててそれに水音のSE入れているんだろうなーウフフと思いました。(※推測です)
次にサラが殺害される場面。
必死に学園の危険性をスージーに訴えますが、スージーはおねむ。( ˘ω˘ )スヤァ…
覆面の男(志村うしろ案件)に追いかけられて、緑に染まった寝室から真っ赤に染まった廊下、青ざめた屋根裏を経て小部屋に逃げ込み、掛け金を下ろします。
けれど覆面はドアの隙間からナイフを差し入れ、掛け金をペチ……ペチ……と叩きます。「こんな施錠はすぐにでも破れる」と脅し、サラを弄びます。
サラ:「Oh…Ah…!!」
怯えるサラ。マジで怯えるだけだったサラ。
( ・ω・)<何かあるやろ武器が。
あなたの隣にある家具でドアを塞いでもいいと思うよ。
などと思っていたらサラは小窓から脱出、しかし謎の紐に絡まって追いつかれて殺されました。
やはりそこでも『絵の具な血糊』。
からの、場面変わって、貧血予防に飲まされていた赤ワインを洗面台に捨てたスージー。
これも妙に絵の具みがありました。ワインってそんな手で洗面台をこすらなきゃ流れないものだろうか。
もしやこの人たち、
絵の具を飲んで絵の具を吐いてる……?
( •᷄ὤ•᷅)<……?
という大暴投な感想が浮かびました。
【まとめ:ひとりで見てください】
補足しますが、『どう見ても絵の具な血糊』について自分はまったく文句はありません。
好みとしてはこっちの方がずっと好きです。ニセモノ上等。法螺万歳(ホラーなだけに)。ありがたい。安心して、『特に悪いことをしていない人たちが惨殺されるアトラクション』を楽しめるからです。
創作物には、必要なリアリティと不必要なリアリティがあるってやつです。
閑話休題。
全体的には『観賞する劇薬』という感じでした。
背景のレトロ可愛さ、ヒロインたちの可憐さ、そして死体や校長である『魔女』のグロテスクさ。
すべてが強烈に印象に残り、憧憬が募る。
是非とも部屋を暗くして、スマホの電源も切って、『ひとりで見て』、この世界観に没頭していただきたいです。
【余談①お気に入りの場面】
蛆虫が発生したので、広い練習室で生徒全員が眠る場面。
消灯した瞬間、パッと写る影絵が綺麗でした。舞台を観ているようだった。
【余談②同名の漫画雑誌が好きでした】
子どもの頃、『サスペリア(秋田書店刊)』というホラーやミステリーの漫画ばかりが載った雑誌が大好きでした。
近所のスーパーでよく立ち読みしました。(当時小学生だったのでご寛恕ください)
2012年ごろに廃刊になりました。心惜しいことです。
単行本も持っていたのに、いつの間にか無くなっていた。
そのスーパーもとっくに潰れました。……。
少々郷愁的な気持ちになりつつも、
大好きだった雑誌の名前の元ネタの作品に触れられて嬉しかった。そんな感じです。
次回は6月6日月曜日、
1976年制作、アメリカのオカルトホラー、
『オーメン』の話をします。
( ・ω・)<6月6日なので!
鳥谷綾斗