アマプラで観たホラー映画シリーズです。
2017年制作、英米合作のサメ映画です。
【あらすじ】
メキシコに旅行にきた姉妹・リサとケイト。
失恋したばかりの姉のリサを元気づけるため、ケイトはケージダイビングに誘う。旅先で知り合った地元の青年に誘われたのだ。
サメを誘き寄せるための撒き餌で赤く染まる青い海に、2人が入ったケージは沈んでいく……
【ひとこと感想】
恐怖ポイントがサメじゃなかった、息が苦しくなるサメ映画。
※全力ネタバレです。
※ネタバレなし鑑賞を強くオススメします。
【3つのポイント】
①青と赤の綺麗なコントラスト
②対照的な姉妹
③臆病な姉は変われるか?
【①青と赤の綺麗なコントラスト】
サメ映画と言えば、海の美しさも見所のひとつです。
今作で瞬間的かつ強烈に心を奪われたのは、その海の青さとそこに流し込まれる『赤』の対比。
サメを呼び寄せるために撒かれた撒き餌の『赤』。
リサの手、ケイトの足の出血の『赤』。
皮膚が剥がれたリサの足の『赤』。
サメを追い払うための発煙筒も『赤』でした。
この作品のレビューによると、海中では血は赤ではなく緑に見えるそうですが映画なので。
青に対する鮮烈でくすんだ赤がとても映えていました。
海も空も青くて天気は上々、潮風が髪を乱す解放的なロケーションから一転、息の詰まる海底へと場面が変わっていくのも美しいコントラストでした。
【②対照的な姉妹】
主人公は正反対の姉妹。
引っ込み思案な姉のリサと、社交的な妹のケイト。
この姉妹のやりとりもポイントです。
フラれた際に「退屈な女だ」と言われたリサが、腹癒せにサメの写真を撮るという、一見すると「なんで???」となる流れ、ミョーに納得できます。
アクシデントでケージが沈んでも、パニックに陥るのは姉で宥めるのは妹。
そんな妹に、リサはコンプレックスを募らせていました。
ケイト:「競争なんてしてないわ」
リサ:「あなたはね」
たぶん、姉妹が逆だったら生じなかった『感情』が垣間見れて、うんうんと頷きました。
姉と妹は親友でありライバル。年が近ければ特に、ってなもんです。
ケイトは率先して状況を打破しようとしたけれど、エアがどんどん少なくなります。
それを見てリサは一念発起、ケイトに教わって自ら生き残るための行動をします。
サメと窒息死、ふたつの絶望が傍らに控える渦中で、
リサは変わろうとしたのです。
【③臆病な姉は変われるか?】
ふたりを嘲笑うかのようにピンチが次から次へと舞い込みます。
エアの残りは少ないしケージにウインチをつけに来た青年もサメにあっさり殺されるし、なんとか引き上げられたけど途中でケーブルが切れて(どういう管理してんの?)逆戻りしたり、海底とケージに足を挟まれたり。
しかし奮起したリサは強かった。
ざっくり切った手から真っ赤な血が流れ続けても気にも留めず、海底とケージの隙間から足を引き出し、助け出した妹を抱えて水面を目指します。
サメも追いかけてきました。
発煙筒をつけた瞬間、6メートルはあるらしい巨大なサメが3頭現れたのには肝が冷えました。
発煙筒で追い払い(ここで3本のうち1本を落とすという細かい絶望つき)ながら、水上に出て船に向かって叫びます。
なんとか船にたどり着いた瞬間、サメがリサを襲います。
しかしリサはサメの目玉を攻撃して回避し、
妹と一緒に船上で治療を受けることできました。
ああ、助かった。
空の澄んだ青を目にし、そう思いましたが――
リサの手から流れる血が、空中に滲んでいることに気づきました。
まるで水中のように、青の中に溶けていく赤。
……ここの場面の切り替え、最高でした。
( ・ω・)<本気で怖かった。
空の澄んだ青から一点、海底の暗鬱な青へ。
海底のケージの中で、独りきりのリサが笑います。
リサ:「やっと助かった。うふふあははは、
助かったわケイト、BCDを使ったの。助かった……」
すべては窒素酔いを起こしたリサの、幻覚だった。
リサは沿岸警備隊に助け出されますが、
ケイトの姿はどこにもなく、そのまま青と赤の海底は幕を閉じました。
【まとめ:意外で厳格で残酷な結末】
ホラーに限らず、映画でピンチに対峙した主人公というものは『変化』『成長』するものです。
なのにこの作品、「そんな都合のいいことあるかい」と真っ向からアンチテーゼをぶちかましてきました。
火事場の馬鹿力があろうとも、人間は簡単に有能にはなれないし、人喰いサメに立ち向かうことはできない。
ずっと助けられてきた側だった人間が、一瞬で助ける側になることはない。
サメよりもそれがもっとも恐ろしかった。いわゆる『現実』ってやつです。
やはり普段から知識と筋肉をつけておくべきだなぁと思いました。
(※絶望のあまり明後日の方向へぶっ飛んだ感想)
次回は5月30日月曜日、
1977年制作、イタリアのゴシックホラー映画、
『サスペリア』の話をします。
鳥谷綾斗